第54話 相性とかめんどくさいです!!
アキトが呼び出した神器持ちパートナー達が圧倒的すぎる。
特に禍々しいオーラを放つ『魔剣ティルフィング』を持った『剣士』が強くて、一振りごとにファイムルさん部隊の『騎士』が次々と倒されていく。
一人倒しては次の標的を探すようにあたりを見回して、また斬りかかって確実に葬る。
『剣士』だけじゃない、他の神器持ちパートナー三人も同じ。
ファイムルさん達は聖銀装備の『聖銀兵団』相手には押していっているものの、アキトの神器持ちパートナー四人にはなす術がない。
「神器は修繕費も高いのでね、あまり使いたくはないのだが……如月君が出張って来たとなれば話は別。」
武具は使ってると刃こぼれしたり破損もしたりするので都度メンテナンスが必要で、破損状況にもよるけど修理屋に持って行くと大体市場価格の五パーセント程度の費用がかかる。
標準的な『騎士』パートナーの鎧は47200Goldだから2360Goldからで最悪でも買いなおしで済むんだけど……
わたしだったら修繕費怖くて神器どころか聖銀装備も使えなさそう。
……お金があるのっていいよね?
「クロエ、『剣士』が使ってるのは『魔剣ティルフィング』って言ってたけど、他はわかる?」
「そうですねー、『騎士』の槍は『龍槍ゲイボルグ』で『アーチャー』の弓は『聖弓アルテミス』、『ガンナー』の銃は『天銃ブラフマーストラ』ですねー。」
なんか『魔剣ティルフィング』と言い、仰々しい感じですごそうな名前なだなぁ。
多分だけど、武器を振るってる軌跡のオーラからして『龍槍ゲイボルグ』は風属性、『聖弓アルテミス』は聖属性、『天銃ブラフマーストラ』は雷か何かかな?
……あれ?
でも他はともかく聖属性付与されてるファイムルさん部隊の『騎士』が『聖弓アルテミス』の一矢でも倒されてるのはちょっとおかしい気がする。
それだけ聖銀武器よりも威力が段違いなのか、他に何か理由があるのか……
「うちに勝った言うても『アキトコーポレーション』はんの宣伝にはならしまへんよ?」
弥生さんは動揺した素振りもなく扇子を口元に当てて微笑んでいるようにも見えるけど、わたしが引っかかってる違和感って弥生さんが仕掛けた何かがあるのかな?
「貴女に勝つことで我々も『Planets』にも劣らぬ勢力であると、『電卓の騎士団』の士気高揚に繋がるのだよ。」
「であったら、商売のことだけやなしにもう少し『クロニクル・ワールド』の仕組みを理解した方がよろしいどすえ?」
弥生さんが言ってる仕組みと言うのが何を指してるのかわたしにもわからないけど、弥生さんの余裕はそこからきてるのだろうか……
「もう少し説明してもよかったんどすけど、生憎時間来てもうたようどすなぁ。」
「時間……だと?」
攻城戦は残り30分、まだ少し時間はあるみたいだけど。
と、時間を気にしていたら突然ファイムルさん部隊の後ろから迫って来た人影にアキトの『剣士』が派手に吹っ飛ばされた。
「やまうち参上!ファイムルのおっさん!フォローは任せな!!」
「救援感謝するぞやまうち殿!」
『電卓の騎士団』を見下ろす高台に立ち、やまうちさんがパートナー三人に指示を飛ばす。
『召喚師』のいしまるさんが黒い大きな犬を呼び出し、『人形術師』のくれないさんが黒い和服を着た四体の人形を『電卓の騎士団』の真っ只中に飛ばす。
『黒魔術師』のふじたさんは、高台に陣取るやまうちさん部隊の『アーチャー』の弓や『ガンナー』の銃に闇属性を付与して回っている。
そしてさっきアキトの『剣士』を吹き飛ばした人影は……
「美鶴さんっ!!」
「その声はイズミさんだね?おかげで38番は取れたよ、ありがとね。」
わたしはやまうちさんに救援をお願いしてたんだけど、まさか美鶴さんまで来てくれるなんて……
「『天空の系譜』の他のメンバーは『フリーランダー』が取った6番の防衛してもらってるから、あたしだけで悪いんだけど。」
「そんなことないですよ、来てくれて助かります!!」
美鶴さんと話をしている間に起き上がって来た『剣士』が狙いを美鶴さんに定めて距離を詰める。
「美鶴さん気を付けて!神器持ってる!!」
「神器?なるほどねー。」
『剣士』が持つ『魔剣ティルフィング』の一振りを素早く横にかわし、力強い踏み込みと同時に『剣士』の脇に肘を打ち込む。
一瞬よろめきながらもすぐに態勢を立て直した『剣士』は美鶴さんを追い払うように魔剣を横に凪ぐと美鶴さんはバックステップで距離を離し、すぐさま再び詰めて低い姿勢から『剣士』の顎めがけて掌底を繰り出し、まともに受けた『剣士』が宙を舞う。
「いくら武器が強くたって、当たらなければどうってことないわ!!」
突然現れて『剣士』をあっという間に倒した美鶴さんを脅威に感じたか、アキトの『アーチャー』と『ガンナー』も美鶴さんに向かってそれぞれ弓と銃を構えるが、構えた射線上にはすでに美鶴さんはいない。
