昔世話になっていた隠れ里の姫様が逃げてきて再会してなんやかんやな感じのファンタジー ③
明るい光が窓に差し込む。
眩しさを感じて目を開けると雨は上がりすっかり晴れた青い空が窓から見えた。
目覚めの景色に違和感を感じる。窓から見える空も天井も見慣れない物だった。今寝ている布団の感触もいつもより少し硬い。
すぐ近くから微かに寝息も聞こえる。
コノリは寝返りを打つように身体の向きを変えてベッドの横を覗き込むように見てみると黒髪の男性が床で寝ていた。
「ペン…きゃあっ!」
すぐそばで聞こえた悲鳴に驚いて目覚めると同時にドサッと重い物が落ちる衝撃が俺を襲った。
「ぐえっ!」
目覚めにしては最悪だ、コノリがベッドから落ちてしまったようだ。
俺は衝撃に悶え瞑っていた目を開けると、コノリの顔がすぐ近くにあった。
澄んだ泉を思わせる綺麗な水色の瞳。しばらくそのまま見つめ合ってしまった。
「コ、コノリ…!」
「ご、ごめんペング!わざとじゃないの、手が滑って…!」
我に返ったコノリが慌てて俺の上から下りて離れた。
コノリは壁にビタっと背中をくっつけ膝を曲げた姿勢になっているが、Tシャツ一枚にその姿勢のせいでパンツがしっかり見えてしまっていた。
思わず俺はそっちに目線が行ってしまって、俺の視線に気づいたのかコノリはハッと慌てて脚の間を手で押さえた。
(パ、パンツは履いてるみたいだけど…なんでっ…!)
コノリの顔が真っ赤に染まっていくのを見ていたらこっちを向いたので俺は慌てて顔を逸らした。
「ペング…」
「な、なんだよ…」
俺はコノリの方を向くことができない。
「脱がしたの…?」
「!」
コノリの言葉にビクッと反応してしまう。
確かに脱がせはしたが…別にいやらしい理由で脱がせたわけじゃない。
コノリは床に転がっていたクッションなどを引っ掴み俺に向かって手当たり次第に投げてきた。
「馬鹿っ!変態っ!すけべっ!」
「わっ!ぶっ!この…っ!それが恩人に向かって言う台詞かよっ!」
俺も投げられた物を投げ返し応戦する。
「サイテー!」
「仕方ねぇだろうが!それとも濡れた服のままの方がよかったのかよ!」
「濡れ…あっ…」
俺の言葉にコノリも昨日の事を思い出したようだった。
俺は昨晩傷だらけな上にびしょ濡れで現れ目の前で倒れたコノリを家の中へ運び濡れた服を着替えさせベッドに寝かしたんだ。
服を脱がせる時はちゃんと目を瞑ったんだぜ…一応な。一応、目を瞑って服を脱がせたんだ!大事な事なので2回言わせてもらう。
ちなみになぜTシャツ一枚なのかと言うと、それが限界だったからだ…。
着替えついでに傷も手当したので、コノリの腕や脚には絆創膏やガーゼが貼られている。
「あり…ありがとう…」
コノリが照れ臭そうに礼を言う。
「…」
「…」
気まずい空気が二人の間を漂う。
「ていうか…なんで俺の居場所知ってるんだよ…」
さっきまで少し忘れていたが、コノリにとって俺は自分から解雇して追い出した相手な筈なんだよな。それならその後の消息なんてどうだっていいはずなのに。
「それは…その…ペングの事を…気にかけていたから…」
「…なら、何でだよ」
「え?」
「有無を言わさず追い出しておきながら俺の事を気にかけていたって…意味分かんねぇよ!じゃあ何で突然解雇だって言えんだよ!」
俺は握り締めた拳をプルプルと震わせた。あの解雇で俺がどれだけ傷ついたか…!今頃気にかけていたなんて言うなんてどうして。俺の頭の中はぐちゃぐちゃだった。
「…突然現れたお前は傷だらけでボロボロだし…それにお前が持ってた石のペンダント…アレ、ルディのだろ?」
ルディとはコノリの兄さんで、そのルディが大事にしていた大きな石のペンダントを昨日コノリはぎゅっと握り締めて離さなかった。
