38.周りの反応
「はぁ……。あの魔法展開、良くわからなかったわ。今回は私が見破ってやると思ったのに……」
ドラゴンを消去すると、レイチェル様が頭を抱えて悔しそうに呟いた。
「魔法展開の連動が複雑になっていて、一つずつひも解くのが……」
「あっ、分かります!? そうなんですよ、あの魔法は魔法の連動が重要で――」
レイチェル様がぽつりと呟くと、思わず嬉しくなって話そうとした、が――。
「先は言わないで」
キッと睨まれた。
「そんなことを分からないようじゃ、あなたに勝てない。自分でちゃんと理解するわ」
そう言って、レイチェル様は去って行った。……もっと、魔法のお話がしたかった。その後ろ姿をじっと見つめた。
「は、ははっ! 今年の主席は規格外とは聞いていたが、まさかこれほどとは知らなかった! 君、凄いね!」
「そ、そうですか? 今まで田舎でしか魔法を使ったことがないので、良く分かりませんが……」
「いやいや、胸を張ってもいいよ。ちょっと騒ぎが大きすぎたけれど、伝統は守られた。じゃあ、デモンストレーションは終わりだ! みんな、拍手!」
在校生代表が声を上げると、周りから拍手が鳴り、それは徐々に大きくなっていく。そして、割れんばかりの歓声になって、空気が震えた。
その反応に戸惑った。初めて使った魔法のみんなから反応が貰えた。いつもはない状況にどう受け取っていいか分からない。
「ほら、見てくれ。これだけの生徒が君の魔法を見て、感動したんだ。だから、これからもこの調子で頑張ってくれ」
「えっ、は、はいっ」
とにかく、精一杯やって良かった。これからも、精一杯に魔法を使おう!
◇
ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれー! なんなんだ、今年の主席はーーっ!?
近くで見ていたけれど、あれはとんでもない。いや、とんでもないっていう領域を超えているんじゃないか!?
なんで、魔法の発動であんなにリアルなドラゴンを作れるんだ!? 普通はありえない、ありえないんだけどっ! そもそも、あの魔法は一体なんなんだ!? 召喚魔法じゃないのか!?
魔法を展開したと思ったら、いくつもの魔法が連動して、気が付けば巨大なドラゴンが目の前に現れていた。
しかも、ただ形を作っただけじゃない。翼が動いた。口を開いた。爪を振るった。まるで本物のドラゴンがそこにいるみたいだった。あれだけ精密な魔法を、たった一人で?
「……いや、待て。落ち着け、俺」
頭を抱えながら、必死に考える。今年の主席は、筆記試験と実技試験で一位だった。
それは知っている。試験監督たちが騒いでいたことも知っている。だから、かなりの実力者だとは思っていた。
でも、まさかここまでとは思わないだろーーっ!
そもそも、魔法っていうのは一つの魔法を正確に発動するだけでも、それなりの技術が必要なんだ。それをいくつも同時に連動させる?
しかも、それぞれの魔法が別々に動きながら、一つの巨大な魔法として成立している。
……意味が分からない。俺だって上級生だ。魔法について、それなりに勉強してきたつもりだ。だけど、さっきの魔法は理解できるとかできないとか、そういう話じゃない。
「ちょっ! 代表! 今の何なの! 説明して!」
「せ、説明!? 俺がっ!? い、いやいや、分からん! 上級生の俺でも分からん!」
「あれは召喚魔法じゃないのか!?」
「い、いや、それは違うと断言できる! だって、魔法陣が出現しなかっただろう!? だから、あれは純粋な魔法だ!」
「なんで魔法であんなことが出来るんだよー! どうやればいいんだよ! 代表、教えろ!」
「だから、分からないって言ってんだろうが!」
な、なんでみんな俺に寄って来るんだ! 俺だって分からないのに! 代表だからってなんでも知っているわけじゃないんだぞ!
「あの子、一体なんなの!? どこか貴族の家の子? 有名な魔法使いの弟子!?」
「わ、分からん! 田舎から出てきた平民って事しか分からん!」
「どうして、こんな才能が田舎に眠っているんだよ! もっと、有名になっているべきだろう!?」
「いや、知らんから! もしかして、誰もいない秘境で暮らしていたとかか!?」
だから、なんでも俺に質問するな! 質問するなら、ユフィに聞け! でも、誰もユフィに近寄ろうとはしない。
まぁ、あんなことがあった後だから、近寄りがたいのは分かる。近寄るだけで、凄い魔法を使ってきそうで怖いのだ。
在校生たちはユフィの魔法で阿鼻叫喚になり、騒ぎがどんどん大きくなる。……とんでもない、新入生が入ってきたものだ。
一体これから、この学園はどうなってしまうんだ?




