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宝石竜と赤い瞳の王子  作者: 森谷玻乃
アスター魔法学校 1年後期
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 思いの外、キセノンさんの店に長居したようで、日が傾いてきていた。

「そろそろ戻る?それとも夕食を食べてから帰る?」

 とリシア先生に尋ねられた。

「あまり遅くなると、翠玉とガーネットが心配するので、早めに帰りたいです」

 と私が言うと、

「なら、そろそろ寮に戻ろうか。帰りは歩いて帰ろう」

 とレムリア先生が言い、私達は学校の寮に向けて歩き始めた。



 途中、冒険者ギルドの建物の前に、人だかりができていた。

 何だろう?と3人で首を傾げて、近づいてみると、パイルト共和国の勇者の話をしていた。


「パイルト共和国の勇者が、何かあったんですか?」

 と、私が近くに居た人に尋ねると、

「ああ、どうも宝石竜を仕留めたらしいんだ。数年前から、パイルト共和国の代表のうちの1人が、発言力が強くなっているという噂は聞いていたが、どうもそいつが勇者に選んだ人間が、宝石竜を仕留めたらしい」

 と答えてくれた。

 やりとりを聞いていた周りの人も、此方に振り向いて、

「パイルト共和国の勇者なんて、代表が冒険者にやる気を出させるために適当に任命するだけの、お飾りの称号なのに、それで威張っているあの勇者には、俺達も迷惑しているんだ」

「あいつなんて、ただ酸の扱いに慣れていて、人間の中では強い方だから、選ばれただけなのに。本当に宝石竜を仕留めちまうなんて、更に鼻高々になって、此方にしてみれば、本当に良い迷惑だよ。勇者が、宝石竜を仕留めたなんて言いふらすから、この国で冒険者の肩身が狭くなってきているんだ」

 と教えてくれた。


 この噂になっている勇者って、きっと私達を襲った勇者だよね。

 今、宝石竜の数はそんなに多くないだろうから、この噂になっている仕留められた竜が、お母さんとは別の竜だとは考えづらい。

 やっぱり、あの勇者は生きていたんだ。

 この話は、帰ったらちゃんと翠玉とガーネットに言わないと。


 私が黙って考え込んでいると、

「そうか。教えてくれてありがとう」

 と、レムリア先生が情報をくれた人達にお礼を言い、私達は冒険者ギルドを離れた。



 冒険者ギルドから離れて、人通りの少ない道に出たところで、

「宝石竜様を仕留めたなんて、本当かしら?宝石竜様を保護しようと、積極的に情報を集めているこの国でも、宝石竜様を発見した、なんて情報は無いのに」

 と、リシア先生が首を傾げた。

「どうだろうな。偶々、その勇者とかいう冒険者が見つけたのかもしれないし、情報が嘘かもしれない。何とも言えないな。この国には、パイルト共和国の話はあまり入ってこない。だから、もし宝石竜が見つかったのが、パイルト共和国国内なのであれば、この国に情報が入ってこなくても、おかしくは無いな」

 と、レムリア先生がリシア先生に答えた。

 私は、口を開くとうっかり言ってはいけないことまで言いそうだったので、黙っていた。



 2人の話を聞いているうちに、森を避けて学校へ行く道に入った。

 いつも通っている森は、王族が管理している森なので、普通、入るには許可が必要になる。

 王族と魔物は許可無く入れるので、私と翠玉とガーネットだけのときは、入ることができる。

 でも今日は、レムリア先生とリシア先生が一緒で、許可は特に貰っていないから、森の中を通るわけにはいかない。

 そのため、少し遠回りの森を迂回する道を通る。


「それにしても、結局黄玉さんの敬語はとれなかったわねぇ」

 とリシア先生が言った。

「黄玉、今から寮に戻るまで、敬語は禁止だ。普通に話してくれ」

 と、いきなりレムリア先生に言われた。

「ええと、頑張りま、……頑張る」

「そうそう、その調子でお願いね」

 と、リシア先生にも言われた。



「ところで、さっきのキセノンさんのお店で、レムリアと黄玉さんは何を買ったの?私は、変わった植物だったから気になって、これを買ったわ」

 とリシア先生は、マジックバッグから植物を取り出して、見せてくれた。


 乾燥させてある植物の実で、形は野菜のナスに似ている。でも、手足のように、出っ張ったところがある。

 色々と気になるから、鑑定してみたい。なので、

「鑑定しても良いで…、良い?」

 と私はリシア先生に尋ねた。


 植物は、切り取った物、地面から抜いて土を洗い落とした物、枯れた物であれば、マジックバッグに入れることができるし、物しか鑑定できない普通の「鑑定」のスキルでも鑑定できる。

