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婚約者の騎士様に放置されたので異世界で日本酒を楽しみます~本当に好きなお相手とどうぞお幸せに~  作者: 千早 朔


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お揃いのブローチに込められた想い

 私の視線を受けたフレデリック様が、気恥ずかしそうに片手で口元を覆いながら視線を逸らす。


「その、どうしても身に着けていただきたかったので、リアナ嬢と仲の良いお二人に相談をさせていただいたんです」


「突然、七枚にも及ぶお手紙を送りつけてくる蛮行を、"相談"なんて可愛らしい表現に収めていいものかしら。まあ、フレデリック卿が真剣に迷走していることはよく伝わったけども」


「わたくしは楽しく拝見させていただきましたわ。戯曲の一場面のようで、なかなか赴き深いお手紙でした」


(フレデリック様、いったい何を書かれたのかしら……)


「断ってはリアナ嬢の負担が増しそうだったものだから、少し、試してみたのよ。招いたフレデリック様に、貴族女性の服飾におけるマナーについての講義をしたの。リアナ嬢の好みを伝えるのではなくね。そしたら、あんまりにも熱心に学ばれるものだから、毒気が抜かれてしまって。いくつか提案させていただいたわ」


 アシェル様は「もっとも」と扇子を開き、双眸を細めてフレデリック様を見遣る。


「婚約者のいる紳士ならば当然知っているであろう基礎すらご存じないとは、驚きましたけれど。これまでよっぽど女性に興味がなかったのだと、よくわかりましたわ」


 エステラ様は穏やかに微笑み、


「その時に、お約束していただいたのです。どんな宝飾品をリアナ嬢に贈ろうとも、決して装着を強要しないと。身に付けるかどうかは、リアナ嬢の意志を尊重するように、と」


(そんなことが……。全然、気が付かなかったわ)


「ありがとうございます、アシェル様、エステラ様。このブローチは、私の意志で身に着けてきました」


「そう。なら、これ以上に私達が言うことはないわ」


「"剣姫選定の儀"が終わりましたら、わたくし達と一緒に遊んでくださいませ」


「ええ、ぜひご一緒させてください。それと、フレデリック様」


 私は彼へと向き直り、


「色々とご配慮くださり、本当にありがとうございました」


「……いえ。元は、俺のワガママですから」


 よほど手紙の件を気にされているのか、相も変わらず耳を赤くしたままのフレデリック様は、そっと私の両手を掴み、


「一緒に過ごせないことが口惜しくてたまりません。街歩きをされる際は、必ずアシェル嬢とエステラ嬢の側にいてください。声をかけてくる男共は無視を。俺を含めた騎士団が巡回していますから、困ったことがあれば遠慮なく声をかけてください」


「わかりました。お約束します」


(たしかにフレデリック様の婚約者である私が一緒にいれば、お二人を守れるものね)


 頷いた私に、尚もフレデリック様が口を開こうとしたその時、


「ここにいたのか、リアナ嬢。うん、やはり私の見立ては完璧だな」


「ご機嫌麗しく、リアナ嬢。遠目からでも、この場だけ光輝いて見えました」


「マルガレット様、ルーベンス様!」


 軽く膝を折り挨拶をすると、フレデリック様も頭を下げる。


「この度は私の婚約者にお力添えいただき、お礼申し上げます」


「なに、"ベスティ侯爵家"の名は関係なく、リアナ嬢自身を気に入ったからこその助力だ。貴殿が恩義を感じる必要はない。……揃いのブローチを付けているのか」


「はい。騎士団の任務がありますゆえ、側にはいられませんが、彼女の婚約者は私ですので」


 フレデリック様はルーベンス様へと向き直り、


「少々遅れますが、パーティーには必ず出席します。それまで、私の婚約者の手助けをお願いいたします」


「任せてください。僕、リアナ嬢とはとーっても相性がいいので」


(な、なんか空気がピリピリとしているような……)


 フレデリック様はともかく、マルガレット様もルーベンス様も笑んでいるのに、妙に圧があるような?

 そんな奇妙な雰囲気を切り裂いたのは、「見つけたぞ! フレデリック!」と叫ぶ声。

 セド様だ。脇目も振らずに駆け寄ってくるなり、フレデリック様の服をむんずと掴み、


「ギリギリもギリギリだぞお前っ! あ、ご令嬢方にマルガレット夫人には、ご機嫌麗しゅう。この胸を震わせるお一人お一人の美しさを言葉に出来ないまま去る無礼をお許しくださいーっ!」


 フレデリック様を引き連れながら、もはや後半は遠くから叫びながら告げていったセド様を手を振って見送る。


(誰かに引きずられていくフレデリック様って、新鮮ね)


 どうやらセド様がフレデリック様にとって気の置けない関係にあるというのは、真実みたい。


(結局、ゼシカ様にはお会い出来ずのままだったけれど……よかったのかしら)


 そんな心配をしていた私がどう見えたのか、アシェル様が「リアナ嬢」と私の両肩に手を添えた。


「私達も、そろそろ会場に向かいましょうか。では皆様、リアナ嬢は私が引き受けますわね」


 会場には、王様や王妃様を始めとする王家の方々も出席される。

 選出された三名の令嬢が座る席はその近くに配置されているから、儀式の内容そのものよりも、そちらに緊張してしまう。

ここまでお付き合いくださり、ありがとうございます!

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