そのペンダントは今テーブルの上に置いてある。
「なあ、一体何があったんだよ…1年前の理由も…教えてくれよ…」
コノリの身にもきっと何かが…それも大きな事が起きたから俺の元を訪ねてきたんだろう。それでも俺は突然の再会に心がざわついた。
…今更何の用だって。
コノリも何も言えないのか俯き黙っていた。
そんな張り詰めた空気を壊すかのように『グゥ~』と大きな腹の虫が鳴いた。
俺はポカーンとして音がした方を見ると、目の前に座るコノリは恥ずかしそうにお腹を抱えてていた。
「…お前…いつから飯食ってねぇんだ?」
「そういえば…昨日の朝食べたきり…」
今度は控えめに『きゅる~』とコノリの腹が小さく鳴いた。
俺ははぁと溜め息をついて立ち上がった。
「…食欲はあるんだな?お前も…色々あって何から話せばいいのか分かんねぇんだろ?」
「…」
「何か作ってやるから、それから話そうぜ…な?」
お互いに色々と頭の中がゴチャゴチャしてるんだろう。
腹が減ってると頭も働かねぇしな。
「…うん」
コノリが頷くと俺は寝室を出た。
(さて、何を作ろうかね…あ)
そういえば一昨日大将から貰った手作りのパンやマフィンなどがまだ余ってたな。
大将は心が乙女なら趣味も乙女なので時々パンやマフィンなどを焼いてはたくさん俺に持たせていた。
(どうせ一人じゃ食べ切れねぇしな)
もらったマフィンの中にはコノリが好きなフルーツが使われたものもあった筈だ。
そうと決まれば後は少しの主菜や副菜を用意すれば十分だろう。
俺は冷蔵庫を開け必要な物を取り出すと早速用意に取り掛かった。
朝食の用意を終えて寝室へ戻ったら、コノリはベッドでスヤスヤと眠っていた。
「…」
布団も被らず枕を抱くように眠っているので、Tシャツの裾が捲れてまたもパンツが丸見えに…。
綺麗な曲線を描く丸みのあるお尻に思わず釘付けになってしまった。
(さすがに…ちょっと…)
前屈みになりなんとか理性を抑えようと考えながら俺はクローゼットから適当にズボンを取り出すと、それを寝てるコノリに向かってポイっと放り投げた。
投げたズボンを当てられた事で吃驚したのかコノリはガバッと起き上がった。
俺は一言飯が出来たと告げるとまた寝室を出た。
寝室を出てすぐがダイニングキッチンになっているので用意した朝食が目に入る。
バスケットの中にはマフィンやロールパンに食パンを詰め、色んな野菜を盛ったサラダボウルの隣の小鍋にはゆらゆらと湯気が立つオニオンスープ。そして丸いお皿にはベーコンやソーセージ、目玉焼きを載せてテーブルに並べておいた。
我ながら立派な朝食を用意したものである。
(…ま、"城"の食事に比べりゃ質素なモンだけどな)
パンツ丸見えのまま寝ていた事に気付いたのか顔を赤くしたコノリが渡したズボンを履いて寝室から出てきた。
「さ、飯にしようぜ」
俺はコノリに席に着くよう促した。
朝食を終えてコノリはココアを、俺はコーヒーを飲みながら一息ついているとコノリがマグカップをコトンと置いた。
「おかわりか?」
「ううん、違う…ペング…」
「なに?」
コノリは真面目な顔になったかと思えば、『ごめんなさい!』とテーブルに頭を打ちつけそうな勢いで頭を下げた。
「コノリ?」
俺は突然のコノリの行動に驚いていると、頭を下げたままコノリは話し始めた。
「…本当にごめんなさい、ペング。理由もちゃんと告げずに解雇だなんて…私酷い主だったよね…本当にごめん」
「…」
「その上…あなたを追い出して…。恨まれても仕方ない事をしたと…思ってます」
コノリの声は心無しか震えている。肩もプルプル震わせて…泣いている?
