460
ガーネットの部屋に戻ると、メルとテオ、ロルーナ、騎士が居て、
「黄玉様。我々が護衛としてついていながらお守りできず申し訳ございませんでした」
と言って深々と一礼した。
「謝罪は受け入れるよ。知らない人が近くに来たときに、すぐに前に出てくれたし、私を逃がそうとしてくれた。私が転移させられたことを、すぐに翠玉とガーネットに報告してくれた。ミランも私のそばを離れず守ってくれた。おかげでこうして無事に帰ってこれたよ。ありがとう」
と、私は言った。
「魔石を投げつけられて転移させられる、というのは、俺は思いもよらない方法だったのだが、そういう魔石の使い方は他ではされているのか?」
と、ガーネットに尋ねられた。
「冒険者の間ではたまに使われる方法だよ。予想外に強い魔物が現れたときに逃げるために、予めこの地点に転移する、と決めて空間魔法を付与した魔石を持っておいて、本当に遭遇したら自分達がそれを使って逃げる。あるいは、何処かに転移するよう魔石に空間魔法を付与しておいて、危険な魔物に投げつけて何処かに転移させ、難を逃れる、ということもあるみたい。ただ、魔物の方を転移させる場合、何処に転移するのかわからなくて、運悪く町の近くや中に転移させてしまって人間が大慌てする、なんてこともあるみたい」
と、私は説明した。
「そんなふうに、空間魔法が付与された魔石が自然にあるものなのか?」
「ううん。他の国では“鑑定”のスキルを使える人や魔物が、鑑定や付与を仕事にしてお金を得ていることもある、と本で読んだよ。だから、他国にいる“鑑定”が使える人に頼めば、今回使われたような魔石も用意できると思うよ」
「…黄玉。今の話、父上に話してきて良いか?」
「うん。というか、一緒に行くよ。翠玉はどうする?」
「僕は待ってるよ」
私とガーネットはもう一度、国王陛下のところに行って話をした。
私達から話をお聞きになった陛下は、
「わかりました。魔石についても調べてみます。現在、黄玉様に魔石を投げつけた者を捕らえましたので、話を聞いているところです。魔導具や魔石の研究機関の制服を着ていたようですが、研究機関には所属していない者だということがわかっています。金で雇われ、服も魔石もそのときに渡された物だと言っていますが、渡してきた相手は顔を隠していたため誰なのかまだ不明です」
と仰った。
「わかりました。協力できることがあればいつでも声を掛けて下さい」
と、私が言うと、
「ありがとうございます。黄玉様は、今は学校や王族の管理する森の中、黄玉様、翠玉様、ガーネットの自室以外では護衛と離れないようにして下さい。できれば、外出はお控え下さい」
と、陛下が仰った。
「わかりました」
「何かございましたら、またいつでもお話し下さい」
私とガーネットは陛下に挨拶して退室し、ガーネットの部屋に戻った。
「おかえり、姉さん、ガーネット」
と、翠玉が迎えてくれた。
ソファに座ると、すぐにメル達がお茶を淹れてくれた。
翠玉にも陛下と話した内容を報告した。
「わかったよ。姉さんが宝石竜だから狙われたのか、魔石が作れるから狙われたのかわからないから、僕も姉さんと同じように護衛と離れない方が良いんだよね?」
と、翠玉がガーネットに尋ねた。
「ああ。2人には不便を強いて申し訳無いが、そうしてほしい」
「わかったよ。気分転換に森へ行くかもしれないけど、それ以外では部屋の中で大人しくしてるよ」
「メル、テオ、ロルーナ、ミラン。黄玉と翠玉の身辺にいつも以上に気をつけてくれているのは知っているが、学校が始まるまでの残り1週間はとくに注意してほしい」
と、ガーネットが言うと、4人は一礼した。
「黄玉と翠玉につく護衛の騎士達はいつも通りフラム達だ。だが、人員を増やす予定だから、もし、騎士の中に怪しいと思う者がいたらすぐに教えてくれ。フラムや騎士達のことは信用したいが、そういう中に紛れている可能性もある」
と、ガーネットに言われて私達は頷いた。
「姉さん。さっき、ガーネットと一緒に国王陛下と話しに行っている間に、メルに頼んで学校にあるレムリア先生の魔法の実験場を使う許可を得てきた。だから、そこに行って少し休んできなよ。学校だから護衛はいらないし、宝石竜の姿に戻っても平気だよ。学校の魔法の実験場はレムリア先生の許可が無ければ誰も近づかないから、いくら魔法を使っても平気だし」
と、翠玉に言われた。
「別に休まなくても平気だけど…」
「姉さん。さっきからずっと魔力が出てるし、バチバチと音がするよ。だから周りを気にせず休んだ方が良い。空間魔法で行ってきて。姉さんが改めてレムリア先生から許可を得る必要は無いから」
「…わかった。ルリタマ、トキワ、翠玉とガーネットと一緒に居てくれる?」
と、私が尋ねると、
「わかったぞ」
と、ルリタマは言って、トキワは頷いた。
ルリタマにマジックバッグから出てもらい、トキワは植木鉢が入ったバッグごと翠玉に預けた。
私は空間魔法で学校にあるレムリア先生の魔法の実験場に行って、宝石竜の姿に戻った。
今まで意識して抑えていた魔力をそのまま出すと、周りに雷が落ちたり竜巻ができたり、岩が降ってきたり氷の塊がいくつもできたりと、色々なことが同時に起きた。
でも、周りに人は居ないので、気にせずそのままにしておいた。
改めて自分の状態や気持ちについて考えて、思ったよりもレムリア先生やロルーナ、ミランを悪く言われたことに対して怒っていたんだな、と思った。
夜になり、翠玉から念話で、
『姉さん、少しは落ち着いた?』
と尋ねられた。
『まだ。今日はこのまま此処で休む』
『食事は?』
『今はいらない。必要になったら戻る』
と、念話で返して、今日はこのまま人間の姿にも戻らず、城にも戻らず、眠れそうなときに少しだけ眠った。
翌日。
お昼頃、落ち着いたと思ったので、人間の姿に擬態して空間魔法でガーネットの部屋に戻った。
「おかえり、姉さん」
と、すぐに翠玉が声を掛けてくれた。
「ただいま」
と、私は返した。
「あるじ!おかえりだぞ!」
とルリタマがすぐに私のマジックバッグに入り、トキワも私のところに駆け寄ってきた。
「ただいま、ルリタマ、トキワ」
と言って、翠玉からトキワの植木鉢が入ったバッグを受け取った。
すぐにメルとロルーナが用意をしてくれたので、私達は昼食を摂った。
食後にお茶を飲みながら、
「翠玉は何で、黄玉は人がいないところで宝石竜の姿に戻って休んだ方が良い、と思ったんだ?」
と、ガーネットが尋ねた。
「姉さんの周りでたまにバチバチと音がしていたでしょ?あれが魔力が出ているから起きているってことはガーネットもわかったと思うけど、姉さんは昔、自分の感情とか力とかを抑え込んで、そのうちどこかで爆発するってことがあってね。そうならないように、今のうちに誰も居ないところに行って何も抑え込まないで済むようにした方が良いと思ったんだ」
と、翠玉が答えた。
「そうだったのか」
「今、レムリア先生の魔法の実験場に行くと、大変なことになっているかもね」
「…ちょっと見てみたい」
「じゃあ、行ってみようか。ついでにレムリア先生も念話で呼ぼう」
「私も行く」
と、私と翠玉とガーネットは学校にある魔法の実験場に行った。レムリア先生には翠玉が念話で伝えた。




