表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
5/26

五話 契約結婚

「………………え?」

「ですから、私と結婚していただけませんか」

「……何を仰っているのか、わからないのですが……」

「そのままの意味です。エヴァンローズ公爵家に嫁ぎませんか、と申し上げています」


 ____理解が追いつかない。この方は、本当に何を仰っているの?


 大した用じゃないって言ってたわよね?

 その用が、これだっていうの……!?


「…………一つ、伺っても?」

「はい、なんでしょう」

「なぜ、私なのですか? あなたのことを慕っている未婚のご令嬢は、たくさんいらっしゃるじゃりませんか」

「だからですよ。レディ、あなたは私に興味がないでしょう」

「……」


 ますます意味がわからない。確かに私は、エヴァンローズ公爵閣下のことを慕っているわけではないけれど……。

 それが、どう関係しているというの?


「私は女性に興味がありませんが、立場上未婚のままではいられませんから。貴族に結婚は付き物です。それはあなただってそうでしょう。だから、一人でこんな夜会にいらっしゃる」

「……それは、そうですが」

「ですが、あなたは私に興味がない。そして、私は女性に興味がない。でも、お互いに結婚しなければならない……。ならば、私達が結婚してしまえばいいと思いませんか」

「…………私が今、貴族の間で何と言われているかご存知ないのですか?」

「存じ上げていますよ。ですが、私と結婚すればその様々な噂も上書きされるでしょう。エヴァンローズに物を言える人間など、王族くらいのものです」


 ……正直、公爵閣下のご提案は……私にとっては渡りに船だ。

 なんとしてでもフローレンス伯爵家から逃げ出したい私にとって、これ以上魅力的な提案はない。


 それに、公爵閣下の仰っていることもわかる。女性に興味がない彼にとって、下手に自分を慕っている女性と結婚なんてしてしまったら、面倒なのでしょう。


 けれど、公爵閣下は本当にそれでよろしいのかしら。私は……『作物が実らない畑』なんて言われているのよ?


 ……まぁ、彼自身も不能と噂されていたくらいだもの。そこは、お互い様か……。


 どちらにせよ、この様子だと私の家に書状が送られるはずだ。そうすれば、私に拒否権はない。

 公爵家との繋がるチャンスを、あの両親が逃すわけないもの。


 ならば、腹を括るしかない。


「…………わかりました。私、あなたと結婚いたします。ですが、一つだけ約束していただけませんか」

「はい、なんでしょう」

「何があっても絶対に、私のことを愛さないでください。その代わり、私もあなたを絶対に愛さないと……約束いたします」


 私がそう告げると、エヴァンローズ公爵閣下は驚いたように目を見開いた。

 この人も、こんな顔をするのね。


「……いいでしょう。契約結婚ということですね」

「えぇ、お互いにとって利がありますでしょう?」

「そうですね。こちらとしても願ったり叶ったりです。では……これから夫婦として、よろしくお願いいたします」


 そう言って公爵閣下は……私に右手を差し出してきた。どうやら、握手を求めているらしい。

 ……どう考えても、プロポーズ後の行動ではないけれど……でも、契約結婚だもの。それくらいが丁度良いわ。


「えぇ、こちらこそ、よろしくお願いいたしますわ」


 ____こうして私は、彼と『愛のない契約結婚』をすることになったのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