「コノリ?とりあえず…顔を上げてくれよ」
「…」
「コノリ?」
話さなくなったコノリが気になり俺は顔を覗き込むように、コノリのそばにしゃがみ込んだ。
「…っ!」
すると突然コノリが俺に抱きついてきて、その勢いで俺はコノリに押し倒される形で床に転んだ。
「ちょ、コノリ…!」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ペング!ごめんなさい!」
コノリは泣きじゃくりひたすら謝罪を口にする。
「コノリ、な?落ち着け?そんなにたくさん謝られても…俺もどうしたらいいか…」
「ごめんなさい、ペング…!ペングを巻き込みたく…なくてっ…大臣が…イグノ爺が…」
「イグノ爺…?」
イグノ爺と聞いて、白髪のポニーテールの老人を思い出す。
コノリの親父さんの側近の爺さんだったはず。のほほんとした爺さんで稽古の合間にコノリと三人でよく茶を飲んだ覚えがある。
そのイグノ爺に何かあったのか…?
俺は続くコノリの言葉にひどく衝撃を受ける。
「私達を…国を…裏切った…!」
----8年前、俺はコノリに出会った。俺が11歳、コノリは10歳の時だった。
俺は住んでいた村を飛び出し、森を彷徨い歩いていた。
ガント岩山というフォーネスト大陸で一番大きい山のそばまで来た時、にコノリが乗った馬車に出会った。
コノリは桃色の髪でモヒカンのように整えた前髪が印象的だった。
俺を一目で気に入ったというコノリは、理由が俺の紅い瞳が当時亡くなって間もなかったコノリのお袋さんの紅髪とそっくりの色だったからという。
シェリオスというのは国の名前で、そこは周囲との交流を絶った閉ざされた国でありシェリオスはガント岩山の中に創られていた。
シェリオスの国民は皆遠い昔にいたという天上人の末裔なんだそうだ。昔は天と地上の二つの国があったらしい。
コノリはそのシェリオスの王女だった。
たまに国の馬車に乗り込んでは仕入れに向かう国民にくっついては外出をしていたんだそう。
今回もその帰りだとコノリは笑っていて同行していた商人は苦笑していた。
シェリオス独自の技術だかなんとかで岩山の中腹辺りにある隠されていた門をくぐり仄暗いトンネルを抜けると、そこは岩山の中だとは思えない景色が広がっていた。
岩山の天井まで伸びた塔を中心に町が囲う様に並んでいて、青と白の光が至る所で輝いており幻想的な雰囲気を出していた。
あの塔が私達が住むお城なのよとコノリが教えてくれた。
ぐるっと回り込むように馬車は坂を下り、シェリオスの町並みがはっきりと見えてきた。
俺はこれからこの国でどんな生活が待っているのかとワクワクして町を眺めていたのを覚えている。
初めて会ったコノリの親父さん…クレオポス国王は、見ず知らずの俺を連れて帰ってきた娘に酷く驚いていた。
「父様!この子、私の騎士にしたいの!」
無邪気な笑顔で抱きついてくる娘にニヤけたりブルブルと顔を振って困ったような顔をしたりコロコロ表情が変わるコノリの親父さん。
シェリオスの国民は皆、遥か昔にこの世界が地上の国と天上の国と分かれていた頃に姿を消したという天上民の末裔らしく、周りとの交流を絶ったこの国に"他人"が入り込む事なんて初めてだったのだ。
さてさてどうしたものかと親父さんが悩んでいたところに現れたのがイグノ爺…イグノティオス大臣だった。
大臣は国王である親父さんが最も信頼する側近で、しばらく剣の稽古を付けてみてから決めたらどうだという大臣の提案にコノリは顔を輝かせ、親父さんは1ヶ月という期限を付け大臣の提案を聞き入れた。
その日は用意された客室で眠り、次の日から剣の稽古が始まった。
剣を教えてくれるのは、国王の息子で王子でコノリの兄でもあるルディ…ルディオポスだった。
