11.実技試験の日
「お姉ちゃん、とうとう今日だね!」
朝、宿屋の食堂に行くと女の子が声を掛けてきた。鼻息を荒くして、とても興奮した様子だ。
「う、うん……。ここまで残るとは思ってなかったから、ちょっと緊張してる」
「うんうん、そうだよね。私もお姉ちゃんがあんなに自分は落ちるって言っていたから、それを信じていた。だけど、これは良い裏切りだよ」
女の子は腕組をして深く頷いていた。私的には裏切りたくなかったんだけどな……。
「ちゃんと試験が上手くいくように、応援させてもらうよ。これ、わたしからのプレゼント」
そう言って、女の子はお皿に入ったフルーツを差し出してきた。
「えっ!? い、いいの!?」
「もちろん、いいよ。お姉ちゃんには絶対に王立グランセリア魔法学園に入って欲しいし。これを食べて、元気になって、絶対に受かって!」
こんな女の子に応援されるなんて、とても嬉しい。今まで応援されたことがなかったから、そういう人がいるってだけで心を強く持てる。
だけど、話はそれで終わらなかった。
「ん? もしかして、王立グランセリア魔法学園の受験者?」
食堂にいた他の客が話に入ってきた。すると、女の子は元気よく答える。
「うん、そうだよ! お姉ちゃん、筆記試験を合格したんだって! 今日は実技試験だよ!」
「それはめでたいなぁ! 頑張って、入れるといいな!」
「緊張しないで、全力を出し切るんだよ」
「周りのことは気にするな。自分とちゃんと向き合うんだよ」
「えっ、えっ、えっ?」
すると、一斉に声がかかった。食堂にいる人たちが私に声を掛けてくれたのだ。どれも、私を応援する言葉で驚いた。
だけど、その応援がじんわりと心に沁みる。これほどに応援されたことがなかったので、嬉しい気持ちが膨らんできた。
「えっと、あの……ありがとうございます。精一杯、頑張ります」
立ち上がって頭を下げると、また周りから応援の声が飛んできた。それだけで、勇気百倍だ。人の言葉ってこんなにも力になるものなのだと、初めて知った。
「じゃあ、お姉ちゃん。しっかり食べて、元気を出そう。そして、実技試験を頑張ってきて」
「うん!」
みんなが応援してくれたから、なんだかやる気が漲ってきた。これなら、良い魔法を使えそうだ。
◇
朝食を食べ終えて支度をすると、私は宿屋を出た。朝の清々しい空気を吸いながら歩く通りはとても気持ちがいい。自然と自分の気持ちが上向きになった。
スキップしたくなる気持ちを抑え、足を進めていくと――目の前に王城が見えてきた。その王城にはちらほらと同じ年代の子供たちが入って行くのが見える。
私も遅れないように王城の中へと入った。そして、看板が指し示す方向に進んでいくと、「実技試験受験者控室」の張り紙が張られた部屋を見つけた。
「し、失礼しまーす……」
恐る恐る中に入ってみると、すでにたくさんの受験者が部屋に入っていた。その空気は重く、ピリついている。さっきまで良い気分だったのに、その空気に流されてしまいそうだ。
なんとか、自分の気をしっかりと持つために、空気にあてられないようにしたい。部屋の隅に移動しようとした時――。
「ユフィ、おはよう」
「あっ、ロゼリア様! おはようございます!」
聞きなれた声に一気に安心感が増す。ロゼリア様が近づいてきているのに、待ちきれなくて自分から駆け寄ってしまった。
「調子はどう?」
「宿屋の人たちに応援されたので、とても元気いっぱいです!」
「それは良かった。今日は十二分に力が発揮出来るわね。ユフィがどれだけの魔法を操れるのか、楽しみにしているわ」
微笑んでそう言われると、なんだか嬉しくなる。このままロゼリア様と一緒に居て――と、思っていたら。
「お、おい……聞いたか? ユフィって……」
「あ、あいつが百五十点を取った子か?」
「嘘……普通の子じゃない」
周りがざわつき始めた。誰もが私の方を見て、注目をしている。
「えっ、えっ?」
戸惑っていると、周りの子たちが一斉に集まってきた。
「何をどうやって、百五十点なんか出したんだ!? 解答……どんな解答したんだ!?」
「どんな勉強したら、あんな点数が取れるの!? 勉強法が特別とか!?」
「実技の方はどうなんだ!? あれだけの知識があるから、実技の方も凄いのか!? 今回の攻略法とかあるか!?」
周りに集まってきた子が我先にと声を掛けてきた。四方八方から声をかけられて、訳が分からなくなる。こ、こんなに声を掛けられると困るよー!
頭がグルグルしていた時、また声が掛かった。
「君たち、少し落ち着いたら? その子、とても困っているよ」
「ほら、その子。困惑しているから、少し離れて離れて」
男の子と女の子の声。その声に皆が振り向き、その姿を見て驚く。
「あっ……! アルベルト・グランフォード! それに、ミレイ・ハートレット!」
それは、筆記試験で三位と四位の子だった。




