第53話 いくらになるか考えたくないです!!
ファイムルさんの部隊も技量的な部分では『電卓の騎士団』に負けてないし、人数だって負けてない。
なのにこうも劣勢になっちゃってるのは圧倒的な装備の差……『聖銀』製武具と通常の鉄製武具の差が表れてる。
「それにしてもこれだけのパートナー達分、『聖銀』の武具を揃えるなんてどれくらいかかるんだろ。」
「えーっと、鎧でしたら普通のが47200Goldですけど、『聖銀』の武具は『鍛冶師』の武具製造装備ですので市販されていないものですねー。」
誰に問うでもないわたしの呟きにクロエが答えてくれた。
「他にも必要な材料がありますが『聖銀』のインゴット一本で200万Goldはしますし、鎧にするとしたらインゴット十本以上必要になるんですよー。」
「うぇ!?」
思わず変な声出た。
『聖銀の鎧』一着2000万Gold以上……を、これだけの数揃えるとか……めまいしてきた。
他にも盾に剣に矢に、『電卓の騎士団』は一体いくら使ってるんだろ。
「あー、もうなんか金額意識したらものすごく怖い部隊に見えてきたよ。」
「なんかわかりますよご主人さまー。」
あの『均衡した動かない防衛』のファイムルさんを圧倒してる強さもあるけど、恐れ多い的なナニカなこの感じ……
ダメだこれ、意識したら呑まれちゃうよ。
「ご主人さまがそんなんじゃダメですよー、しっかりしてくださいー。」
あまりの金額の大きさに震えてたわたしにしがみついてクロエが涙目になりながらも励まそうとしてくれる。
そんなクロエを見て何だか急にスーっと落ち着いていくのが自分でもわかった。
「大丈夫、心配かけてごめんね。」
「えへへっ。」
髪をなでられて嬉しさが零れるクロエのかわいい笑顔にすごく勇気をもらった気分だよ。
弥生さんは大丈夫そうに振る舞っていたけど、ここはわたしもわたしがやれることをやろう。
今の状況だと……
「やまうちさん、そこ終わったら31番砦のファイムルさんとこに応援行ける?」
やまうちさんが戦ってる38番砦……『天空の系譜』に取ってもらう砦は既に三層目に達していて、こちらはかなり優勢。
『黒鉄の護り人』も前線砦じゃない38番までは手を回せられなかったのか、6番砦の一層目で二手にわかれてから手薄なところを一気に駆け抜けられたみたい。
慌てて防衛戦力を回した『黒鉄の護り人』は、ラインを構築する間もなくやまうちさんの魔法系ユニットと美鶴さんの機動力に翻弄されていた。
「この俺の力が必要なのだな?相手は『電卓の騎士団』……ククク……血が滾る。」
うーん……攻撃の度に色々うるさい『黒鉄の護り人』と戦いながら、しかも『黒魔術師』『人形術師』『召喚師』と言う色々とくすぐられるパートナユニットだからか、かなり目覚めてきたご様子で。
まぁ元々『黒鉄の堕天使』にいたやまうちさんだし素質はあるんだろうけど。
「うんお願い。ファイムルさんを助けてあげて。」
「ククク……いいだろう。」
あとのところは、安定してきたと言っても防衛だから相手が引くまで終わりがないし、6番を攻めてる『フリーランダー』に同行してるパンナさんは落としたらそのまま防衛に入るし。
やっぱやまうちさんだけかな。
「ファイムルはん、お待たせしてもうて申し訳あらしまへん。」
「おお!弥生殿か!これは千の味方を得たようなものですな。」
一方の、肝心のファイムルさんとこでは弥生さんが一層目の前線に到着していた。
「話は後どす。すぐに立て直しまひょ……美月はんおたのもうします。」
「はい!わかりましたー。『魔力障壁』展開しますよー。」
弥生さんの指示で『魔術師』の美月さんがステッキを振り回しながら詠唱し『魔力障壁』を美月さんを中心とした広い範囲に展開すると、すぐさまあちらこちらに走り回りながらファイムルさんの部隊全員にかかるように展開して回る。
それまで簡単に切り裂かれ貫かれていたファイムルさん達の盾が『魔力障壁』のコーティングによって何とか持ちこたえられる程度にはなったけど、依然として厳しい感じが……