標的を見失った『アーチャー』と『ガンナー』はあたりを見回して美鶴さんを探してるところに、横で戦っている『騎士』達の隙間から飛び出してきた美鶴さんの水面蹴り一発で『アーチャー』の足が折られ、続いて『ガンナー』突進の勢いと踏み込みの強さ、美鶴さん自身の体重を乗せた肘をみぞおちに叩き込み、サマーソルトキックで『ガンナー』の顎を砕く。
「んー、あと一人だっけ?神器持ちって。」
残るはファイムルさん部隊の『騎士』相手に緑色のオーラを残しながら槍を振り回す聖銀の鎧で身を固めた『騎士』一人。
その『騎士』が美鶴さんを仲間を三人倒した仇とみなし『龍槍ゲイボルグ』を向けて襲い掛かる。
「硬いのって苦手なのよね。」
「じゃ、俺に任せな!」
美鶴さんと神器の『騎士』の間に割り込んだのは、禍々しい黒いオーラを纏った黒い刀身の剣を左右の手に一本ずつ持ったやまうちさん。
もう見た目だけじゃなくて『黒魔術師』の付与がされた闇属性の二刀流スタイルで『騎士』を迎え討つ。
向かって右側からの薙ぎ払いを右手の剣で受け流し、左手の剣を『騎士』の喉元に向けて突きを放つ。
『騎士』は何とか急所への直撃は避けるものの右肩にやまうちさんの突きを受け、肩を抑えて両ひざを床につく。
「とどめだ!『漆黒の鎮魂歌』!!」
やまうちさんが何やら本人はカッコイイと思ってるであろう厨二全開な技名を言い放って左右の剣を振るい、『騎士』は聖銀の鎧に黒い十字の刻まれつつその場で前のめりに倒れた。
見たところ、右手の剣で頭上からまっすぐ振り下ろして左手の剣を横からまっすぐ薙ぎ払う感じの、闇属性付与の黒いオーラで十字を描くような斬撃。
まぁ、そう見えなくもないけど技名つけるほどかどうかは疑問に残るかな。
「なん……だと……?なぜ神器がこうも容易く……」
目の前でご自慢の神器持ちパートナー達を倒されて驚くアキト。
そんなアキトに対して美鶴さんが左手を腰に当てて右手の人差し指を向ける。
「あったりまえじゃない。武器が強いだけで扱うパートナーが弱いんだから。男爵さんのフェニックスの方が手ごたえあったわよ。」
「そういうことどすえ、アキトはん。『クロニクル・ワールド』の仕組みを理解せんことには、パートナーは強ならへんのどす。それに……」
そう言って弥生さんが口元を覆っていた扇子をパチンと音を立てながら閉じるとファイムルさん部隊の一角、ちょうどアキトの神器持ちパートナーと戦っていたあたりが煙を立てて消失した。
「なにっ!?」
「『魔法擬態』に惑わされとるようやったら、『Planets』にはまだまだ遠いどすえ?」
アキトが目標にしている『Planets』
『Ritterorden aus Silber』のパートナーが強くなれたのも、ユウトさん経由で『Planets』からヒントをもらったからだと言ってもいい。
資金力にモノを言わせて装備だけ揃えた『電卓の騎士団』じゃ、たぶん弥生さんよりも『クロニクル・ワールド』の仕組みを理解している『Planets』には到底及ばない……かぁ。
「ふっふっふ……はっはっは……ハァッハッハッハァ!!」
愕然としたように両手をだらんと下げていたアキトがまたも額に右手を当てて突然笑い出し、ファイムルさんやまうちさん美鶴さんが構える。
「いやぁ素晴らしい……素晴らしいよ如月君!!『Planets』の強さに迫る為に装備を揃えて来たが……なるほどなるほど。」
芝居がかったセリフ回しで両手を広げながら急に弥生さんを賞賛して勝手に納得するアキト。
「いい勉強をさせてもらったよ。感謝するぞ!如月君……撤収だ!!」
アキトの号令で『電卓の騎士団』が一斉に攻撃の手を止め、撤退を開始する。
「まだだ!まだ終わっていない!再度陣形を組みなおすのだ!!」
撤退する『電卓の騎士団』を見送ったファイムルさんが安堵のため息を漏らした自軍に活を入れて陣形を整えさせる。
時間は……あと10分!!
ほぼ終わったと言ってもいいとは思うけど、最後まで気を抜かないファイムルさんさすがです。
「なんや今日は、いつもよりだいぶ激しい戦いやったなぁ。なぁ、イズミはん?」
「そうですね、色んな特色のあるギルドが頭角を現してきたみたいで、攻め方も色んなのあって対応が大変ですよ。」
東以外の状況ってまだよくわかってないんだけど、ちゃんとクロエのパートナー達に調べてもらわないとね。
と、ふとわたしの横に立っているクロエを見るとクロエのパートナー達と一緒に何か期待するような目でわたしを見ている。
「クロエのパートナー《いもうと》達にも色々と調べてもらうことになるけど、その時はよろしくね。」
「はいっ!ご主人さま!!」
元気のいい返事をくれたクロエの髪をなでてあげると「えへへっ」と笑ってくれた。




