↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/27

17、アダマンタイマイ

 「ポーラ、貴女のジョブが何かは聞かないでおくよ。これ以上話してしまうと、俺は冒険者協会が信用出来なくなってしまいそうだ」


ポーラはその言葉を聞きながらもアースの目をジッと見ていた。

アースは支払いをして店を出ようと鞄に手を入れた。


 「依頼を出すよ、あたしが。アースを指名する。受けてくれないかい?」


アースが鞄に入れた手を優しく抑える様に掴んだポーラは、もう片方の手でポケットから一枚の紙を取り出した。

 

 「これは協会に出すつもりの依頼書だよ」


アースは鞄から手を出し、その依頼書の文言を読んでみた。


 「正気なのか?」

 「ああもちろんだよ。ホントに達成出来るなら安いもんさ!」


45階層の階層主討伐の依頼。

報酬は、ポーラが所有する『全て』の物。


 「全て……とは?」

 「そこに書かれている通りさ。『全て』だよ!あたしの持ってる店も金も、この体もさ!」

 「ポーラ……さん」


ポピーが唇を震わせながら言葉を失っている。


 「出来ないなら、出来ないでも良いんだよ。別に…。でも、アンタは倒せるんだろ?お願いだよ、あたしの仇(かたき)を取っておくれよ!あたしの弟(・)の(・)仇を……頼むよ……頼むよ…」


アースには倒せる自信も確信もあった。

階層主の情報も協会に聞いているから問題無かった。


アースの手を握りしめ、大粒の涙を流し続けるポーラをただ見つめる事しか出来なかった。


(弟の仇、か…)


ポーラの弟も迷宮冒険者だったのだろう。

迷宮で冒険者が命を落とす事は、決して珍しい事ではない。

それでも肉親にとってみれば、その憎しみは魔物へ向かうしかやり場もないのだろう。


 「…祝杯のエールは、キンキンに冷えたヤツを頼むよ?」


その言葉を聞いたポーラは大きく目を見開き、涙目のまま満面の笑顔になった。


 「ああ、ああ……いくらでも、好きなだけ飲んでおくれよ!ああ、やっぱりあたしの目に狂いは無かった!これで、これで……」

 「ちょっと待ってくれ!まだ倒してもいないのに、騒ぎ過ぎだろ!」

 「いや、もうアンタが受けてくれた時点で勝ったようなもんさ。ああ、ああ…やっと」


ポーラは少し大柄な女性であるが、キチンとした服を着てお化粧もすれば美人の類に入る。

そんな女性の双丘に顔を挟まれた状態のアースは、嬉しいやら恥ずかしいやらで困惑していた。


 「階層主さえ倒されればポピーの悩みも無くなる筈さ!」

 「そうですね……」


しかしポピーの表情は、まだ暗いままであった。








翌日、アースは迷宮の入り口である冒険者協会に朝から来ていた。


 「まあ協会にとっちゃ嬉しいが……本当に良いんだな?」

 「約束しましたからね。しょうがありませんよ」


使命依頼されて単独で討伐に向かう事になるが、今回は特例措置が取られた。


 「一応クラン依頼じゃねえが、ビービーキューが協力してくれる手筈になっている。もし何かあった場合は、速やかに救難信号用の魔石を使え!すぐに助けに行くからな!」

 「分かりました」


アースは45階層の鍵を受け取り、迷宮への門を潜った。


45階層はほぼ探索され尽くされているみたいで、階層主の部屋までは簡単に辿り着いた。


 「アダマンタイマイだっけ?硬いって言ってたよな」


言いながらアースは階層主の部屋への扉を開けて入る。

中に入った途端に扉が勢いよく閉まり、完全に閉じ込められる形になった。


 「まあこれはどの階層主でも同じなんだけどね」


目の間には3m程の大きな岩の塊?が見える。

アースがその塊に近付いて行くと、亀のように手足が生えてきた。


 「まんま亀だな。さて、何処が弱点なんだ?」


(そう言えばスキルが増えていたような…)


アースは自分のステータスを再度確認してみた。




〈アース〉 気功整体師 Lv107:整える (握力アップ↑指圧力アップ↑腕力・脚力アップ↑) 


 スキル:『硬化不硬化(フェイズルール)』 Lv92   魔力:692


     【対象物範囲指定可能】【対象硬化物指定可能】【対象物遠距離指定可能(最大10m)】


     【硬軟レベル指定可能(-10000倍~+10000倍)】【硬軟時間指定可能(0~72時間)】




(とりあえず使ってみれば分かるかな?)


遠距離指定は10mになっている。

頭の中で考えていたら、薄い膜の様な物がアースを中心に10mの円を描いているのが見える。


(なるほど、あれが射程距離か?)


まだアダマンタイマイはその円の中には入っていない。


 「じゃあ近付くまでだ!!」


力を入れて地面を蹴った。


 「うおっ!!速いっ!!」


思った以上にレベルアップしていたのか、気が付けばアダマンタイマイの体は目の前に迫っている。


 「硬化不硬化(フェイズルール)!!軟化!!!」


パシャーッッッン!!!


熟した果物の実が弾けるように、アダマンタイマイの体が弾け飛んだ。

アースの体が当たった部分、アダマンタイマイの体上半分と頭は無くなっていた。

そのまま身が開くように地面に崩れ落ちたアダマンタイマイ本体は程なくして消えてしまい、核である魔石だけがそこに残っていた。


 「今回はドロップアイテムは無しか…」



グールナットの迷宮45階層の階層主アダマンタイマイは、こうして冒険者アースによって呆気無く討伐された。

約一年半に渡る迷宮探索の停滞はこれによって一気に解消される事となる。

60階層に続き、45階層までもがアースの独壇場となってしまったのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。