「そんなもので我々『聖銀兵団』の攻撃を防ぎきれると思っているのかね?」
「そうどすなぁ……残念ながらこれだけでは防げへんどっしゃろ。」
アキトの言葉に動揺することもなく肯定して扇子で口元を覆って目を細める弥生さん。
「美紗はん、美里はん、手筈通りにやっとぉくれやす。」
「はーい、美紗の聖なるぱわぁを与えまーっす!」
「了解した。闇の力を与えよう。」
『上位神官』の美紗さんの魔法で美由紀さんの体の周りに白く光るオーラが発生し、『黒魔術師』の美里さんの魔法で美由紀さんの持つ錫杖が闇を纏う。
「美由紀はん仕上げをおたのもうします。これでファイムルはん達は無敵どすえ。」
「なんだと?死霊すらも切り裂く聖銀相手に無敵だと?」
明らかに狼狽えはじめるアキトを尻目に闇を纏った錫杖を振り回して詠唱を続ける『聖霊術師』の美由紀さん。
「いきます!『属性付与拡散』!!」
美由紀さんが発動した『属性付与拡散』によって、美由紀さんを中心に広い範囲にいるファイムルさんの部隊が身体の周りを白く光ったオーラを纏わせ、武器には黒い闇のオーラを纏う。
「ファイムルはん今どす!反撃を!!」
「承知した!!」
形勢逆転。
切れ味の鋭い聖銀の剣を矢を盾で弾き返し、硬度の高い聖銀の盾を鎧をファイムルさん達の槍が貫く。
「馬鹿なっ!?聖銀の盾は聖銀の剣ですら弾き返すのだぞ!?」
「アキトはん、聖銀の武具は純粋に強い。そやけどそれだけやあらしまへん。」
覆された状況に言葉を失うアキトに向かって畳みかけるように弥生さんが聖銀の弱点を披露する。
どうも強いだけだったら実体のない死霊を斬るなんてできなくて、聖銀はその名の通り聖属性を秘めているから斬れるんだとか。
で、属性には相性があって聖属性と闇属性はお互いが弱点なので聖属性の聖銀防具は闇属性の攻撃に弱い。
「あと、アキトはん自身実証したやあらしまへんか?聖属性の武器は聖属性の盾で防げるんどす。」
さらに聖銀製武器の純粋な切れ味は『魔力障壁』でカバーする……と。
弥生さんの指摘にアキトは頭と両腕をだらんと下げ、肩を震わせている。
「ふっふっふ……はっはっは……ハァッハッハッハァ!!」
大枚をはたいて揃えた『聖銀兵団』が破られて愕然としていると思ったら、アキトが額に右手を当てて突然笑い出した。
「なるほどなるほど属性かぁ。色々と腑に落ちたよ……」
アキトが額に当てていた右手を離すと、そこには一枚の銀色のカードが握られている。
「聖銀の盾を容易く切り裂いた『魔剣ティルフィング』は、そうかそうか……属性だったのか。」
パートナーユニットカードを握りしめたアキトの呼び声に応えて現れたのは、『剣士』『騎士』『アーチャー』『ガンナー』の四人のパートナー。
それぞれが見ただけで『普通じゃない』とわかる武器を持っていて、中でも『剣士』が持つ禍々しいほどの黒いオーラを放つ剣に目を奪われてしまう。
『魔剣』と言うからにはアキトが言っている『魔剣ティルフィング』と言うのは、その『剣士』が持ってる禍々しいオーラを放つ剣のことでしょう。
なんとも闇属性っぽい感じがするよ。
「ご主人さま……『魔剣ティルフィング』もそうなんですけど、他の三人が持ってる武器も全部『神器』ですよ!!」
「名前からしてなんとなくそうかな?って思ったけど、やっぱり?」
前に男爵さんが神器素材は700万Goldは堅いって言ってたし『神器衣装』作るのだって結構な量の素材が必要だったし……
それが四本も?
全部でいくらになるのか、考えたくないです。
「ハッハッハ、さぁ!如月君……お手並み拝見といこうじゃないか!!」
次回予告!
形勢逆転と思いきや、まさかの形勢逆転返し。
たった四人のパートナーが持つ『神器』に再び押し込まれるファイムル達。
属性相性によって複雑になってくる戦いを制するのは……
「いくら武器が強くたって、当たらなければどうってことないわ!!」
第54話 相性とかめんどくさいです!!