扱った事もない剣に最初は苦戦し厳しい稽古に心が折れそうになるが、コツを掴めば早いもので一週間経つ頃にはなんとか形になっていた。
ルディは俺の飲み込みの早さに驚きながらもこれならコノリの騎士が務まるだろうと思ったそうだ。
一ヶ月の期限を迎える前に、俺を城へ置く事が決まった。
そして半年後、コノリの騎士に正式に任命された。
それからは鍛錬を積みつつ、どこへ行くにもコノリの傍から離れず毎日一緒に過ごした。
時には任務を与えられ隊を組み離れる事もあったが、それ以外はいつも傍でコノリを見守った。
夜中眠れないからと呼び出され、部屋をこっそり抜けてコノリの部屋で夜通し話をした事もあった。
そんな風に毎日を過ごしていたんだ。
「ペングを解雇したのは…城の中で不穏な動きがある事に気付いたのがきっかけだった…」
少し落ち着いたのか、俺の腕の中でポツポツとコノリは話し始める。
俺達は床の上で抱き合ったままでいた。
「不穏な動き?」
「うん…昔この世界に天と地上の国の二つがあった事は知ってるよね?」
「ああ」
確かコノリと出会った時にそんな話を聞いたような記憶がある。
「私達の先祖…天上民が姿を消したのは地上民への償いの為だった」
遥か遠い昔、天と地に人が住んでいた。
天上国"シエル"、地上国"テラ"は互いに交流し合い友好な関係を築いていた。
ある時、テラに"災い"が現れる。
"災い"は強大な力でテラを瞬く間に炎で包んだ。
テラの危機にシエルの王が立ち上がり、"災を破壊する者"を遣わせた。
それは"災い"を上回る力でテラを救った。
しかし余りに強大過ぎた力は暴走し地上のほとんどを"災い"以上に破壊した。
これにテラの王は怒り、シエルの王を責めたてた。
シエルの王はこの事に心を傷め、償いとしてテラにシエルの技術と知識を授けた後、人々を引き連れ天を降りた。
降り立った地に"災を破壊する者"は封印され、王はその上に国を創った。
その後、テラの人々の前にシエルの人々が現れる事は無かった。
「これがシェリオスに伝わる伝承…」
コノリの話は聞いた事の無い話だった。
シェリオスが何故交流を絶っていたのか、それは"災を破壊する者"の封印を守り地上を二度と傷つけさせない為だと言う。
「その"災を破壊する者"っていうのは何なんだ?」
「詳しい事は分からない…でもシエルの技術を詰め込み作った魔導兵器と言われてる。城の地下にはそれが封印された部屋が隠されてあって…王族しか入っちゃいけない場所なんだけど、その封印場所に誰かが侵入した形跡があったの」
「誰かが封印を解こうとしたって事か?」
「恐らく…、月に1度私達王族…父と兄と私の3人で封印の確認をしていたの。侵入の形跡に気付いたのはペングを解雇する一週間前の事だった…」
「一週間前…その時大臣の仕業だって気付いたのか?」
「その時はまだ分からなかった…、けど父様は城の内部の人間だろうって言ってた」
シェリオスの城の周囲は警備隊が守っていたし、町の人間が城へ入るには許可がいる。城の人間なら出入りも自由に出来るし内部の探索もし易いからなと俺は思った。
「それから父様は兄様に信頼する部下に封印場所を見張らせるよう命じたの。私達が大っぴらに動くと気づかれてしまうかもしれないから…そして私にも命じたの、ペングを解雇するようにと」
「…それは、どうしてだ?」
コノリはそっと俺から離れた。
「ペングは…"他人"だから…、国全体を巻き込み兼ねない問題に、ペングまで巻き込むワケにはいかなかったの」
目を伏せ、声を震わせながらコノリは続ける。
「ずっと…ずっと一緒にいたペングを解雇して…追い出すなんてしたくなかった。もっとずっと一緒にいたかった…」
コノリはまた泣いていた。
