17.反応
一番上に私の名前が書いてあって、信じられなかった。絶対、他の人の方が上だと思っていたから。杖がなくて、田舎の魔法だし、みんなの経験が違うと思っていた。
その結果が良く分からず、ボーッとする。すると、自然と視線が下がっていった。
二位、レイチェル・ヴァルディア、百点。三位、ロゼリア・ソルコック、九十六点。四位、ミレイ・ハートレット、九十二点。五位、アルベルト・グランフォード、八十七点。
あっ、みんなの名前がある。それだけで、とても嬉しい気持ちになった。自分の順位は理解出来ないけれど、みんなの順位なら素直に受け止められた。
それに、今回もレイチェル様は百点。一体、どんな風に魔力の球を動かしたのだろうか? レイチェル様が魔法を使っているところをもっと見たい。
そんな気持ちが溢れて、もう一度レイチェル様を見る。すると、目を見開いて呆然としていたレイチェル様がその場に座り込んだ。
今も紙の一番上を見つめて、動かない。いや、その目が潤みだし――涙が零れた。……泣いている?
その姿を見て、胸が締め付けられた。堪らず、声を掛けようとした、その時――。
「ちょっと、ユフィちゃん! なんで、あんな点数が取れるの!?」
ミレイ様が私の両肩を掴み、揺さぶってきた。
「わっ、わっ! えっと、私にも分かりません!」
「わ、分からないって……どんなことをしたのかも分からないの!?」
「えっと、それはその……」
こ、これは言ってもいいの? でも、試験の内容は言ったらダメって言っていたし……。
すると、ロゼリア様が試験監督に声をかける。
「すいません。どのような試験結果だったか、話しても大丈夫ですか?」
「このように結果が出た後だから、問題ない」
「……だ、そうよ。私もどんなことをしたのか、とても気になるわ」
「僕も気になる。何秒でゴールして、どの穴に通したんだ?」
許しが得られると、ロゼリア様もアルベルト様も詰め寄ってきた。その圧を前に、黙ってなんていられない。
「えっと、ゴールまでは四秒で……針の穴を通しました」
素直に話した瞬間――周りから音が引いていった。誰もが目を見開き、口を開けてこちらを見ている。
あ、あれ……? どうしたんだろう? 何かおかしい事言った?
まるで、時が止まったかのような空気に冷や汗が出る。な、何か言った方がいいのだろうか?
「で、でも……思った通りにいかなくて……。とても、難しかったです」
シンと静まり返り、物音ひとつしない。もう一度口を開こうとした――次の瞬間、止まっていた時間が一気に動き出した。
「ちょ、ちょっと待て! 四秒ってどういうことだ!?」
「針の穴を通したって、本当にあの針穴か!?」
「いやいや、そんなわけないだろ! あの試験は百点満点なんだぞ!?」
「じゃあ、どうして百五十点なんだよ!」
「知るか! だから今、混乱してるんだろ!」
さっきまで静かだった部屋が、一瞬で大騒ぎになった。
あちこちから声が上がり、試験を受けた人たちがこちらを指差している。中には信じられないものを見るような顔で後ずさる人までいた。
「ユフィちゃん、本当に四秒!?」
「は、はい……そう言われました」
「開始の合図から四秒は信じられないけど、試験監督が嘘をつくわけないし!」
ミレイ様が百面相しながら頭を抱えた。ロゼリア様も驚いた顔をしているけれど、すぐに試験監督へ視線を向ける。
「本当に……四秒だったのですか?」
「……間違いない。開始の合図と同時に魔力の球を動かした。そして、最初の穴から最後の針穴まで、すべてを四秒で通過した」
「……そんなことが」
ロゼリア様の顔から、いつもの余裕が消えていく。信じられないような視線を投げかけてきた。
「針の穴を通した……だと? あれは、誰も通すことのできない穴を用意して、受験者に現実を知らしめるためにあったのではないか?」
「えっ、あれって試験じゃなかったんですか?」
「試験でも、試験じゃなくても、それを通すと考えること自体が規格外だ。普通なら出来ないと諦めてしまう。だが、君はそれをやった。それが出来ると思ったからだ」
ただ、目の前に出されたから、それを達成しただけだ。その前に、色々と考えていなかった。それが……普通じゃない?
「君は考え方からして、規格外だ」
「えっ? で、でも……これが私の普通で――」
「普通じゃないわ」
その声に顔を向けると、初めてレイチェル様と目が合った。思わず、ドキッとしてしまう。
ようやく、顔があってまじまじと観察してしまう。目は赤くなっていて、泣いた後がはっきり分かる。
そんな目で真剣に私を見つめていた。
「あなたは一体何者なの?」




