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宝石竜と赤い瞳の王子  作者: 森谷玻乃
アスター魔法学校 1年後期
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「レムリアの“鑑定”より練度が高いなんて、黄玉さんは凄いわね!レムリアが求める物を発見してしまうんだから。私も黄玉さんのような助手が欲しいわ〜。レムリア、譲って?」

 とリシア先生がレムリア先生に言うと、

「駄目だ。絶対駄目だ。黄玉は私の優秀な助手だ。相手が誰であろうと、譲る気は無い!」

 と、考え込んでいたレムリア先生が、勢いよく言った。

「残念だわ。まあでも、良かったわ。私が相手でもちゃんと強く断れるなら、誰が来てもちゃんと断れるわね。黄玉さんを、国の研究機関にとられないよう、気をつけなさいよ」

「ああ、当然だ。私の理想の助手を、あんな奴等には渡さない」

 と、レムリア先生とリシア先生が言った。



「国の研究機関って、先生達にとってはそんなに嫌なところなの?」

 と、私が首を傾げながら尋ねると、

「国の研究機関とは、私が学校に勤める前に居たところだ。勤めているのは貴族ばかりで、様々な事を研究する機関だが、近年は、魔石や魔力が込められた道具、魔道具についての研究ばかりが持て囃されている。私はそこで、魔法の研究をしたかったんだが、“鑑定”を使って魔石や魔道具を調べるよう言われ、他の研究者の雑用も押し付けられ、自分のしたい研究ができなかった。黄玉が行けば、おそらく私と同じように扱われるだろう。そんな奴等に、私の優秀な助手を渡してたまるか」

 と、レムリア先生が憤慨しつつ、説明してくれた。


 前に、レムリア先生から国の研究機関について聞いたときは、魔法の研究機関だと聞いて、ちょっと気になっていた。でも、レムリア先生もリシア先生も、そこについて話すときは、嫌そうに話すから、あまり関わらない方が良さそうかな?

 もし、国の研究機関に行かなければならなくなったら、ガーネットと一緒に行くことにしよう。



「ところで、黄玉はキセノンさんの店で何を買ったんだ?」

 と、国の研究機関への不満を一通り語り終えたレムリア先生に尋ねられた。

 私はマジックバッグを開いて、買った物を取り出して見せた。

「鑑定しても良いか?」

 とレムリア先生に尋ねられたので、私はそれに頷いた。

 私が買ったのは、根っこごと引き抜いて、綺麗に土を洗って乾燥させた、魔物化したトマトの苗だ。鑑定結果はこんな感じ。



魔物化したトマトの苗 状態:乾燥

 根っこを綺麗に地面から抜いて、土を洗い流してから乾燥させてある、トマトの苗。

 魔力の多い土地で育ったため、魔物化している。

 乾燥させてあるので、今の所はただのひからびたトマトの苗。

 水につけておき、魔力を与えると、緑色に戻り、土に植えると成長して、やがて花が咲いて実がなる。

 魔物なので、水で戻した後は、従魔契約が可能。自分で地面から根っこを引き抜き、そのへんを歩くことができる。魔力が十分にあると、魔法を使うことも可能。

 ちなみに、成長させると実るトマトは、この植物が自分から差し出した物に限り、食べると美味しく、毒は無い。

 勝手に実を取ると、怒って攻撃してくる。そして、勝手に取った実には毒がある。



 自分で動き回る植物なんて面白そうだから、つい買ってしまった。ついでに、これを育てるための植木鉢も、キセノンさんの店で買っておいた。

 ちなみにこの植木鉢は、鑑定しても、何の変哲もない普通の植木鉢だった。


「まあ、こんな植物もあのお店にはあったのね!私が欲しいくらいだわ!黄玉さん、ちゃんと育てられたら、色々と結果を聞きたいわ」

 と、私が鑑定結果を教えたリシア先生が、目をキラキラさせながら言った。

「……キセノンさんの店は、本当に変わった店だな。こんな物がいくつもあるなんて。まあ、私もこれがどう育つのかは気になる。黄玉、結果は教えてくれ。何なら、私の研究室で育てても良いぞ」

