39.クラスに戻ってから
「ユフィ、あなたっ……あれはなんだったのっ!?」
「えっ? あっ、魔法です」
「???」
クラスに戻る途中、凄い顔をしたロゼリア様が詰め寄ってきた。だから、普通に答えたんだけど、言葉が通じなかったみたい。ロゼリア様は意味が分からずに意識を飛ばした。
「いや、あれを魔法の一言でまとめるな! 余計、分からなくなる!」
「魔法でドラゴンって作れるの? だって、声も出ていたし、火も吹いていたよ???」
「あー、あれはですね。魔法で振動を出して声を作って、それから――」
「だから、詳細を求めているわけではない!」
ミレイ様は不思議そうに首を傾げているが、アルベルト様は声を荒げた。えっ、魔法の事を詳細に知りたいわけじゃないの?
「本当にもう……ユフィは考えつかないことを実行するんだから。やっぱり、ちゃんと普通を教えておかなくちゃ……」
「あっ、大丈夫です! 私、ちゃんと普通を分かってますから!」
「……いや、絶対君は知らないだろう」
「えーっ!? そんなことないですよ!」
なんで!? 私、今まで普通に暮らしてきたのに! 誰にも普通で負けてないと思うんだけど……。
悩みながら歩いて行くと、ようやく教室に辿り着いた。すると、ざわりと騒がしくなる。
ハッとして顔を上げると、みんながこちらに注目しているのが分かった。えっ……何があったのだろうか?
戸惑いつつ立ち竦んでいると、数名の女子たちが近づいてきた。少し遠慮気味な様子で話しかけてくる。
「えっと、ユフィちゃんの魔法……初めて見たけれど、なんか凄かったね」
「想像以上だったけれど、どうやってやったの?」
「かなり難しい魔法に見えたけれど、ちゃんと操作出来ていたね。どうして?」
……初めて、他の人に話しかけられた。今まで上位の四人としか話せてなかったけれど、他の人が興味を持ってくれた。
うわっ、どうしよう! どんな風にお話すればいいかな? やっぱり、ここは詳しく!
「えっとですね、まずどのような魔法を発現させるかを定義するところからですね。今回はドラゴンを構築したかったので、身体を形成する術式と各部位を駆動させる術式、それから発声や火炎放射に必要な術式を個別に設計する必要があってですね!」
「「「……???」」」
ウキウキで説明すると、その女子たちは不思議そうな顔をした。まるで、魔法の話だと受け取っていない様子だ。
あ、あれ? 私……ちゃんと魔法の事を話したよね?
「簡単にいうと、あれにはたくさんの魔法が使われていて、どれも意思が伝わるようになっている。そういうことよ」
その時、後ろからレイチェル様の声がした。少し呆れたような顔をして、私の説明を簡潔にしてくれた。
「まっ、そんなことは出来るのは上級生……。いえ、国に選ばれた魔法使いくらいね。まだ、あなたたちには早いってこと」
そう言うと、すまし顔をして自分の席に戻っていった。
「なんか、良く分からないけれど……凄いってことは分かった。……うん、これが首席の実力なんだね」
「ユフィちゃんと同じクラスで良かった。もし、良かったら一緒に勉強させてもらえる?」
「ユフィちゃんから魔法を学んでみたいな。だって、あんなに凄いことが出来るんだもの」
「えぇっ!? わ、私にですか!?」
そ、そんな! 人に教えるなんてとんでもない! まだまだ、私も勉強の途中。魔法の事なんて知らない事ばかりなのに!
で、でも……魔法のお陰で私に興味を持ってくれたのは嬉しい。どうやって、お友達を作るか知らなかったけれど、魔法を通じてならお友達が出来そう。
「わ、私で分かることがあれば、協力します」
「本当? 今度、時間があったら一緒にお話ししようね」
「とても楽しみだよ。ありがとう!」
「絶対だからね!」
そう言うと、女子たちは嬉しそうにしてくれた。だけど、その後――。
「ずるい! 俺とも話してくれ!」
「さ、さっきの魔法凄かったね! どうやったら、出来るようになるの?」
周りで見ていたクラスメイトたちが一斉に集まってきた。一度に話しかけられて、戸惑ってしまう。
魔法を見てもらって、こんなにも反応が貰えるなんて思ってもみなかった。村ではひと目につかないように使っていたから、いつも一人だった。
だけど、学園に来てからそれが変わった。たくさんの人が魔法に興味を持っている。それだけで、ここは私にとって天国のような場所に思えてきた。
こんなにも堂々と魔法に触れ合える。それが、とても嬉しい。
「えっと、その、あのっ」
「ユフィ、慌てないで。一つずつやっていけばいいのよ」
「は、はい!」
私は深呼吸をして心を落ち着かせ、クラスメイトたちと向き合った。これからの学園生活が楽しくなる予感がして、胸が高鳴った。




