二十話 夢か現か
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「…………ここは……」
____気が付くと、私はエヴァンローズ公爵邸の執務室に一人、ぽつんと立っていた。
足元が覚束ない。歩こうとしても、足が重くて前に進めないのだ。
どうしたものかと思っていると、突然目の前にリュシアン様が現れた。
驚く私に、リュシアン様は____あの日のアルフレッド様のように、とても申し訳なさそうな声色でこう告げてきた。
「ミレイユ、私と離縁してください」
「……一体、何を仰って……」
「子供が出来たのです。聖女様との間に」
その瞬間、頭が真っ白になる。
どうして、契約結婚なのに、あなたも私を裏切るの?
まだ私たち、結婚したばかりじゃない。こんなのっておかしい、どういうこと?
でも、一つだけ、ハッキリ言えることがある。それは____
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「……まだあなたを、あいしてなくて、よかった……」
____そうぽつりと呟いた、自分の声で……私は目を覚ました。
目に映るのは、公爵邸の執務室……ではなく、私の部屋の天井。
それから……私を覗き込んでいる、リュシアン様の顔だった。
「目が覚めましたか」
「……リュシアン様……」
「魘されていましたよ。まだ熱があるようなので、休んでいてください。今侍女を呼んできます」
「……私、眠っていたんですね」
じゃあ、さっきの光景は、夢ってこと……?
私、一体なんて夢を……。
私が呆然としてる間、リュシアン様はアンナを呼びに部屋を出ていってしまった。
……それから少し経った頃。バタバタという足音の後に、ガチャ!と勢いよく扉が開く音が響いた。
「失礼いたします! 奥様、目を覚まされたのですね!?」
「アンナ……。私、馬車に乗ってからの記憶がないのだけれど、私の身に一体何が起きたの?」
「奥様は馬車で倒れられて、丸一日お眠りになっていたんですよ。すごい熱で……専属医の話では、寝不足とストレスとのことでしたが……」
「寝不足……ストレス……そうね」
アンナは心配そうにそう言ったあと、「でも……」と嬉しそうに話を続けた。
「奥様が眠っている間、旦那様はお仕事を調整してまで、ずっと看病されていたんですよ。愛されているのですね」
「え……? リュシアン様が?」
「はい。何度も額のタオルを交換したり、部屋の換気をしたり……あんな心配そうにしている旦那様、初めて見ました」
ニコニコと話すアンナとは対照的に、私は驚きを隠せなかった。
…………私とリュシアン様は、愛のない契約結婚なのに……どうしてそこまでしてくれるの?
ペンダントのプレゼントだってそうだけど、初対面で契約結婚したばかりの妻に対する態度では、ないような気がする……。
「……気のせい、よね……」
私がぽつりと呟くと、アンナが不思議そうに首を傾げた。
「どうかされましたか?」
「…………いいえ、なんでもないわ」
リュシアン様が私に少しでも好意を持っているだなんて……そんなわけ、ないもの。




