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魔法で遊んでいた世間知らずな田舎者、都会に出たら怪物扱いされました  作者: 鳥助


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18.入学説明

 真剣な目で見つめられる。そんな目で見られたのは初めてだったから、思わず目を逸らしてしまった。


 その時、気づいた。周囲の受験者も同じような目で見てきていた事。みんな、私が何者かを知りたくて、視線を向けてくる。


 あの試験監督でさえ、その言葉の答えを待っているように鋭い視線を投げかけてきていた。


「えっと、その、あの……」


 口ごもり、俯く。手をギュッと握りしめて、言葉を考える。


「わ、私は……田舎で暮らしていて、そこで魔法で遊んでて……」


「……は? 魔法で遊んでいた? ……何よそれ、勉強してないってこと?」


「あっ、いえ! 勉強はしてます! ただ、勉強っていう感覚がなくて……自分的には遊んでいたっていう方がしっくりくるんです」


「……ふざけているの? 筆記試験も実技試験も百五十点を出しておきながら、遊んでいたですって……」


 レイチェル様の目が鋭くなる。怒りを滲ませて、睨んできた。正直に話したのに、どうしてこんなに怒っているのだろうか?


 それに周りも騒がしい。みんな、私の話をしていて、とても落ち着かない。な、なんでこんな風になってしまったんだろう。


 レイチェル様は睨みを聞かせているし、他の上位三人は戸惑いの目を向けてきている。さっきまで、穏やかに話していたに、どうしてこんなことになってしまったんだろう。


 その時、試験監督が咳ばらいをした。


「すまない、話しが逸れてしまったな。では、これより合格者を集めてミーティングをする。不合格者は即時退出するように」


 試験監督が誘導すると、現実に戻ってきた受験者が動き出す。不合格者はガックリと肩を落として退室し、合格者は誇らしい笑顔を浮かべて席に着いた。


 良かった……みんなの視線を受けなくて済む。ホッと胸を撫でおろしていると、レイチェル様がまだ何か言いたそうにこちらに視線を向けてくる。


 だけど、試験監督の意を汲み取ってか、口を噤んで席に着いた。追及がなくて安心した。私も席に着こうとすると、ロゼリア様が手招きをしてくれた。


 それが嬉しくて私はすぐに駆け寄り、隣の席に座った。すると、私の後ろにはミレイ様とアルベルト様も座る。


 あんなことがあったけれど、みんなが近くにいてくれてホッとした。……もしかして、友達になれそう?


 村では魔法を使っているという理由で親しい友達はいなかった。だから、もしそんな友達になれたらどれだけいいことか。


 考え事にふけっていると、また試験監督が咳ばらいをした。


「みんな、席に着いたな。まずは王立グランセリア魔法学園の試験に合格、おめでとう。ふた月後、君たちは晴れて入学となるだろう」


 今まで厳しい口調だったけれど、今はとても穏やかに話してくれる。それが、とてもホッとした。


「まず、入学までにいくつか準備してもらうものがある」


 試験監督がそう言うと、座っている人たちが一斉に顔を上げた。


「一つ目は、入学手続きだ。今日渡す書類に必要事項を記入し、この後、提出してもらう。貴族の者は家名や身分を記入する欄もあるが、平民は記入しなくてもいい欄もある」


 試験監督たちが順番に書類を配ってくれた。私は渡された書類を覗き込む。


 紙には、名前や年齢、出身地を書く欄がいくつも並んでいた。名前を書くくらいなら大丈夫そう。私はそう思いながら、隣に座るロゼリア様の書類をちらりと見る。


 ロゼリア様はスラスラと必要な部分を記入していった。私も見よう見まねで書類に記入していく。それが終わると、書類は試験監督が回収していった。


 書類を書いて、少しずつ実感が沸いてきた。私、本当に合格したんだ。ここにいるみんなと一緒に学園に通えることになったんだ。


 鼻歌を歌い出しそうになるくらいに楽しみだ。だけど、その気分を打ち砕くような――私は現実を思い知る。


「二つ目は、制服と教材の準備だ。制服は学園指定のものを購入してもらう。魔法を学ぶための教本や実習道具についても、入学までに各自で用意すること。どこで購入すればいいのか、今用紙を配る」


 再び試験監督が用紙を配る。それを目にすると、私は息が止まった。


「――百五十万コル」


 そこに書かれた金額は信じられないくらいに高額だった。一日の食費が千コルくらいで生きてきた私に、その何百倍もの金額を要求された。


 鼓動が不愉快に高鳴る。血の気が引いていく感じだ。それなのに、まだ追い打ちがやってきた。


「三つ目は、入学金と授業料だ。入学金は三十万コル。授業料は一年につき二百万コルとなる。寮を利用する者は、別途寮費が必要になるな。寮費については部屋で料金が違うから、詳しくは用紙を確認してくれ」


 そうして、また用紙が配られた。そこに書かれた金額を見て、心臓が痛くなる。私が入学に際して必要な金額が五百六十万コルになっていた。


 とてもじゃないが、私には払えない。払えないという事は、私は学園に通えないということだ。

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