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昼食を終えて、またレムリア先生の魔法の訓練場に戻ってきた。
「姉さんがクリアシールドを発動させて、僕達やレムリア先生はその中に居て魔法を観察するのは駄目なの?」
と、翠玉に尋ねられた。
「2つ以上の魔法を同時に発動させると、考えることが増えるから、もし片方の魔法に集中して、クリアシールドへの魔力の供給が減ったり強度のイメージが変わったりしたら危ないよ」
と、私は答えた。
「じゃあ、魔石でどうにかならない?」
「う〜ん…。普通の石では魔力量が足りない。宝石の魔石は、ブローチがあるけど、それでも魔力がすぐに無くなりそう。となると、これを使えば何とかなるかも」
と、私は自分のマジックバッグから宝石竜の結晶を取り出した。
「これに魔力を込めて…。クリアシールドを全ての魔法とその影響を防ぐように付与して…。良し、できた。レムリア先生、これ持ってて」
と、私はレムリア先生に宝石竜の結晶の魔石を差し出した。
「「待て待て待て!!」」
と、ガーネットとレムリア先生に揃って言われた。
「いきなりマジックバッグから結晶を出すな!」
「魔石にしていきなり結晶を差し出されても困る!」
と、2人に怒られた。
「この場には私達しかいないし…。先生の許可が無ければ誰かが此処に近づくことも無いし…」
「クリアシールドを付与するのに適した物が他に無いと姉さんが判断したなら別に良いんじゃない?」
と、私と翠玉が言うと、
「まあ、それもそうか」
と、レムリア先生は納得し、
「良いのだろうか…」
と、ガーネットは悩んでいる。
改めて、レムリア先生にクリアシールドを付与した結晶を渡した。
クリアシールドを発動させて、翠玉とガーネット、レムリア先生にその中に入ってもらった。ルリタマとトキワも一緒にクリアシールドの中に入ってもらった。
私は、準備ができたことを確認してから、竜の姿に戻って魔力を抑えるのを止めたときの状況を再現して、魔法を使った。今回は、宝石竜の姿には戻らずに魔法を使った。
雷がいくつも落ち、竜巻ができ、岩が降ってきて、地面に氷の塊がいくつもできた。
「大体こんな感じだったよ」
と、私が言うと、
「これが雷魔法か!素晴らしい!!その上、風が渦を巻く様子がよくわかる竜巻!何も無いところから急に降ってくる岩!暑い中、みるみるうちに成長する氷の塊!何もかも素晴らしい!!そして何より、これだけのことが間近で起きていても中にいる者が何の影響も受けないクリアシールド!これら全てを1人でおこなうことができるとは、私はとんでもなく優秀な助手を手に入れた!黄玉を助手にすると決めた過去の私、よくやった!!それと黄玉!ありがとう!」
と、レムリア先生は大喜びしている。
「確かに、どの魔法もとんでもなかったな…」
と、ガーネットは驚いて呆然としている。
「姉さん、人間の姿に擬態したままだったし、これでも威力はけっこう控えめだったよ」
と翠玉が言うと、
「やはり黄玉は怒らせたら駄目だな…」
と、ガーネットが小声で言った。
「姉さんがガーネット相手に魔法を使って怒ることなんて無いから気にしなくて良いよ」
と、翠玉が気楽に言った。
レムリア先生は、自分が見た魔法について、必死にメモをとっている。
「黄玉!もう一度!雷魔法を見せてくれ!」
と、先生に言われた。
「わかったよ。ただし、クリアシールドの中から出ないでね」
「わかっている」
私は、雷魔法を使って雷を落としたり、雷を四方八方に飛ばしたりして見せた。
「そんなこともできるのか!もう一度!頼む!」
と、先生に頼まれ続け、クリアシールドを付与した魔石の魔力が無くなりそうになるまで魔法を使った。
「魔石の魔力が随分減ったから、此処までだね」
