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『ルリタマが魔石を非常食とかお弁当にしているのと同じような使い方をするってこと?』
と、私が念話で尋ねると、
「そんな感じだぞ!」
と、ルリタマは言った。
トキワは、満足げにうんうんと頷いてから、私に向かって一度倒れるような動きをした。
「ありがとうってあるじに言ってるぞ!」
『どういたしまして。結晶を使うのも持っているのも良いけど、私と翠玉、ガーネット、国王陛下、王妃殿下、ファセリアさん、ニールス先生、リシア先生、レムリア先生以外の人には見せないでね』
と、私が言うと、トキワはうんうんと頷いた。
いつの間にか、全員湖の上から戻ってきていたので、私は出していたクリアシールドを消した。
「黄玉のおかげで、湖の上を歩くという中々できないことができた。ありがとう」
「ありがとうございます、黄玉様」
と、ガーネット達に言われたので、
『どういたしまして』
と、私は返した。
十分休めたので、私と翠玉は人間の姿に擬態して、皆と一緒に館に戻った。
夕食の時間になると、広間で国王陛下と王妃殿下と皆で食事をした。
「明日には帰らなければならないとは、楽しい時はあっという間ですな」
「残念に思いますわ。またぜひ旅行しましょう」
と、陛下と殿下は仰った。
「はい。父上も母上も、旅行中は楽しそうでしたので、良かったです」
「ガーネットも楽しかった?」
「はい。とても」
「黄玉様、翠玉様、楽しんで頂けましたでしょうか?」
と、陛下に尋ねられた。
「はい!楽しかったです!」
「僕も楽しかったし、十分休めたよ」
「黄玉と翠玉は宝石竜の姿で休んでいることが多かったが、楽しかったのか?」
と、ガーネットに尋ねられた。
「うん。先生達と話ができたのも楽しかったし、雪で遊んだのも楽しかった」
「休んでいたけど、ガーネットやルリタマ、トキワの様子を見るのが楽しかったよ」
「そうか。…ルリタマやトキワと同じように観察されたのは何とも言えないが、まあ、2人が楽しかったのなら良かった」
と、ガーネットは苦笑しながら言った。
「明日は此処に来たときと同じように、1日掛けて馬車で城に戻る予定です」
と、陛下が仰った。
「わかりました。忘れ物をしないよう、気をつけます」
と、ガーネットが言うと、
「そうしてほしい。…忘れ物に気をつけなければならないのは私だな。食事が済んだらもう一度確かめなければ」
と、陛下が仰った。
「もし忘れても、空間魔法で取りにくれば良いだけだよ」
と、翠玉が言った。
「忘れ物で黄玉様と翠玉様にご迷惑をお掛けするのは申し訳無いので、気をつけます」
と、陛下は仰った。
食事を終えて、私達はそれぞれ自室に戻った。
「メルとロルーナは帰る準備は済んだ?」
と、私は尋ねた。
「はい。済んでいます」
「私も済みました」
「良かった。じゃあ、明日に備えて早めに休もう」
と、私が言うと、メルもロルーナも一礼して自室に戻った。
翌日。
朝食の後、私はメルとロルーナと共に馬車に乗り、城へ向かって出発した。
翠玉とガーネットは、テオとミランと共に別の馬車に乗っている。
今回も、途中で休憩のために町に寄った。
皆でお茶をしていると、急に雨が降ってきたので、急いで建物の中に入った。
馬車も、全て屋根の下に移動させた。
「けっこう降ってるね」
「うん。すぐに止むと良いけど…」
「止まなかったら姉さんが全部の馬車にクリアシールドを掛けて濡れないようにすれば良いんじゃない?」
「それはできるけど、あまり降ると道が泥でぬかるんで、馬車で通れなくなるかも」
「う〜ん…、そうなったら空間魔法で帰るしかないかな」
と、私と翠玉が話している横で、陛下と殿下とガーネットも話し合っている。
