21、アースの城
(いよいよだ)
アースはその日を待ちわびていた。
グランに頼んであった整体院の完成が近づいて来た。
明日、出来上がり具合を見に行く予定だった。
「兄貴、今日は何だか嬉しそうだな?」
「ああもうすぐだ。俺の城が完成する!」
「城?兄貴、城なんか作ったのか!」
隣りで食事をしているユリシスが驚いている。
小さな子供たちの面倒を見てくれているチェリーも目を見開いていた。
「いやいや、城っていうのは例えばの話しだよ。この近くに自分の整体院を造っているんだけど、それがもうすぐ完成するんだよ」
「じゃあ完成したら、僕がお掃除しに行ってあげるよ!」
「そうか、それは助かるな」
チェリーの真っ直ぐな眼差しを受けて楽し気な気分になる。
アースは完成するその日を頭に描きながら、チェリーには何を手伝って貰おうかと考えていた。
それにアース自身は、いつまでも孤児院で世話になっている訳にはいかないと思っている。
パインは迷宮発見の恩給があるらしく、お金には困らないのからいつまでも居てくれて構わないと言ってくれているが、流石にそれは外聞も悪い。
パインも妙齢な女性であるから、一人くらいはそういう関係の男性がいる筈だった。
アースはそう思っている。
しかし、当のパインからはそんな素振りは微塵も見られないが…。
「アース、その整体院の名前はもう決めたのかしら?」
「いや、まだ決めていないな」
「私が決めても良いかしら?」
「パインさんが?」
パインの突然の申し出に戸惑いながら、アースは特に考えていなかった整体院の名前はパインに任せても良いかな?と思った。
「じゃあ、任せるよ」
「ええ、良い名前を考えるわね!」
そのうちこの孤児院で世話になっている子供たちも、大きくなって巣立っていくだろう。
その時に何か出来る様になっていればいいな、と食事をしながらアースの夢は膨らんでいった。
「そう言えば兄貴、リーダーが『近いうちにクランハウスへ顔を出してくれ!』って言ってたんだけど、何時くらいなら来れそう?」
「サローインが?何だろうな…」
大体の想像は付いていたが、ユリシスの前でいう訳にもいかない。
ここにはパインもチェリーも居るし、その他の子供たちも小さいとはいえ言葉が理解出来る者は数名は居るはずだ。
嘘を吐く事もしたくは無いし、余計な心配もさせたくない。
「明日、整体院の様子を見に行った後にでも行ってみるよ」
アースはそう言ってユリシスの方へサムズアップした。
「分かった!リーダーにもそう伝えとくよ!」
「それで頼むよ」
次の日、アースは予定通り朝から整体院の計画地へと赴く。
既にグランは来ており、まだ何か作業をしている様だった。
「グランおはよう!」
「おお来たかアース!ちょうどいい」
入口の所で作業をしていたグランがアースへ近づいて来た。
「後はこの看板を完成さるだけだ!名前は決まったのか?」
「ああ……名前は……」
グランと二人で看板を設置していると、ポーラがやって来た。
「アース!おはよう!良い店だね!」
「おはようポーラ。グランが頑張ってくれたおかげだよ!」
「これなら繁盛間違いなしだね~!あたしの店も近いから、食事はあたしが届けてあげるよ!」
「それは…嬉しいけど。良いのか?」
アースが気を遣った返事をしたからか、グランから野次がとんだ。
「おいおいアース!お前さんも男ならそこは『ありがとう!』の一言でいいんじゃねえか?どっちかってええと、ポーラはただお前さんに……」
「グラ~ン!?それ以上言うと、アンタあたしの店を出禁にするよ?」
ポーラはグランをジロリと睨むと、人差し指を立ててそう付け加える。
「な、アース!そういうこった!いっその事、女房にでもしてやったら……」
そこまで言ったグランがいきなり頭を抱えて座り込んだ。
その後ろには拳を握ったポーラが佇んでいる。
「ホントに命が要らないらしいね!」
「わ、分かったよ!もう言わねえから、殴るのは止めろ!」
かなり効いたのか、グランは涙目になりながら自分の頭を擦っていた。
「こんなバカの言う事は気にしなくていいからね?それに、あ、あたしの店は夜以外それほど忙しくはないからさ、そんなに気を遣って貰わなくても大丈夫だからさ!」
「ああ。一人で暮らすつもりだから、正直助かるよ。多分結構な頻度で食べに行く事になるだろうから、よろしく頼むよ!」
「い、いつでも…。待ってるからさ!」
スラっと背の高いポーラが恥じらう様に目を伏せている様子を、アースは可愛いと感じていた。
「ポーラもいつでも来てくれ。俺の新しい城へ、この『アース希望整体院』にな!」
「毎日来るよ!」
その横でグランが肩を窄めてやれやれという様な顔をしていた。
さあ、いよいよだ!
突然の出張で更新出来ませんでした。すいません。