 今鑑定しようとしている乾燥させてある植物は、マジックバッグに入れることができていたので、私が鑑定を使っても問題は無い。



 リシア先生は、

「ええ、勿論。でも、結果は教えてね。それにしても、黄玉さんも“鑑定”を使えるのね」

 と、驚きつつも許可をくれたので、さっそく鑑定した。



魔物化した白ナス 状態:乾燥

 乾燥させてある、白いナス。

 魔力の多い土地で育ったため、魔物化している。

 乾燥させてあるので、今の所はただのひからびた白ナス。

 水につけておき、魔力を与えると、再び動き出す。

 魔物なので、水で戻した後は、従魔契約が可能。

 ちなみに、乾燥状態でも水で戻した後でも、食べると美味しい。毒は無い。



 ……水で戻して魔力をあげると、動くんだ。しかも、従魔契約までできるって。変なナスだなぁ。

 説明の中に、「魔力の多い土地で育った」って書いてあるから、ルリタマが居たような、魔力溜まりで育ったナスなのかな。


 私は、鑑定結果を読み上げた。

 すると、リシア先生は、頬に手をあてて首を傾げながら、

「変わったナスねぇ。とりあえず、乾燥させたまま置いておくわ。このままの状態で、色々と調べてみようかしら。でも、魔物の状態だとどんなふうに動くのかも、とっても気になるわ。調べ終えたら魔物に戻しましょう。それにしても、変わった物が手に入って良かったわ〜!良い買い物をしたわ!」

 と、嬉しそうに言った。

「リシアは、変わった植物が好きで、研究しているんだ。私と同じように、学校に研究室を持っている」

 と、レムリア先生が教えてくれた。



「さて、私が買った物は、スライムの核だ。さっきも言った通り、魔力を込めて魔石の代わりにできないか、と考えて買ったんだ」

 と、レムリア先生が買った物をマジックバッグから取り出した。

「鑑定しても良い?」

「勿論だ。一応、結果は教えてくれ」

 と、許可を得てから鑑定した。



ソイルスライムの核

 土を食べ、土魔法を使うことができるスライ厶の核。茶色や黄土色、灰色など、食べた土の色によって、半透明な体の色も変わる。

 このスライムは、人間の間では畑や堤防に穴を開けてしまう厄介者とされている。

 半透明の体の中に、丸い石のような核がある。これを破壊すると、半透明な部分が消滅して、核の破片だけが残る。

 スライム1匹分の核の破片を持ち、それに魔力を込めると、核が元の丸い状態に修復され、魔石として使えるようになる。核を修復しても、スライムとして半透明の部分が復活することは無い。

 ただし、魔石にするためには、その核に必要な魔力を必要な分ピッタリになるように、込めなければならない。失敗すると核は粉々になり、再利用はできない。

 どのくらい魔力が必要なのかは、核によってもスライムの種類によっても違うので、「鑑定」を使える者や、魔石作りを補助してくれる使い魔がいる者にしか、これを魔石にすることはできない。



 スライムの核に魔力を込めると、魔石として使えるんだ。

 でも、必要な魔力量が核それぞれで違う上、込めるときは上限ピッタリにしないと、粉々になって再利用できなくなるんだ。

 スライムの核は手に入りやすいから、これを魔石にできたら、魔石が簡単に手に入るようにしたい、というレムリア先生の望みは叶うけど、魔力を込めるのが難しそう。


 私は、鑑定結果を読み上げた。

 すると、レムリア先生が、

「これは魔石にできるのか!私も、既に何度か魔石にできないか、と挑戦しているが、できた試しは無かったんだ。私の“鑑定”では、魔石にできるかどうかや、どのくらい魔力を込めると魔石になるかは出てこないからな。おそらく、練度が足りないのだろう。黄玉のおかげで、新たな事実がわかったよ!ありがとう!……これからのことを考えると、“鑑定”のスキルを少し訓練しないと駄目だな」

 と喜びつつ、考え込んでいる。

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