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魔法で遊んでいた世間知らずな田舎者、都会に出たら怪物扱いされました  作者: 鳥助


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25.支度金

「試験合格、おめでとう。ユフィは特待生として認められ、学園で生活するための援助が受けられるようになった」


 学園長室に戻ってきた私たち。アーヴェル様のその言葉で試験に合格したということがはっきりと分かって、ホッとした。


「特待生というのは、具体的にはどういうものなんですか?」


「簡単に言えば、学園で学ぶために必要な費用を、すべて学園側で負担する制度だ」


「す、すべてですか?」


「ああ。まず授業料は全額免除。それだけではない。授業で使う教科書や教材、実習に必要な道具など、学習にかかる費用も基本的に免除するつもりだ」


「そ、そんなに? い、いいんですか?」


「もちろんだ。君が金銭的な理由で授業を受けられない、ということがないようにする。制服も学園生活に必要なものだから、こちらで用意しよう」


 ありとあらゆるものに支援をしてくれる。そこまでしてもらえるなんて、思ってもいなかった。試験に合格して良かった!


「さらに、学園には寮がある。寮費もこちらで負担する。食事などについても心配する必要はない」


「……そ、そこもですか?」


「その上で、生活費も支給する。君は故郷を離れて一人で王都へ来たばかりだ。生活のために働く必要が生じれば、それだけ勉強する時間が減ってしまう。それでは特待生として迎える意味がないからな」


「……」


 思わず、口が開けっ放しになった。授業料だけではなく、教材も制服も寮も、さらには生活費まで。私は驚きながらアーヴェル様の話を聞いていた。


「ただし、一つだけ条件がある」


「条件……ですか?」


「ああ。特待生には、学園側から特別な手伝いをしてもらおう」


「お手伝い……?」


「難しいことを頼むつもりはない。君の魔法に関する知識や技術を、学園のために活用してもらいたいんだ」


 そう言って、アーヴェル様は少しだけ苦笑した。


「もちろん、学業を犠牲にしてまで働いてもらうつもりはない。あくまで学生としての生活を優先する。その上で、君にしかできないことを手伝ってもらいたい」


「私にしかできないこと……」


「今日の試験を見れば分かるだろう。君の魔法は、この学園にとっても非常に価値がある。だからこそ、学ぶ場所と生活を保障する代わりに、君の力を学園のためにも役立ててほしい。それが今回の特待生制度の条件だ」


「分かりました」


 私は迷うことなく頷いた。勉強する場所を用意してもらえて、生活の心配までしなくていい。その代わりに、自分の得意な魔法で学園のお手伝いをする。


 それなら、私にもできそうだ。


「私にできることなら、頑張ります!」


「……そう言ってくれると思っていたよ。では、まずは支度金から渡そう。とりあえず、五百万コルだ」


「……えっ?」


 今、なんて言った? 五百万、コル?


 理解出来なくて呆然としていると、ロゼリア様が手を上げた。


「それで本当に足りるんでしょうか? もう少し、出した方がユフィのためになると思いますけれど……」


「むっ、そうか? だったら、八百万コルを出そうか」


「それじゃあ、キリが悪いんじゃないでしょうか? これから、色々とお金がかかりますし。面倒な手続きを省くためにも、一千万コルが妥当じゃないでしょうか?」


 ……一千万コル?


「そうだな。しばらくは入用になるだろう。始めに多く渡しておけば、手間も省ける。一千万コルにしよう」


「ちょっ! ちょっと、待ってください! そ、そんな大金受け取れません!」


「何を言う。王都で暮らすのであれば、これくらいの金が必要になるぞ」


「ど、どこにそんな大金を使うんですか!? 私、一日の食費は千コルでしたよ!」


「王都は何かと高いからな。千コルなんて何も買えないぞ」


 そ、そんな! 私の一日分の食費では、王都では何も買えないって! どれだけ、高いの!? そ、そんな場所で私……生きていける!?


「ユフィは田舎から出てきたばかりだし、色々と教えてあげましょうか?」


「……ユフィ一人で必要な物を揃えるのは難しいんじゃないか?」


「あっ! だったら、私たちと一緒に必要な物を買いに行こうよ!」


「た、助かります!」


 貴族の三人が着いてきてくれるのであれば、王都で問題なく買い物が出来そうだ。ホッとしていると、レイチェル様が扉に近づいていった。


「もう、用は済んだし、私は帰るわ」


「えー! レイちゃんも一緒に見て回ろうよ! 楽しいからさ!」


「慣れ合うつもりはないわ。それに、時間の無駄よ。私はユフィを越えないといけないから、少しの時間でも惜しいの。じゃあね」


 ミレイ様が引き留めたが、レイチェル様は気のない素振りをして部屋を出て行ってしまった。


 もっと、お話したかった。そんな感情が現れては消えていった。


「よし、ユフィの世話はお前たちに任せる。二か月後の入学までに、ユフィを整えてやってくれ」


 アーヴェル様の言葉に他の三人は頷いた。こうして私は貴族の三人に連れられて、買い物に行くことになった。


 この時、気づけばよかったんだ。貴族と田舎暮らしの平民では金銭感覚が明らかに違っていることを……。

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