しばらく待っても、雨は止まなかった。
ガーネットが私と翠玉のところに来て、
「雨が止まないから、今日はこの町に滞在しようかと父上と母上が話しておられるのだが、他に良い案はないか?できれば今日中に城に帰りたいのだが…」
と言った。
「馬車をクリアシールドで覆うだけじゃ駄目?」
「ああ。道の状態も悪くなっているだろうから、それでは無理だろう」
「じゃあ、空間魔法で帰ろう。空間接続の扉をいつもより大きくすれば、馬車も通れるよ」
「わかった。父上と母上にそう提案してみる」
と、ガーネットは陛下と殿下のところへ行ったので、私と翠玉も一緒について行った。
ガーネットが空間接続の扉について話すと、陛下は、
「それはとてもありがたいご提案ですが、よろしいのですか?」
と、私に尋ねられた。
「はい。できれば今日中に帰りたい、ということであれば、それが一番良いと思います。魔力は十分あるので、馬車が通れる大きさの扉は出せますし、維持できます」
「わかりました。お願い致します」
と、陛下は一礼なさった。
陛下と殿下と相談して、空間接続の扉を出す場所と繋げる先を何処にするのかを決めた。
私は、周りから見えづらい目立たない場所に、馬車がぶつかる心配をせずに通れるくらい大きな扉をイメージしながら魔法を使った。
目の前に現れた引き戸の取っ手を引くと、城の敷地内にある、馬車を停めておく場所が見えた。
まずは私が扉を通って、問題無く行き来ができることを確認してから、馬車に移動してもらった。
特に問題は起きずに全ての馬車が通り抜けた後、陛下と殿下、ガーネット、翠玉、テオ、ミラン、騎士達が通った。
最後に私とメル、ロルーナが通り抜けて、全員通ったことを確かめてから扉を消した。
「黄玉様、ありがとうございます。おかげで今日中に帰ってくることができました」
「ありがとうございます」
と、陛下と殿下が仰って一礼なさった。
「どういたしまして」
と、私は返した。
城の中に入り、陛下と殿下とは別れて、私達はガーネットの自室に行った。
「お疲れ、黄玉、翠玉」
と、ガーネットに言われたので、
「「お疲れ」」
と、私と翠玉も揃って言った。
メル達がお茶を淹れてくれたので、私達はいつも通りの席に座って休んだ。
「テオ達も休んでくれ。俺達のことは夕食の時間まで気にしなくて良い」
とガーネットが言うと、4人は一礼して退室した。
「旅行も終わって、長期休暇もあと1週間くらいか。あっという間だな」
と、ガーネットが言った。
「そうだね。でもまだ終わってないから。マジックタンスに雪も残ってるし、まだ遊べるよ」
「そうだな。だが、長期休暇が早く終わった方が、黄玉はレムリア先生と研究ができて良いんじゃないか?」
「う〜ん、休暇が明けると研究ばかりになりそうだし、色々と先生に話したいことはあるけど、話したら今度は先生を止めるのが大変そうだし、どっちが良いかは何とも言えない」
「レムリア先生は魔法について話し始めると止めるのは大変だからな。…まあ、頑張ってくれ」
「…やっぱりもう少し休みの方が良いかな。翠玉は、ニールス先生を止めるのが大変ってことはあるの?」
「ニールス先生が睡眠をとるのを忘れたり食事を摂るのを忘れたりしないようにするにはどうすれば良いか、考えないといけないことはある。でも、レムリア先生みたいに話し出すと止まらないってことはあまり無いかな。レムリア先生も、睡眠や食事より研究を優先しようとすることあるよね。姉さんはそういうときはどうやって止める?」
「資料は全て研究室に置いていってもらって、寮に持ち帰らないようにする」
「やっぱりそれが一番良いのかな。他にも何か良い方法がないか僕も考えているんだけど、思いつかなくて」
私と翠玉は、先生達にどう休んでもらうかをしばらく話し合った。




