↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/27

18、依頼料

迷宮の門からアースが出てきた。

その顔を確認した受付嬢が、すぐにハンマーを呼びに行った。

ハンマーとスパーナは揃って降りてきた。


アースが鞄から出した魔石を間抜けな顔したハンマーが受けとる。


 「……この大きさは確かに階層主の物。アダマンタイマイと断定は出来ませんが、ほぼ間違いは無いと思われます。すぐに鑑定係の元へ」

 「ああ、頼むぜ」


スパーナとハンマーのやり取りを見ながら、鞄から45階層の鍵を出してハンマーへとアースは渡す。


 「じゃそう言う事で。また暫く掛かるでしょ?承認下りたら教えて下さい」


アースは軽く右手を上げて冒険者協会を出て行った。







まだ昼までには時間があるからか、店の中に客はほとんど居なかった。

扉を開けて中に入るといつもの女性給仕がアースに気付き、ポーラを呼びに行ってくれた。


 「アース、どうしたんだい?腹ごしらえでもして行くかい?」


ポーラはいつもと同じ様に注文を尋ねてくる。

何も言わずにアースは、鞄から出した冒険者証と革のグローブをテーブルの上に置いた。


 「45階の階層主はもう倒してきた。これは恐らく弟さんの物だろう?ボス部屋に落ちていたよ」


冒険者証と革のグローブを手に取ったポーラの目から涙が溢れ出る。


 「名前を聞いておいて良かった。ボス部屋は特殊だから、死ぬか倒すかしないと中からは出られないから何か残っているとは思っていたんだ」

 「いいんだよ。冒険者になったから…覚悟はしていたからね。…アース、ありがとう!ありがとう!……あたし、無理言って…ごめんよ。ありがとう!ホントに、ありがとう!」


アースはきつくハグされ、何度も何度も頬やら首にキスの嵐を受けていた。

ようやく落ち着いた様だが、泣き腫らしたポーラの目は赤くなっていた。


 「二十歳にもなって…恥ずかしい。すまないね、みっともないところ見せてしまって…」

 「なんだと!ポーラは二十歳なのか?俺と二つしか違わないのか…」

 「あはははは、驚くところはそこなんだね!やっぱり面白いねアンタ!」


アースはもっと年上だと思っていたポーラの年齢を思いがけず知り、ショックを隠せなかった。


 「まだ協会からは承認出てないけど、確かに倒したから大丈夫だよ。少し野暮用があるから、キンキンに冷えたエールはまた夜に飲みに来るよ」

 「じゃあ、少し遅めに来てくれるかい?キンキンに冷やして待ってるよ!」

 「それは楽しみだ!」


冒険者証とグローブを胸に大事そうに抱えているポーラに手を振ってアースは店を後にした。

その足でビービーキューのクランハウスへと駆けて行った。






 「大分暗くなってしまったな」


遅めに来てくれと言われていたので少しゆっくりしていたら、長居し過ぎたみたいだった。

ポーラの店の前まで来てみると、看板が出ておらず明かりも消えていた。


 「やはり遅かったか?」


それでも一応行ってみようと、扉を開けて店に入ると中はまだ明るかった。


 「アース、来たんだね!」

 「すまない、遅くなった」

 「大丈夫さ!さっきまで客が居たから、ちょうど良かったよ!さあ、そこへ座って」


勧められるままに料理の並んだテーブルに腰を下ろす。

中々のご馳走が並んでいる。


 「凄いご馳走だな?これはポーラが作ったのか?」

 「そうだよ、全部アースのモノさ!好きなだけ食べておくれ!」


たった数回店に来ただけなのに、アースの好みを分かっている様に感じる。

そんな料理が所狭しと並んでいる。

好い匂いにアースは思わず生唾を飲み込んだ。


 「はい、お待ちかねのキンキンに冷えたエールだよ!」

 「お、良いね~。待ってました!」


パチパチと小さく拍手をしてエールの登場を称える。

じゃあ!と隣りに座ったポーラは自分のジョッキを持って掲げ、アースにウインクをした。


 「コホン!では45階層の階層主討伐を祝しまして、カンパーイ!!」

 「カンパーイ!!」


二人のジョッキが合わさり、音を立てた。


 「くー!!美味い!」

 「美味しいね~。こんな美味しいエールは初めてだよ!」


冷えたエールに夢中になっている間にポーラは料理を切り分け、小皿に置いてアースの食べ易いようにしていた。

アースのジョッキが空になったのを見ると、すぐにポーラはお代わりを注ぎに行って戻って来る。 

食べ易くして目の前に置かれた料理に舌鼓を打ちながら、キンキンに冷えたエールを飲む。

アースは暫くエールと料理を夢中で味わっていた。

それをポーラは横でにこやかに見ながら、甲斐甲斐しく世話をしていた。


腹も結構満たされエールもたらふく飲んだ頃、アースは改めてポーラをまじまじと見ていた。


いつもは無造作に後ろで括っているだけの髪は、キレイに梳(と)かれて丁寧に編まれている。

腰が少し絞られたワンピースを着て、化粧もいつもより入念にされている。


 「どうしたのさ、あたしの顔に何か付いてるかい?」

 「いや…こうして見るとポーラはやっぱり美人だなって」

 「……アンタの為だけにお洒落をしたんだよ。忘れたのかい?依頼料はあたしの『全て』だからね…」


その言葉の意味が分からない程アースは幼くない。


 「本気にするぞ?」

 「あたしを惚れさせた、アースが悪いのさ…」


その夜、アースが孤児院へ戻る事は無かった。





また少しお時間頂きます。

次回投稿は25日水曜日になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。