27.家に帰る(1)
「お待たせしました。ストロベリアと紅茶でございます」
「あっ、はい……ありがとうございます」
ウェイターが私の前にケーキと紅茶を置いた。ケーキは以前、ロゼリア様が教えてくれたもので、白いクリームに包まれた上にイチゴが乗っている。
こ、このケーキと紅茶が……一万三千コルするとか……! 平民には高すぎる!
あの時、値段を知らずにバクバク食べてたっけ。値段を知った今なら、そんな風に食べれない! ……とりあえず、拝んでおこう。
「……ユフィ、何をしているの?」
「いえ、これが私の十三日間の食事だと思ったら、神々しく思えてきて……」
「……君はちゃんと食事を取っているのか?」
「平民と貴族の食事って、そんなに差があるんだねー。でも、今のユフィちゃんはお金持ちだよ! 遠慮なく食べようよ!」
……そうなのかな? いや、これは援助を受けたから出来る贅沢であって、私自身がお金持ちになった訳じゃない。
ここで羽目を外せば、元に戻れなくなる。だから、質素に節約して――!
「んー! やっぱり、美味しいです! こんなの食べたら、毎日通いたくなります!」
駄目だ! この味を覚えたら、もう後戻りは出来ない! 私は悪魔の食べ物を知ってしまった!
それから、四人で楽しくお喋りをしていると、ロゼリア様がハッとなった。
「そうよ。ユフィが王立グランセリア魔法学園に通うなら、服装も気をつけないといけないわ。田舎の服は絶対に浮いて見えるし、新しく買ったほうがいいわよ」
「えつ? でも、まだ着れますし……捨てるのは勿体ないです」
「いや、そこはしっかりしたほうがいい。古臭い服を着ていると、悪意が集まってくる。自衛のために整えたほうがいいだろう」
「私もそう思うよ。私は貴族の中で一番下だし、少しでも隙を見せれば攻撃されちゃうから……。だから、そこはちゃんとしておこう?」
三人の真剣な注意に不安が募る。もしかして、村で冷たい目で見られていたことが、学園でも起こるのだろうか? そう考えると、今のままではいけないのだろう。
「……分かりました。服を買おうと思います」
「田舎暮らしは何かと不便だったでしょう? 服以外も揃えたほうがいいわ」
「そうだ! 色々と見繕ってあげるよ! 一緒にショッピングしよう!」
「僕はパス。女子同士で行ってきて」
「あ、ありがとうございます! 助かります!」
貴族の二人が着いてくれるんだったら平気だ。だけど、貴族流の買い物をするから、お金をたくさん使うだろう。ついていけるかなぁ……。
「買い物はいいが、入学の準備は大丈夫か? 一度、領地に帰らないといけなくないか?」
「あっ! そうだった! 先にそっちを終わらせないと!」
「……そうだったわ。先に私達の準備を終わらせてから、ユフィの必要な物を買いましょう。ユフィも一回帰らないといけないんじゃない?」
「あっ、そうですね! 村長さんに報告しないといけないです」
「君の領地はどこだ?」
「キンガーム州ナムレル領です」
そう言うと、三人は驚いたように目を見開いた。
「そこ、かなり遠いじゃん! 今から帰って間に合う!?」
「確かに…三週間はかかるんじゃないか?」
「……ギリギリね。明日にでも向かったほうがいいわ」
「えっ? 大丈夫ですよ」
真剣に悩む三人に私はケロッと言った。それには、三人は不思議そうにしていた。
「何が大丈夫なんだ。ギリギリ間に合うからか?」
「いえ、宿屋に帰ればいつでも家に帰れますので」
「ど、どういうこと!? 宿屋と家がくっついてるってこと!?」
「まぁ、近いですね……」
「近いって、あなた……。分かったわ、本当かどうか確認してあげるわ」
……ん? どうして、確認することになったんだろう?
「私も行く! どうやって帰るか、見てみたい!」
「僕も興味あるな……。見に行こう」
えっ? 二人も来るの? 平民の宿屋に貴族が来たら驚かれるんじゃ……。だ、大丈夫かな?
◇
「えっと、狭いところですが……どうぞ」
三人を連れて借りている部屋にやってきた。一人だと十分なスペースだが、四人も入るとギューギュー詰めだ。
「本当にこんなところから家に帰れるのか?」
「はい、大丈夫です。このカバンに入っています」
私はサイドテーブルに置いてあったカバンを漁った。その中にあるのは一枚の白い布。それを手に持って広げる。
「はい、これを使います」
その白い布には魔法陣が刺繍していて、特別な力が備わっている。それを見た三人は不思議そうにしていたが、アルベルト様が驚いた顔になった。
「ま、まさか……それ……転移陣じゃ……」
「あっ、分かります? 帰りが大変なので作っちゃいました。本当は転移魔法を習得しようとしたのですが、まだ私の力量じゃ無理でした。だから、比較的簡単な――」
「簡単もクソもあるかー!! それがどれだけ、難しいものか分かって言っているのかー!?」
……えっ?