と、私が言うと、
「ううむ、もっと観察したかったが…。仕方ない。これだけの雷魔法をじっくり観察できる機会など今まで無かったからな。黄玉、ありがとう!」
「どういたしまして」
魔石として使った宝石竜の結晶はレムリア先生から返してもらい、私のマジックバッグに仕舞った。
ルリタマは私のマジックバッグに戻り、トキワも植木鉢の上に戻ってきた。
「さて、次は雷魔法を浴びた地面や周りの物が、どうなっているのかを観察する。黄玉も手伝ってくれ」
と言われたので、私も周りを観察して詳細にメモした。
「翠玉とガーネットは先に帰っていても良いよ」
と、私が言うと、
「いや、姉さんとレムリア先生だけにすると何となく心配だから待ってる」
「私も此処で待つ」
と、返ってきたので、2人のことは気にせず、あちこち見て回ってメモを取った。
「地面や転がっている植木鉢が焦げているところもあれば、粉々に破壊されているところもある。この効果の差は黄玉のイメージにより変わるのか?」
と、レムリア先生に尋ねられた。
「変わるよ。どういう状態にしたいかイメージしながら使えば、焦げたり焼けたり痺れさせたり破壊したり…、と色々な結果になる」
「ううむ。攻撃的な魔法だということは知識として知ってはいたが、改めて見ると危ない魔法だな。黄玉や翠玉は普通に使っているが、雷魔法を使えるようになる者はとても少ないんだ。だから、こうして観察できることはまず無い。黄玉のおかげで私の研究も捗るよ。ありがとう」
と、レムリア先生に言われて、私は、
「どういたしまして」
と返した。
夕方になり、私達はレムリア先生が空間魔法で帰るのを見送ってから、自分達も空間魔法でガーネットの部屋に帰った。
帰ってくると、ガーネットに、
「黄玉。今日みたいに宝石竜の結晶を魔石として使うことは、できる限り控えてくれ」
と言われた。
「うん。今日は、長期休暇中で学校にほとんど人がいない上、レムリア先生の許可が無ければ立ち入れない場所だったから使ったけど、学校が始まったらあの場所でも使うつもりは無いよ」
「それなら良い。…雷魔法を見るのは、俺にとっても勉強になった。ありがとう」
「どういたしまして」
ガーネットと話し終えると、部屋の扉がノックされて、
「メル、テオ、ロルーナ、ミランです。夕食の用意に来ました」
と、外から声がしたので返事をすると、4人が入ってきてすぐに用意をしてくれたので、夕食を摂った。
今日は私がたくさん魔力を使ったので、いつもより早くそれぞれの部屋に戻って休んだ。
翌日。
今日は朝からガーネットが国王陛下に呼ばれた。
昼くらいに戻ってくると、
「研究機関の者達から聞いた話と、黄玉とミランから聞いた話を改めて聞いてきた。ミランは意外と色々反論していたんだな」
と、ガーネットは言った。
「事実を述べて反論しましたが…。何か良くなかったですかね?」
と、ミランが尋ねると、
「いや、何も悪いところも事実に反したことも無い。次、何かあったときもぜひこの調子で頼む。頼りにしている」
と、ガーネットは言った。
「ありがとうございます。…まあ、できる限り努力しますが、俺は爵位が低いので、反論できる相手がそこまでいるかわかりませんが。今回は、魔導具と魔石の研究機関の中という、比較的爵位が重視されない場所だったので遠慮無く反論しましたが、城内などでは難しいですね」
と、ミランは言った。
「ミランの爵位、上げるか?宝石竜の侍従兼護衛として今回、結果を出したから、この功績があれば可能だと思う」
「いやー、しばらくこのままで良いですね。上がると勿論得られる恩恵はありますけど、その分面倒なこともあるんで」
「わかった。もし上げる気になったら、いつでも言ってくれ」
と、ガーネットが言うと、ミランは一礼した。




