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魔法で遊んでいた世間知らずな田舎者、都会に出たら怪物扱いされました  作者: 鳥助


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30/63

30.入寮(1)

 光が収まると、そこはずっと泊まっていた宿屋の部屋だった。


「ふー、何とか戻ってこれたー」


 私は背伸びをして、息を吐いた。家のことは、全部やってきた。家畜を売ってさよならして、畑を更地にして、家の整理も。あとは、透過魔法をかけて姿を消しておいた。これで、私がいない間に悪戯をする人はいなくなっただろう。


 でも、これでしばらく家に帰らないとなると、少し寂しい気持ちになる。


「ううん、これから新しい生活が待っているんだから、落ち込んではいられない!」


 自分に喝を入れる。折角手に入れた機会だ、生かさなくてどうする。ペチペチと頬を叩いた時、テーブルに紙が置かれていたのが見えた。


「あれ? なんだろう……」


 近づいて、紙を見る。そこには綺麗な字でロゼリア様からのメッセージが書かれてあった。


「えーっと……『こちらの準備が終わり次第、一緒に買い物に行きましょう。絶対に一人で行かない事、分かった?』っと。なんだか、保護者みたい……」


 ロゼリア様の面倒見の良さはゼロムスさんを思い出す。なんだか懐かしい気持ちになって、気分が落ち着いた。


 これからは新しい関係を築いて、自分の新しい人生を歩まなければいけない。まずは、ロゼリア様たちといい関係を築けるように気を付けていこう。


「じゃあ、ロゼリア様たちが来るまで私は何をしていようかな?」


 一人で買い物に行ったらいけないと言われたので、やることがない。ずっと、宿屋にいるのも疲れるし、何かないかな?


 と、その時。窓の方で音がした。顔を向けると、そこには見慣れた魔法媒体がいた。


「あっ、伝書だ! 懐かしい!」


 それは鳥の形をしていて、魔力で出来ている魔法媒体。良く、外で魔法で遊んでいる時に、ゼロムスさんから伝書で呼び出されたっけ。


 という事は、私に何か伝えたい人がいるって事? 一体、誰だろうか? 不思議に思いつつも、窓を開ける。すると、伝書が羽ばたいて私の肩に止まった。


「えっと、魔力を出してっと」


 伝書に指先で魔力を渡す。すると、収められていた伝言が再生される。


『アーヴェルだ。寮の準備が整った、明日にでも入寮できるから、寮の受付を訪ねるといい』


 伝言はそれで終わり、伝書はスゥッと消えた。


「わぁ、もう寮の準備が整ったんだ。宿代もかかるから、明日にでも行ってみよう」


 寮……一体、どんなところだろうか? 考えるだけでワクワクして、今日は眠れなそうだ。


 ◇


「いつ見ても、大きいなぁ……」


 正門の前で立ち尽くして見上げる。王立グランセリア魔法学園の建物はとても大きく、そして広い。その大きさに圧倒されて、中々踏み込めない。


「……えぇいっ」


 でも、とうとう踏ん切りがついた。正門を越えて、私は敷地内へと入って行った。手に持った地図を確認しながら、寮の場所へと向かっていく。


 そうすると、校舎の傍に寮の建物があった。赤レンガで造られた建物は温かみがあって、馴染みやすい風合いだった。


 だけど、建物は大きい。こんな大きな建物で寝泊まりするなんて、恐縮してしまう。恐る恐る建物に近づき、大きな扉を開けた。


 そこは広いエントランスになっていて、天井が高いし、床には絨毯が敷かれてある。まるで、別世界に来た感じだ。


「わぁ、凄い……」


「いらっしゃい。初めての生徒さん?」


「あっ」


 エントランスを見ていると、声がした。勢いよく振り向くと、カウンターのある場所におばさんが立っていた。


「すいません……。えっと、初めてです。あっ、これ……生徒バッチです」


「どれどれ……確かに。あなたが今年の一番乗りよ。良かったわね」


「ど、どういうことですか?」


「寮に一番乗りをした生徒はね、メルテルテ女神の祝福を授かって、素敵な学園生活を送れるっていうジンクスがあるの」


「す、凄い……」


 寮に一番乗りしただけで、創造神と言われたメルテルテ女神の祝福が!? 神様の祝福か……魔法では再現できない領域なんだよね。でも、いつか再現出来るようになれば……。


「ふふっ、こんなに話を真に受けてくれた子は初めてよ」


「あはは、すいません。そうだったら、楽しいなって思って」


「それで、あなたの名前は?」


「あっ、申し遅れました。ユフィって言います」


「ユフィ……あぁっ! 学園で初めて特待生に選ばれたって凄い子よね! 制度を変えちゃうなんて、あなたはとんでもない魔法使いになりそうだわ」


 あっ……そこまで知られているのか。なんだか、恥ずかしいような気がする。


「あなたの部屋は早めに用意してって言われたから、もう用意は出来ているわ。着いてきて」


 そう言って、おばさんは一度奥の個室に入ると、手に鍵を持って歩き出した。私はその後を追っていった。

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