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宝石竜と赤い瞳の王子  作者: 森谷玻乃
夏の長期休暇 3年生
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「クリアシールドを鑑定できるということは存じておりますが、よくそこまでおわかりに…。しかし、これからどうしましょうか?逃げるか周りに助けを求めるのが良いと思いますが」

 と、ミランが言った。

「一番良いのは空間魔法だけど、空間魔法を阻害する魔導具が設置されていると困るね。まずは念話で翠玉とガーネットに状況を説明するよ」

「お願いします」


 私は、念話で翠玉とガーネットに状況を説明した。

『僕達もメルとテオ、ロルーナ、騎士と合流して話を聞いたよ!すぐに国王陛下に報告するから!姉さんとミランはまず身を守って!』

『黄玉は決してミランから離れないようにしてくれ!』

 と、2人から念話で返事がきたので、ミランにも伝えた。


「このままクリアシールドに閉じこもっていれば良いかな?」

 と、私はミランに尋ねた。

「それが良いと思います」

 と、ミランが答えた後、クリアシールドの外から、

「黄玉様、どうか此方で共にお茶会に参加して頂けないでしょうか?此方の席にどうぞ」

 と、研究機関の人に声を掛けられた。

 私は、此方の声が通るようにクリアシールドを調整してから、

「何故、私をこのようにお茶会に招き、そこまでして参加してほしいのですか?」

 と尋ねた。

「本日は、黄玉様が自らこのお茶会に参加なさるために、空間魔法でおいでになったのではないのですか?私達も急に黄玉様がおいでになって驚いているのですが」

 と言われた。

「…誰かに魔石を投げつけられ、急に此処に強制的に転移させられて来たのですが」

 と、私が言うと、

「わかりました。すぐに国王陛下にそのように報告致します。黄玉様は、どうぞ此方で少しお休み下さい」

 と、再び席を勧められた。

「その前に、もう一つの質問に答えて下さい。何故、そこまで私をお茶会に参加させたいのですか?」

 と、私は尋ねた。

「黄玉様は現在、レムリア・フローライト伯爵令嬢と共に魔石の研究をおこなっておられること、素晴らしい成果を出しておられることは存じております。ですから、ぜひお茶会に参加して頂き、一度、魔導具と魔石の研究機関がどういうところなのかを知って頂きたいと考えております」

「此方は魔導具と魔石の研究を専門におこなっておりますから、研究のための優秀な人材も必要な物も揃っておりますし、実験のための広い敷地もございますから、もし気に入って頂けたら、将来、此方で研究するのは如何でしょうか、と提案したく、お招きしたかったのです」

 と、研究機関の人達は説明した。

「そうですか。ですが、今のところ研究の環境は学校の方で十分ですし、将来については自分で決めているので研究機関に行くつもりはありません」

 と、私が言うと、

「お茶会にお招きしたいと考えた目的はもう一つあります。黄玉様は、魔石の研究に優れておられることは今までの成果でわかっておりますから、ぜひ、此処にいる研究者とも話してみて頂きたい、と思ったのです。新たな視点を得るためにも、新たな気づきを得るためにも、他の研究者から話を聞くことは大切なことだと私達は考えておりますので」

 と、研究機関の人は言った。

「それは確かにそうですね。新たな気づきを得るために人と話すことも大事です」

 と、私が同意すると、

「そうでしょう!ぜひ、皆の話を聞き、気が合う者がおりましたら共に研究なさっては如何でしょうか?」

 と、急に笑顔で言われた。

「私はレムリア先生以外と研究する気はありません」

 と、私が言うと、

「黄玉様がレムリア・フローライト伯爵令嬢と研究したいとお考えなのは存じておりますが…」

 と、言って言い淀んだので、

「どうしました?」

 と、私は尋ねた。

「レムリア・フローライト伯爵令嬢について、私はこの研究機関であまり良い評価を聞きません。依頼した鑑定をしなかったとか、研究で成果を出せなかったとか、そういう話を耳にします」

「それは、周りから鑑定の依頼ばかり来て、自分の研究をする時間がとれなかったので成果を出せず、研究に集中すると依頼を受けてもらえないと批判された、と聞いております」

 と、私が反論すると、

「そうでしたか。いや、私はレムリア・フローライト伯爵令嬢がお辞めになった後に所属したものですから、詳しいことを知らず、失礼しました」

 と、研究機関の人は謝った。

「ですが、学校でレムリア・フローライト伯爵令嬢が黄玉様を助手にしたことについて、何かしらあったのではないですか?」

 と、別の人が言った。

「何かしら、とは?」

 と、私は尋ねた。

「レムリア・フローライト伯爵令嬢が担任をした教室には、ガーネット殿下がおられましたから、レムリア・フローライト伯爵令嬢がガーネット殿下や国王陛下に取り入って、黄玉様を助手にしたのではないか、などという噂があるものですから」

「そのようなことはありません」

「他にも、黄玉様に取り入ってフローライト家の地位を上げようとしているとか、黄玉様を利用しようとしている者達がいる、といった噂も聞きます」

 私が、どう反論しようか考えていると、

「まったく、失礼な方々ですね。黄玉様が他人にそのように利用される、などという噂を信じているのですか?そのような噂は黄玉様に失礼です」

 と、ミランが言った。


「…失礼ですが、あなたは?」

「俺は翠玉様の侍従です。今は、主の姉君である黄玉様の護衛中です」

 と、ミランは答えた。

「そうですか。私達は、今のお話は噂だと申しました。こうした噂が流れていることは黄玉様にとっても良くないことかと考え、この機会にお話し致しました。宝石竜様が1つの家だけに協力している、という話は私達や他の貴族にとってもあまり良くない話ですから、どうか、この機会にフローライト家とは少し距離を置かれては如何ですか?研究機関であれば様々な家の貴族が所属しておりますから、何処かだけに肩入れしている、などという噂も消えるでしょう。学校での助手という立場や報酬よりも良い待遇でお迎え致しますから、ぜひご一考願えませんか?」

 と、研究機関の人に言われた。

「私は何も変えるつもりはありません。これからもレムリア先生の助手を続けますし、学校の友人達とも交流を続けます」

 と私は、はっきりと言った。

「ですが、フローライト家は伯爵家でありながら国にとって重要な鑑定師の役職を代々務めており、更に、宝石竜様からも信頼されているとなりますと、権力のバランスが崩れてしまいます」

「どうか、お考え直し下さい」

 と、周りから言われた。


 すると、ミランが一歩前に出て、

「宝石竜様が誰を信頼して誰と協力しても良い、というのがこの国の決まりです。また、宝石竜様を権力争いに巻き込み、煩わせてはならない、という決まりもあります。ですから、黄玉様が貴族の権力のバランスなど考える必要はございません。先程からあなた方は黄玉様に無礼です。黄玉様ご自身がレムリア・フローライト伯爵令嬢の助手を続けたいと仰っておられるのですから、それを邪魔するのは黄玉様に対して不敬です」

 と、きっぱりと言った。

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