49.気配のない魔法を防ぐ
一時間目の授業が終わり、机を片付けていると――。
「ねぇ、ユフィちゃん。ちょっと、トイレに付き合って!」
「はい。大丈夫ですよ」
ミレイ様に声を掛けられ、私は席を立った。二人で教室から出ようとした時――つま先に衝撃が走って、足がもつれて倒れてしまう。
「ゆ、ユフィちゃん!? だ、大丈夫!?」
「いてて、大丈夫です」
突然の事で受け身を取れず、盛大に顔面をぶつけてしまった。起き上がり、転んだところを見て見ると――床から石が生えていた。
「い、石? ……いや、これは土魔法だよね」
「はい、そのようです」
「ということは、誰かがユフィちゃんを狙って嫌がらせをしてきたわけだ。誰、こんなことをした人は! 許さないよ!」
ミレイ様が教室に向かって声を上げた。だけど、誰もが戸惑うだけで名乗りではしない。
今はそんな事よりも――本当に魔法発動の気配がないことを実感した。ありえないことが現実に起きていて、ワクワクが止まらない。
一体、どんなことをすれば魔法発動の気配を消せるのか。何か、特別な魔法を発動しているのか。それとも技術的な何かなのか……。
「あっ、すいません。一緒にトイレに行くんでしたよね。行きましょう」
いけない。また考えに耽るところだった。私はミレイ様に声を掛けると、何か言いたげな顔をして頷いた。
廊下を進んでいると、ミレイ様がポツリと呟く。
「ユフィちゃん……平気?」
「えっ?」
「嫌がらせ受けて、嫌だよね? 辛くない?」
「全然辛くないです。むしろ、もっと来いって感じです!」
不安そうに尋ねてくるミレイ様に素直な気持ちを伝える。この魔法技術を解析するためには、何度も受けておきたい。その気合を込めて伝えた。
すると、不安そうだったミレイ様の表情が少し穏やかになった。
「あんまり、辛い気持ちになってなくて良かったよ。私の時は辛くて仕方なかったから……」
「ミレイ様も嫌がらせを受けたんですか?」
「えへへ。うん、ちょっとね。ほら、私の家って貴族の中でも一番下だから、そのせいで……ね。頑張れば頑張るほど、嫌なことが起こったから……。だから、ユフィちゃんも同じだったら力になりたいって思ったの」
こんなに明るくて元気なミレイ様が辛い目に合っていたなんて……。
「私も村ではたくさん嫌がらせを受けていたので、境遇が似てますね。だから、ミレイ様がいて心強いです」
「そ、そう? なんか、辛いことがあったら言ってね。どんなことでもするからさ!」
照れたように頬をかくと、気合の入った言葉を向けられた。もし、村にいた時にこんな人が近くにいてくれたらどれだけ良かっただろうか。
今はそれを言っても仕方がない。
「ユフィちゃんが平気でも、この嫌がらせは止めないとね。魔法発動の気配が分からないんだったら、魔法が発現した時に反応する魔法を使えばいいんじゃない?」
「あぁ、そうですね。その手がありました。つい、体で受けることばかり考えてました」
「そ、それは危険だよ。少しでも防御態勢を整えた方が良いよ。今は水だったり、石だったりするけれど、いつ傷つけてくるか分からないから」
「はい。周りに心配かけないように、自分でも防衛してみます」
「うん。私も何かできることがないか、考えてみる」
ミレイ様の助言は助かった。魔法が発現したら反応するような魔法を使えばいい。とりあえず、魔法を発現した時に反応出来るように魔法を構築して、それを身にまとえば――。
◇
二時間目が終わり、先生が教室を出た。一時間目が終わったタイミングで相手は魔法を仕掛けてきた。もしかしたら、このタイミングで仕掛けてくるかもしれない。
私はそっと魔法を身にまとうと、席を立った。そして、相手が魔法を使いやすい場所に移動すると――。
ブワッ!
私の周囲に風が巻き起こった。
「わっ!?」
「キャッ、スカートがっ!」
「風が!」
周囲のクラスメイトたちは驚き、こちらを見た。だけど、私の衣服には乱れがない。それを見ていたクラスメイトたちはどよめいた。
「何も起きてない?」
「ユフィちゃん、大丈夫だった?」
「何故?」
みんなが戸惑う中、私は犯人に聞こえるように言ってやる。
「魔法が発現した瞬間に発動する魔法を構築しました。だから、犯人の魔法はもう食らいません」
これで、自分の身は守れる。後は犯人を探し出すこと、そして――その魔法を解析するだけだ。




