11、バタバタ日常
アースは翌日、改めて物件を探しに出かけた。
パインが屋敷を建てた時に世話になったという、親方へ会いに行く事にした。
「こんにちは?」
多分場所はここで合っているはずだけど……とアースは入口で声を出して呼んでみる。
「誰か居ませんか~?」
「なんじゃ?お前さん?」
「オワッ!!」
下から急に声がしたので、アースは一歩下がってしまう。
そこには小人の様な大人が立っていた。
「お前さんは誰じゃ?何しに来た?」
「パインさんに聞いて…、屋敷を建てた親方がここに居ると聞いて」
「なんじゃ、パインさんの知り合いか。まあ、入れ」
店の中は小さな模型が数点置いてあるだけで、スッキリした空間だった。
「ワシの名はグラン。で、ワシに何の用かの?」
「実は店を、マッサージ屋をやりたいので、良い建物がないか聞きに来ました」
「店か……。予算はどれくらいじゃ?」
アースは鞄から布袋を取り出し、テーブルに置いた。
「金貨500枚はあります。足りなければ後で少しずつでも……」
「どんな豪邸を建てるつもりじゃ…」
グランは「ちょっと待ってろ」と奥の方へ入って行った。
少しして戻って来たグランは、持っていた数枚の紙をテーブルに置いて広げる。
「まずは場所だな。どの辺りで建てるんじゃ?」
「そうですね…。孤児院に近い所で良い場所はないですか?」
「孤児院に?何じゃパインさんに惚れとるんか?」
「あはは、俺は孤児院の出身でね。近くなら何かあった時にすぐ駆け付けられますからね」
「なるほど」
そうやって大体の場所と建物の概要、部材の種類と全体的な費用まで決まった。
「さすがですね。こんなにスムーズに決まるとは思いませんでしたよ」
「なに、お前さんがそんなに難しい事を要求しなかったからな。これなら楽勝じゃよ」
「じゃこれ、金貨150枚。渡しておきますね」
ジャラジャラと布袋から金貨をだしてアースは数え始める。
「お、おい。まだ気が早いじゃろう!」
「いえ、グランさんは親身に考えてくれてましたので、信用出来ます。これでも人を見る目には自信はあるんですよ!」
アースは胸を叩いた。
「変わった人間じゃな。そこまで言われちゃ、やらない訳にもいくまい」
「ホントですか?お願いします!」
アースはグランに頭を下げた。
「おお任せとけ。すぐに図面を作って建ててやるわい!」
「特に何も無ければ、俺は孤児院で世話になってますから。用事がある時は、孤児院へ来てくれれば会えますから」
「分かった!でお前さんの名前はなんじゃ?」
「アースです!」
じゃあ、とアースは店を出た。
良い買い物をしたと嬉しくなって、折角だし孤児院の皆に何か買って行ってやろうと商店が並んでいる方へと足を向けた。
「なにが良いかな?」
グールナットの町は3年の間に『街』になってしまったが、懐かしい雰囲気はちゃんと残っていた。
沢山の冒険者が行き交い、店の数も驚くほど昔より増えていた。
「おい!!どうしてくれるんだ?」
「すいません。すいません…」
怒声が聞こえてきた方に目を向けると、土下座している少女が見えた。
あれ?と思い、アースはその方へと歩いて行った。
「お前がぶつかった所為で、ほらこれ見てみろよ!折れちまったじゃないか!」
「すいません。すいません」
「謝ってるだけじゃどうしようもないんだよ!!」
やっぱりそうだ。あの少女はユリシスのパーティーメンバーだった娘だ。
名前は何だったかな?
などと悠長に考えていたアースだったが…。
「ツラミーまた何かやったのか?」
「あ、リーダー!剣が折れたらしくて…」
「ああん?剣が?」
「そうだ、その女がぶつかって来たから俺の剣が折れたじゃないか!どうしてくれるんだ!」
男は更にヒートアップしている様だ。
「で?お前が何処の冒険者だか知らねえが、たかが女にぶつかっただけで折れるような剣を持ってる事を、恥ずかしいとは思わねえのか?ああん?」
その声を聞いていた周りの野次馬たちは口々に囁き合っている。
「確かにそんな柔らかい剣は無いよな、ぷぷ」
「あの人の言ってる事の方が道理だよね」
「ほら目を合わせちゃダメだ。剣一本買えない冒険者なんだよ、多分」
多くの人間が囁き合っているものだから、結構な騒々しさだ。
アースには正直、サローインの言ってる事はこじ付けにも聞こえる。
聞こえるが…、冒険者を名乗るなら防具や武器は命を預ける物だから、それなりにちゃんとした物を良い冒険者は使っているはずだ。
「しかし、当たって来たのは事実だ!」
「まあそれもそうだな。で、いくら欲しいんだ?」
「金貨10枚だ!」
「ほう……。そんな簡単に折れる様な剣が金貨10枚、と?」
「そうだ。弁償されない場合は冒険者協会へ訴えてやるからな!」
「剣が元に戻れば良いんだろう?」
アースはサローインの背後から声を掛けた。
1週間お時間を頂きます。
次回更新は13日の金曜日になります。




