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魔法で遊んでいた世間知らずな田舎者、都会に出たら怪物扱いされました  作者: 鳥助


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28.家に帰る(2)

「転移陣だぞ!? 転移陣! 空間と空間を繋げて、一瞬で移動するための術式だ! 魔法の中でも最上位に位置する技術なんだぞ!」


「そ、そうなんですか?」


「そうなんですか、じゃない!」


 アルベルト様は、私が持っている白い布を指差しながら、信じられないものを見るような目を向けてくる。


「まず術式そのものが異常なほど複雑なんだ! 普通の魔法陣とは比べ物にならない。空間の座標を指定して、現在地と転移先の魔法陣を正確に繋げ、その状態を維持しながら術式を成立させなければならない!」


「……!」


「さらに問題なのが、発動だ。転移陣はただ魔力を流せば動くような代物じゃない。術式の一つ一つに、極めて繊細な魔力操作が要求される。魔力を流す量が多すぎても少なすぎても駄目だ。流す速度だって重要になる」


「わぁ、よく分かってますね! そうなんですよ、そこが難しいところなんですよね」


「なぜ、僕のこの説明を聞いて嬉しがるんだ!」


 転移陣の事をこんなにも分かってくれる人がいる。それが嬉しくてうれしくて堪らない! やっぱり、魔法のことでお話するのが好きだ! ゼロムスさんが生きていた頃の楽しい時間が戻ってきてくれたようだ。


「ちょっと待って! 十人がかりで発動するものを一人で発動するってこと? 魔力量とか大丈夫?」


「あっ! 十分間に合いますよ!」


「……えっ。ユフィ、あなた……知識や魔法技術だけじゃなくて、魔力量も相当あるの?」


「魔力増幅の鍛錬を怠ったことはありませんからね!」


 魔力が増えれば、それだけ魔法が使える。だから、それを知った時から、毎日毎時間毎分鍛えている。お陰で日に日に魔法を使える時間が伸びていっている。


「上位の魔法使いが十人がかりで、ようやく安定して発動できる魔法だぞ? 本当に発動出来るのか?」


「一度、使ってみたんですが大丈夫だったみたいですよ」


「転移先の座標を固定する者、空間を繋ぐ者、術式全体を維持する者、魔力の流れを調整する者……複数人で役割を分担しなければならないほど繊細な魔法なんだ! それを、一人で!? 無理だ、危険すぎる!」


「全部一人で出来ますよ。試して見せますね」


 慌てるアルベルト様を安心させるために、私は転移を実行に移す。白い布を床に敷いて、その上に乗る。


「じゃあ、発動させます。見ててください」


 私はすぐに魔法陣を発動させた。魔法陣から光が放たれた時――。


「ちょっと、待って!」


 ロゼリア様が慌てた様子で私の手を掴んできた。あっ、転移陣発動しちゃう!


 次の瞬間、転移陣は発動して目の前が光で包まれた。その光が収まると――私たちは私の家に転移してきた。


「ふぅ、なんとかなりましたね」


 ロゼリア様が急に掴んできたから、一人での転移から二人の転移に切り替えちゃった。ちょっと、操作が覚束なかったけれど、なんとか失敗せずに終わった。


 でも、実技試験以来に力を出せて楽しかった。やっぱり、こういう不測の事態が起こると、色々な魔法を発動出来て楽しくなる。もっと、何かあればな……。


「こ、ここは……ユフィの家?」


「あっ! そうです! 私の家に無事に着けました」


 ロゼリア様の声でハッと我に返った。


「私も……転移してきたってこと?」


「はい! いきなり二人になって魔法制御が難しくなったのですが、なんとかなりました」


「転移陣だけでも難しいのに、突発的に私に入ったことの弊害を乗り越えたって事?」


「はい! とても楽しい一瞬でした!」


 本心を言うと、ロゼリア様が頭を抱えて俯いた。唸り声が聞こえているけれど、どうしたのだろうか?


 ハッ! 私の部屋が臭いとかかな!? だって、お貴族様だから、きっといい匂いがする屋敷にいるはずだから!


「あ、あのっ……ここが嫌なら外に出ましょうか?」


 恐る恐る近づいて尋ねてみると、ロゼリア様が勢いよく顔を上げた。そして、ガッと力強く私の肩を掴む。


「ユフィ、あなた……とんでもないことをしたのよ、分かってる?」


「と、とんでもないことですか? ……いえ、私は普通に魔法を発動しただけで」


「あれが普通だなんて、とんでもない! 本当に規格外だし、常識を逸脱しているわ! それなのにユフィは自覚してないっ……これは危険すぎる」


 き、危険? 何か危険なことでもあるのだろうか? 今まで通りに使ってきたはずだから、危険なことなんてないのに……。


「大丈夫、私がユフィを守ってあげるから。ううん、あの二人にも協力してもらいましょう。そうしないと、ユフィが大変なことになるわ」


「え? 守る、ですか? い、いえいえ、そんな……!」


「いいえ、遠慮なんてさせないわ。あなたの力を悪意ある人たちに利用させたり、傷つけさせたりなんて絶対にしない。私が、そしてあの二人も必ず味方につけて、あなたを守り抜いてみせるわ」


 ど、どうしてそんな話になるのー!? 私は普通に魔法を使っていただけなのに!


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