 と、レムリア先生が言った。

「翠玉とガーネットに、部屋に置いておくのを嫌がられたら、レムリア先生の研究室に置かせて貰うかな」

 と私が言うと、

「私の研究室でも良いのよ!」

 と、目をキラッキラに輝かせたリシア先生が迫ってきた。


「あの、私、リシア先生の研究室が何処にあるのか知りませ……知らない。それに、私も成長過程も含めて観察したいから、いつも行っているレムリア先生の研究室に置いておく方が、観察しやすいよ」

 と、たじたじになりながら、何とかリシア先生に言うと、

「リシア、いつものように、念話で事前に許可を取ってくれれば、私の研究室に来てくれて構わない」

 とレムリア先生が言って、

「なら、まあ良いわ」

 とリシア先生は引き下がってくれた。


 リシア先生は、変わった植物を目の前にすると、珍しい魔法を目にしたレムリア先生と同じようになるんだな。レムリア先生とリシア先生って、結構似た者同士かも。研究者って、こういう人が多いのかな?



 色々と話しながら歩いているうちに、学校の門が見えてきた。

 既に日は沈んでいて、辺りは暗くなってきている。


 私達は、まず夕食を摂るために、食堂へ向かうことにした。

 寮の近くまで来たところで、

『翠玉、ガーネット、帰ってきたよ』

 と念話で2人に向かって呼び掛けた。

『おかえり、姉さん。僕達はそろそろ寮の食堂で夕食を摂ろうと思っていたところだよ』

『おかえり、黄玉。黄玉はもう夕食は食べたのか?』

『まだだよ。これから、寮の食堂にレムリア先生とリシア先生と行こうとしているところ』

『なら、5人で食べないか?』

 私はガーネットの提案を、レムリア先生とリシア先生に伝えた。

 2人もそれで構わない、ということだったので、夕食は5人で食べる事になった。



 寮の食堂に入ると、私達の方が早く着いたようで、翠玉とガーネットはまだ居なかった。

 なのでまず、5人掛けのテーブルを確保した。夕食時は、寮に住む殆どの生徒と先生が、一度に食堂に来るので、先に席を確保しないと、席が空くのを待たなければならなくなる。


 翠玉とガーネットも、すぐに食堂に来た。

「遅れて済まない」

「私達も今来たところだよ」

 ガーネットが謝りながらテーブルに近づいてきたので、私が答えた。


 順番に食堂のカウンターに料理を取りに行き、全員分が揃ってから食べ始めた。

「買い物はどうだったの?」

「楽しかった!色々、買ったし買って貰っちゃった。レムリア先生が連れて行ってくれたお店が、変わった物がいっぱいあって、特に面白かった!」

「姉さんが楽しかったのなら良かったよ」

 と、私が翠玉と話していると、ガーネットが、

「黄玉は先生方に迷惑を掛けなかったか?ふらふらと1人で何処かに行こうとしたり、誰かに声を掛けられたりしなかったか?」

 と心配そうに、しきりに尋ねてきた。

「別に何も問題は無かったぞ」

「そうねぇ、特に何も無かったわね」

 と、先生達が苦笑しながら言った。

「そうか、良かった。ほっとしました。ところで、黄玉と仲良くなる、という目論見は、達成できたのですか?」

 と、ガーネットが尋ねると、レムリア先生が答えた。

「ああ。ここに帰ってくるまでの道すがら、どうにか達成できた。……最初から、“敬語は禁止だ”と言っておけばよかったか?」

「今日1日、一緒に買い物をして、距離が縮まったからこそ、帰り道ですぐに敬語を使わずに話せるようになったんだと思うよ」

 私がレムリア先生にそう返すと、

「そうか。まあ、結果的に目標が達成できて良かったよ。これからも、敬語は無しで頼む」

「私にも敬語はいらないわ。今日みたいに、これからも気楽に話してね」

 と先生2人から言われた。


 私はまだ、気を抜くと、敬語で話しそうになる。特に授業中は、何となく自分も生徒のような気がしているので、敬語を使わないでいられる自信が無い。なので、

「……頑張るけど、授業中は敬語でも良い?」

 と尋ねると、

「まあ、良いことにしよう。……しかし、敬語を使わないよう頑張る、とは変わっているな」

 とレムリア先生に笑われた。

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