42.楽しいランチ
「わぁ、寮の食堂よりも広いですね!」
午前の授業が終わり、昼休みに入った。食堂へ入ると、そこはとても広く清潔感のある空間だった。
床は隅々まで綺麗に磨かれていて、広い室内にはテーブルとイスが整然と並べられている。どの席もきちんと間隔が空けられていて、たくさんの生徒がいても窮屈に感じることはなさそうだ。
壁際には大きな窓がいくつも並んでいて、そこから暖かな日の光が差し込んでいる。陽の光を浴びたテーブルが柔らかく輝き、食堂全体が明るく開放的な雰囲気に包まれていた。
そして、何より気になったのは――。
「……いい匂い」
食堂の奥には大きなカウンターがあり、その向こうから食欲をそそる香りが漂ってくる。
焼いたお肉の香ばしい匂いに、温かいスープの匂い。さらに、焼きたてのパンから漂う小麦の甘い香りまで混ざっている。
鼻から息を吸い込むたびに、お腹がきゅるると鳴りそうになる。突っ立っていると、横からスタスタとレイチェル様が先に行く。
そのレイチェル様の手をミレイ様が掴む。
「レイちゃん! 一緒に食べようよ!」
「嫌よ。私は一人でゆっくりと食べたいの。放っておいて」
誘ったけれど、つれない態度で一人で先に行ってしまった。それを見送るとちょっとだけ寂しい気持ちになる。
「じゃあ、僕も」
「えっ!? アルベルト君は一緒じゃないの!?」
「流石に女子とばかりつるんではいられないからね。僕も男子の友達を作らなくちゃ。じゃ」
「えぇ!? 今日はこっちでいいじゃん! 一緒に食べようよ!」
「くっ……! 制服を引っ張るな!」
二人が引っ張り合いをしていると、その近くでクラスメイト達が面白そうにこちらを眺めてくる。
「あっ! だったら、みんなで一緒の席に座ろうよ! 君たちもね!」
「うん、いいよ」
「その方が楽しそうだな」
「わぁ……上位の人たちと一緒にいれる……」
なんと、ミレイ様はあっという間に他のクラスメイト達を捕まえてしまった。一気に十人以上の大所帯になり、一層賑やかになっていく。
「わぁ、流石ミレイ様です。そんなに簡単に人を集められるなんて……」
「まぁ、ミレイにしか出来ない事よね。でも、これで他のクラスメイトとも接点が出来そう。楽しい昼食になりそうね」
どうやって、話しかければいいか分からないから、ミレイ様の積極性にはとても助かった。まだ、交流の浅いクラスメイトたちと交流が出来そうだ。
私たちはカウンターにならび、食べたい昼食を注文して席に座った。すると、賑やかな昼食が始まった。
「あ、それ、美味しそう!」
「こっちも美味しいぞ」
「んー! 流石王立グランセリア魔法学園! 食事も一級品だわ!」
みんなと一緒に昼食を食べる。この賑やかさに始めは戸惑ったが、だんだんと楽しくなってくる。
「あっ、ユフィちゃんは静かだね。もしかして、そういう食べ方なの?」
「あっ、いえ……。いつも一人で食べてましたから、どうやって食べるのと喋るのを両立すればいいのか分からなくて」
「そっかー。田舎で一人暮らしだったもんね。だったら、この状況を楽しめるようになれば、自然と話せるようになるよ」
ミレイ様の優しい言葉に救われる気持ちだ。ミレイ様のようには出来ないけれど、私も少しずつ話に入れるようになるといい。
「じゃあ、ユフィは私と会話の練習をしましょう」
「ロゼリア様は話し上手なので、練習というよりも会話を引き出されている感じがします。もっと、自分から話すように……って、こんな風に引き出されちゃいます」
「ふふっ、嬉しいことを言ってくれるわね。だったら、色んな人と話をした方がいいかしら」
ロゼリア様はそう言って、席に座っていたクラスメイトたちに目くばせをした。すると、クラスメイトたちは嬉しそうな顔をして、私に集中して質問をした。
「一人暮らしってどうやって暮らしているの? メイドとかいないの?」
「毎日の日課とかあるか? 俺、あんまり長続きしなくて、コツとかあれば教えて欲しい」
「どれだけ魔法が出来るか、見せて! 怖いけど、見たい!」
「わっ、わっ、わっ!」
どっと押し寄せてきた質問に言葉が出て行かない。これは、どう答えるのがいいの? 不安になってロゼリア様を見ていると、おかしそうに笑っていた。
「ほら、返答しないと会話にならないわよ」
「そ、そうは言っても……」
「首席になった時の気持ちとか聞いてみたいかも!」
「首席になるって思ってた?」
「首席になって、何か変わったか!?」
「あわわっ」
戸惑っていると、次々と質問が飛んでくる。魔法のことならすぐに話せるが、日常会話となると別だ。どんな返答がいいか悩んでいた、時――。
「首席、首席って煩いわね! 一年生はマナーも守れないの!?」
後ろから怒鳴り声が聞こえてきた。びっくりして振り向くと、そこには不機嫌顔をした生徒がこちらを睨みつけてきていた。




