41.怪物だと自覚していく(周囲が)
「ちょっと、あなたね! なんなのよ、あの火魔法は!」
授業が終わると、すぐにレイチェル様が焦ったように近づいてきた。
「どうして、あんなに高温度の火が出せるわけ? 普通はありえないわよ!」
「えっ、でも……遊びでどこまで温度が高くなるか、やりませんでした?」
「あなた、遊びで三千度まで温度を上げたってこと!? こわっっっ! あれ、三千度以上じゃないと溶けない材質なのよ!」
「「「はっ???」」」
レイチェル様が大きな声を出すと、周りが一斉に振り向いてきた。だけど、そんな事よりも――。
「あっ、レイチェル様もあの材質の事が分かったんですか? 分析魔法が得意なんですか?」
「ぶ、分析魔法じゃないわよ。そういう授業で使う物は把握しておかないと、内申点に関わるから……って、だから! 話を逸らすなって言ってんの!」
……なんだ、分析魔法で分かっていたんじゃないのか。でも、レイチェル様なら知らなかったらそれくらいはやるよね。やっぱり、凄いなー!
「ちょっと、聞いた!? 三千度って、そんな、えっ!?」
「そこまでの火力が出るのか!? そう言うのって専門施設じゃないと出せない火力じゃないか!?」
「待って、頭が追い付かない……。もう、何を考えたらいいのか……」
すると、周囲の騒ぎが耳に入ってきた。みんな、三千度ということに注目をしているみたいだ。これは、魔法談義のチャンス!?
「皆さんも火魔法でどれだけ温度が上がるか試しますよね? 極限にまで高めた魔力の濃度を上げて、高速で魔法を発動させる。どれだけ、高く、速くやれるか、極限までやりますよね!?」
「ひぇっ!? そ、そこまではやらないよ! な、何を言っているの!?」
「……そこまで考えないよ。他にもやることはたくさんあるのに、それだけを極めるなんて……」
「いえ、他の魔法でもやりませんか?」
「……えっ? ユフィってどの魔法でも極限に極めているってこと?」
「ちょっ、待って! 純粋素朴なユフィが違って見える! なんで、こうなった!?」
わくわくしながら話しかけると、周りは顔を青くして引き気味になった。みんなの目の色が変わって、不思議だった。
「毎日使っていくと、少しずつ強くなっていくのが分かるんですよね。そうすると、楽しくなっちゃって、もっとやりたくなるんですよね」
「……ユフィ、普通は毎日強くならないのよ」
なんとなく言った言葉に、ロザリア様が弱弱しく首を横に振った。
「えっ? でも、使っていくごとに強くなりますよ。なんでも」
「魔法の威力が上がるまで、どれくらいの時間がかかるのか知らないのか? 普通は毎日なんて上がらないぞ」
「ちょ、ちょっと待って……。私たちで一か月かかるところを、ユフィちゃんは一日で成し遂げちゃうってこと?」
引き気味なアルベルト様に続き、やっぱり引き気味なミレイ様が信じられない顔で呟いた。その言葉にまた周囲がざわつく。
「えっ、どれだけ魔法を使っているの?」
「毎日毎時間毎分使ってますよ」
「どういうこと、それ!? 私たちが知らない間に魔法を使っていたってこと!?」
「はい。誰かがいる時は影響のない魔法を使ってますね。ちょっと、空に向かって魔法を放つ時もあります。あっ、人に影響がないようにですね」
「それって遠隔魔法じゃない!? 高度な魔法なんだけどっ!?」
すると、またざわめきが大きくなった。その話を聞いた、レイチェル様が詰め寄って来る。
「どうして、遠隔魔法を習得しているの!? 並大抵の練習量じゃ、習得できないはずよ!」
「えっと、畑仕事しながらとか、本を読みながらとか、料理を作ったり、寝ている時とか……ですかね。そうしたら、掴めました」
「日常動作の中で魔法を使っているの!? あなた、馬鹿なの!? そんなことして、ちゃんと魔法が鍛えられるわけないわよ!」
「でも、魔法から片時も離れたくなくて……。そうしたら、この方法を見つけて試してみたら、楽しくなっちゃったんです」
「それ、どんな理由よ! 恋人か!」
「あっ、こ、恋人はいません!」
「そう言ってんじゃないわよ!」
私の魔法への付き合い方を話せば話すほど、レイチェル様の声は大きくなるし、三人の目の色が変わるし、周囲のクラスメイトのざわつきが大きくなる。
どうして、そこまでリアクションが大きいのかは分からない。でも……魔法について話が出来て楽しい! 凄く、ワクワクが止まらない!
あっ、だけど、私だけ話すのは違うよね。他人の話を聞くことも大事だと寮長さんは言っていた。
「皆さんはどのような時に魔法を使っていますか? もちろん、毎日毎時間毎分ですよね?」
「あなたの基準に私たちを巻き込むのは止めてくれる!?」




