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魔法で遊んでいた世間知らずな田舎者、都会に出たら怪物扱いされました  作者: 鳥助


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34.入学式(1)

 黒色の生地に鮮やかな青色のラインが入っている制服。袖に腕を通すと、柔らかくて肌触りの良さを感じた。首元に青いリボンをつけると、鏡を見た。


「わぁ……凄い。別人みたい!」


 鏡に映ったのは、野暮ったい私ではない。王立グランセリア魔法学園の生徒になったユフィなのだ。


 この制服の上に紺色のローブを羽織ると、より、学園の生徒に見える。田舎暮らしのユフィを卒業したみたいだ。


「えへへ、今日から学園かぁ……。どんなところだろう」


 考えるのは学園の事。たくさんの同世代が集まり、一緒に切磋琢磨する。時には友情を育み、時にはライバルになり、様々な人間関係を結んでいく。


 田舎暮らしでまともに人間関係を築いてこなかった。そんな自分にとって、この学園は未知との遭遇だ。


「絶対に楽しい学園生活を送るんだ。そのためには全力でやらないと!」


 うじうじしていたら、ダメだ。何事も全力で取り組み、人並にならないといけない。私はまだまだ半人前。ちゃんと一人前になるためには、力を抜いていたらダメだ。


 決意を固めると、私はカバンを持って部屋を飛び出していった。


 ◇


 寮を出ると、隣にある校舎へと移動する。隣なのに距離がかなりあって、歩くのは大変だ。


 地図を見ながら間違えないように進むと、校舎の玄関が見えてきた。そこには生徒が疎らにいて、吸い込まれるように校舎の中に入って行く。


 私もそれに倣い、校舎に入る。地図を見て、一年生の教室に向かう。見慣れない廊下を進むと、一年生の教室が見えてきた。


「えっと、ニクラスあるから……。私はAクラスで……。あった、こっちだ」


 扉の上に着いてある札を確認すると、「A」と書かれた教室があった。扉を開ける前に深呼吸をすると、ゆっくりと扉を開けた。


 教室に入ると、窓がたくさん並んでいて、そこから差し込む朝日でとても明るい。大きな黒板に教卓。段々になった生徒が使うテーブルやイスがあった。


 そこにはすでに生徒が来ていて、思い思いの時間を過ごしていた。きょろきょろと見渡していると――。


「ユフィちゃん、おはよう! こっち、こっち!」


 ミレイ様の声が聞こえた。その方向を見ると、ミレイ様の他にロゼリア様もアルベルト様もいた。


 三人の姿を見ると、とてもホッとした。思わず駆け寄り、挨拶をする。


「おはようございます! 一緒のクラスで良かったです!」


「まぁ、Aクラスは上位の生徒が入れるクラスだからね。必然的に僕らも一緒になるってことさ」


「そんな制度で良かったわ……。もし、ユフィが離れると、目が届かなくなるから不安よ」


 クラス分けは試験の結果で決められているらしい。そのお陰で、私は仲良くなった三人とも一緒になることが出来た。


 ……という事は、レイチェル様とも一緒になるということ。キョロキョロと見渡すと、教室の窓際にレイチェル様がいた。


 ツンとした表情をして、頬杖をついて窓の外を見ている。周りにいる人が話したそうにしているけれど、近寄りがたい雰囲気を出しているのか、誰も話しかけない。


 ……私もちょっと話しかけづらい。だけど、何事も始めが肝心だ。レイチェル様と魔法の話をするには、勇気をかけて話しかけるのが一番良い。


 私は三人に一言断りを入れて、レイチェル様に近づいた。近づいても、ちっともこっちを見てくれない。それでも、私は話しかける。


「レイチェル様、おはようございます。今日から学園生活ですね。これから、よろしくお願いします」


「……」


 無難な言葉をかけたが、レイチェル様の反応はいまいち。もしかして、普通の会話には興味がないのかな? 興味がある話って言えば、やっぱり魔法の話だよね。


「今日は試験日に使っていた音を消す魔法を使っていないんですね」


「……っ!? なんで、それを!?」


 あの日の事を言うと、レイチェル様は驚いたように立ち上がり、こっちを向いた。それはまるで信じられない、と言った顔をしている。


 でも、私の方を向いてくれた。だから、嬉しくなって自分の知っていることを語る。


「えっと……あ、あの魔法凄いですよね。自分に必要な音だけを拾って、それ以外の音を遮断しているようでしたし」


「……っ!?」


「あれって、自分の意識と魔法を同調しているんですよね。だから、音の選別が出来ていて、最適な環境を作り出していたと思うんですよね」


「あ、あ、あなた……そこまで見破ってっ! あれは、気づかれないように魔力の波長を極力抑えていたのに!」


「えへへっ、分かっちゃいました」


 ようやく、あの時の魔法のことを話せた。レイチェル様は驚きつつも、なぜか絶望した顔をしてこちらを見てくる。


「あの魔法、本当に凄いですよね! どうやって、作ったのか……ぜひ教えてもらいたいです!」


「……っ! 話すわけないじゃない!」


 勇気を出して言ってみると、レイチェル様は机に腕を乗せて顔を埋めた。それから、その体がプルプルと震える。


「……信じられないっ。なんで、分かるのっ!? どれだけ、時間をかけて作ったと思うのよ!」


 ……えっと、楽しく魔法の話がしたかっただけなのに。どうして、そんなに悔しがるのか分からない。


 結局この後、レイチェル様とは話すことが出来なかった。

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