「でも万が一封印が解かれてしまったら…また暴走してしまうかもしれない危険があった。シェリオスが閉ざされた環境にあったのは、封印が解けてしまった時に"外"へ出さないためだった。私達にも危険が及ぶけど、でも"他人"を巻き込むよりよかった。だから…私は一週間の猶予をもらった」
「…」
「もっと一緒にいたかったけど、出来ないなら…時間を下さいって父様にお願いしたの。悔いなくペングと最後の時を過ごしお別れする為に」
…そういえば、コノリの言う"一週間"はいつも以上にコノリがあっちへこっちへと俺を連れ回した覚えがある。あの時にはもう解雇をすることを決めていたんだろう。
そして解雇を告げられる前夜には…。
「ペングにとって酷い主になれたらきっと私を恨み私の事なんか思い出したくもなくなるだろうと思ったの」
「だからあのとき…?」
コノリはこくんと頷いた。俺は黙って話を聞くことにした。
「その後ペングの解雇を城の者皆に告げて兄様が私の騎士になった」
ルディなら剣の腕も確かだ、大剣を軽やかに扱える奴はあいつくらいだもんな。
「そして…敵の尻尾を掴むまで半年もかかった。兄様の部下が毎日封印場所を見張っていたんだけどなかなか姿を見せなくて…でもある日知らない女の子が封印場所に近づくのを部下の人が目撃したの。そして…殺された、その女の子に」
「殺された…!?」
「部下の人がいつまでたっても報告に来ない事をおかしく思った兄様が封印場所へ見に行ったら…そこで血だらけで倒れていたの。かろうじて息はあったものの助からないのは一目瞭然だったみたい…部下の人が死の間際に、兄様に女の子の事を告げたの」
部下の人が言う女の子は、誰に聞いても姿を思い浮かばない誰も知らない子でどこを探してもその女の子は見つからなかったらしい。
そして浮かんだ一つの可能性が、シェリオスの人間が外から人を手引きしているかもしれない事をコノリは言った。
部下の人の死は皆に伏せ、コノリ達で丁寧に埋葬したそうだ。
「でもどうしてもそのシェリオスの人間が誰かわからなかった…。でもある日それが突然分かってしまった」
「突然?」
「それが昨日の事…。朝食の後、大臣が私達の元へある人を連れてこう言ったの」
『この少女は私の娘であり、あなた方が探している者の正体です』
大臣自ら敵との繋がりがあることを明かしたというのか!しかも娘がいたなんて初耳だ、俺は酷く驚いた。
その時の大臣はいつもののほほんとした笑みではなく、普段のイグノ爺からは想像できない悪意を感じる笑みを浮かべていたんだそう。…本当に想像できない、いつものほほ~んとして茶を啜っていたし。
それからその場で少女がコノリ達に襲いかかり、親父さんがコノリを庇い倒れた事を聞いた。
「既に城の中の者はみんな大臣達の手によって殺されていた…町にも火の手が上がっていて…」
コノリは胸の前で拳をギュッと握り締める。
「私は国にある緊急時に使う秘密の場所を目指して逃げていたんだけど…その時大臣の娘に追いつかれて…」
そしてルディがコノリを助け逃がしてくれたと言う。ペンダントはその時に預かったと。
「…」
想像以上の出来事だった。
閉ざされた空間の中でも、美しく幻想的な景色が広がっていたあの国が炎に包まれ、シェリオスの住民もきっと助かった者はいないかもしれないなんて…俺は信じられなかった。
「ごめんね、ペング」
「何でまた謝るんだよ?」
「本当は…あなたを頼るつもりなんてなかった。でも、逃げる中ペングの事が頭に浮かんだ。もう一度会いたいって…」
コノリはそれを言ったきり黙ってしまった。
俺もコノリの話に動揺していたので、お互い無言のまま床に座り込んでいた。
お互い黙ったまま床に座り込み、気付いた時には一時間も経っていた。




