43.二年生の首席
腕組みをしてこちらを睨みつけている女子生徒。その顔は初めて見た顔で、一年生ではないことがよく分かった。
「あなたたち、ここは食堂よ。自分たちだけで騒いでいい場所じゃないの」
「えっ……」
突然の注意に、周囲がしんと静まり返る。さっきまで楽しそうに話していたクラスメイトたちも、気まずそうに顔を見合わせている。
「いや、周りだってこれくらいだったけど……」
「傍に、二年生の首席である私がいるのに、煩いって言ってるの。一年生だからって、何をしても許されると思っているの? 私が昼食を取っているんだから、もう少し私に配慮しなさい」
ふん、と鼻を鳴らしてこちらを見下してきた。その強い威圧に私たちは萎縮する。
確かに、私たちは少し騒ぎすぎてしまったのかもしれない。大勢で集まっていたし、みんなで一斉に話していたから、この人たちにとっては迷惑だったのだろう。
「あなたたちが煩いから二年生首席の私は昼食もまともに取れないじゃない。だから、一年生の首席であるあなたが責任を取りなさい」
「えっ……私ですか?」
せ、責任っ!? そんな重い場面だったの!?
「あなたが這いつくばって謝れば許してあげるわ。さぁ、やりなさい」
こ、これが都会流の責任の取り方? 流石都会……田舎とは大違いだ。ここは、言われた通りに――。
「えっ、ユフィ! そんな事をしなくてもいいのよ! ユフィは何にも悪くないんだから!」
「えっ?」
「そうだよ! ユフィちゃんがやることないよ! こんな話は聞かない方が良い!」
謝ろうとすると、物凄い速さと力で引き留められた。
「で、でも……謝らないとひどい目に合うんじゃ……」
「相手が勝手にいちゃもんつけてきただけだから、構うだけ損よ。無視しましょう、無視」
「向こうの話なんて聞かなくても大丈夫だから。私たちは私たちだけで楽しもうよ」
「ちょっと、何よ! 私が誰だか分かっているの!? 二年生の首席よ! あなたたちよりも上なのよ!」
戸惑っていると、女子生徒が声を荒げてきた。だけど、二人は構わないようにしようと、視線を逸らす。
その時――バチッと私たちの間に衝撃が走った。それに慌てて、ロゼリア様とミレイ様が手を離す。
振り返ると、その女子生徒が杖をこちらに向けていた。
「二年生首席の私をコケにして、ただで済むと思っているの。次はこんなもんじゃすまないわよ」
ギロリと睨みつけてきて、思わず体がすくみ上る。だけど、二人に痛い目を合わせたことに、フツフツとした怒りがこみ上げてきた。
「この二人は悪くありません。手を出さないでください」
「そんな態度が私の前で許されると思っている訳? 元々はあなたたちが煩くして、私の昼食時間を台無しにしたせいでしょ」
「そのことについては謝ります、ごめんなさい。でも、だからと言って痛い目に合わせるのは違うと思います」
「……あなた、たかが一年生の首席だからって自分が一番偉いとでも思っている訳?」
真向から言いたいことを言ったけれど、それが余計に相手の火に油を注いでしまったらしい。鋭い視線を向けて、敵対心をあらわにする。
だけど、そんな視線から遮るように――今まで見守っていたアルベルト様が私の前に出る。
「君は低俗だな。首席だからと言って、偉いと思っているのか? それは自分自身の事を言っているんじゃないか?」
「なんですって!」
軽蔑するような視線を向けて言葉を吐き捨てると、女子生徒は怒りをあらわにした。
「少なくとも、ユフィは君よりもずっと首席らしいよ。威張り散らしてないし、何よりも周りのことをちゃんと見ている」
「このっ、まだ一年生の癖に!」
「えっと、そのっ……」
今にも魔法を放ちそうな女子生徒を見るとハラハラする。もし、クラスメイトたちが傷つくようなことがあれば、悲しい。
「あの、私たちはただ楽しくおしゃべりをしたいだけなんです。どうしたら、怒りを鎮めてくれますか?」
「だから、あなたが……そうだわ! だったら、勝負なさい。みんなの前で、あなたをコテンパンにしてあげる」
「勝負、ですか? ……それで怒りが収まって、絡んでこなくなりますか?」
「えぇ、約束するわ。だけど、負けるのはあなたの方。その時は地面に這いつくばって謝ってもらうから!」
だったら、この勝負――勝つしかない!




