13、楽しい飲み会?
「ここなら騒がなければ誰も気に留める事も無い。どうだいアース?」
「良い店ですね」
素直にアースは思ったままを口に出した。
「嬉しい事言ってくれるね!サローインも良いメンバー見付けてきたじゃないかい?」
「いや、こいつはまだクランのメンバーじゃねえ」
ポーラはオヤッ?と言う様な顔をしていたが、「頑張りな!」と大皿の料理をテーブルに置くと厨房の方へと戻って行った。
「すまねえなアース。ポーラの言った事は気にしないでくれ。…で、さっきの『あれ』はどうなっているのか聞かせてくれるか?」
「ああ、良いですよ」
その前に…とサローインは懐から一つの布袋を出して、テーブルに置いた。
「これはお前さんが持ってきた斧の代金だ。正式なモノだから、遠慮しないでくれ。俺からしたら、この値段であんな武器が手に入るなんて嬉しいんでな!」
「そうですか…じゃあ、遠慮なく頂きますね」
アースは会釈しながら自分の鞄に布袋を入れる。
「それから、な?もう、改まった言葉は無しで良いぜ?俺の事は友人だと思ってくれて良い。もちろん、クランメンバー達の事もそう思ってくれるなら、嬉しいがな!」
サローインは豪快にジョッキのエールを飲み干した。
「そう言って貰えるのは嬉しい……敬語は癖みたいなところもあるから、あまり気にしないでくれると有難いが」
「おう!まだ知り合って日も浅い。無理を言うつもりもねえが、これからも宜しくな!」
「あの…宜しくお願いします」
「ああ、二人とも宜しく」
ペコリと頭を下げるツラミーのコップに軽く乾杯をした。
「『あれ』は俺の持つスキルでくっ付けただけさ」
突然、アースが先程の男の剣に起った事について話し出したので、サローインとツラミーは背筋を正して座り直していた。
「そんなに大した事じゃないから、気軽に聞いてくれ」
近くに居た給仕の女性にエールのお代わりを頼んでから、アースは呟くように話しだす。
「俺のスキル『硬化不硬化』は、本来少し物の硬さを変化させるだけのスキルなんだ。レベルが上がって色々と出来る様になってね。さっきの剣も接合部分の硬さをちょっと変えて、くっ付けた後に硬くしてやったのさ。粘土をイメージすると分かり易いかな?そんな感じだよ」
言い終わり、アースがエールを一気に飲み干す。
サローインとツラミーはポカンと口を開けたまま固まっていた。
「どうしたんだ、二人とも?」
「あ、ああ…。いや、アース?それは、かなりスゲエ事じゃねえかと俺は思うんだがよ?」
「あのアース…さん。ちなみに、あのジョブレベルとかいくつですか?」
アースはここで素直に言うか迷った。
サローインやクランメンバーは皆良い人っぽいから嫌いじゃないけど、やはり自分はもう迷宮の冒険者に戻るべきじゃ無いと思い始めていたから。
「レベル…か。そんなに大したモノじゃないから、聞いても面白くないよ?」
「いや待て!100オーバーの冒険者が大したモノじゃなかったら、ほとんどの冒険者は暮らしていけねえぜ?」
「え…100…オーバー?」
サローインの言葉にツラミーはまた固まっている。
「……何故、俺のジョブレベルを知っているかは聞きませんよ。でも、言い触らすのは止めてくださいね?絶対に…」
少し怒気の含んだ声音で、アースはサローインに向かって承諾を促した。
「す、すまん!ハラミーに覗かせちまったんでな……ホントにスマン!!!」
「目立ちますので、大きな声は出さないで下さい…」
サローインの声と行動に釘を刺し、アースはまたエールをお代わりした。
「私も言いません。約束します!だ、だから、あの……」
「大丈夫だよ。君たちに何かする事は無いから。安心してくれて良いよ」
(あ、敬語が治ってる!)と、ツラミーは心の中でホッとしていた。
「アース、これからどうするんだ?」
「自分の店を持とうと思ってね。今日、話しを付けて来たところさ」
「店?お前さん、もうそんな事まで決めたのか」
アースはマッサージ屋を開く事を二人に話した。
場所も孤児院の近くでその他諸々はこれからだが……。
「店が出来たら知らせに行くから、また来てくれ」
「おう!もちろん行くぜ!」
「私も行きます!」
それから三人は暫く飲み食いしてから店を出た。
「またいつでも来ておくれよ!」
帰り際にポーラに声を掛けられたアースは手を挙げて応えた。
「贔屓にさせて貰いますよ!」
少し酔っている事もあるが、今日は良い夢が見れそうだとアースは思った。




