十四話 デート?
ドレスのための採寸と生地選びは、呆気ないほどすぐに終わった。
……そもそも私はこの作業、二回目なのよね。初めて結婚式を挙げた時にも、ドレスを仕立てていただいたから。
ドレス選びは、私の専属侍女であり子爵家の令嬢でもあるアンナに手伝ってもらった。彼女の家は代々王侯貴族向けの仕立て業を営んでいるらしく、ドレスの流行に滅法詳しかったのである。
***
「そうですか、彼女が選んだドレスを……」
「はい、アンナはとてもセンスと手際が良くて、すぐに決まりました」
「私としては、ミレイユが選んだドレスも興味がありましたが」
「……私は、一度目の結婚で自分で選びましたから。今度は人に選んで欲しかったのですわ」
「…………そうですか」
____一日が終わるのって、本当にあっという間ね。
今はリュシアン様と夕食を共にしながら、今日の午後に起こった出来事の報告をしているところだ。
「そういえば、リュシアン様の礼服はお仕立てされないのですか?」
「私は、あなたに結婚を申し込んだ翌日に採寸しましたので。……それは兎も角、ジュエリーも購入しましたか?」
「え? いえ、必要ないと思いましたので、ドレスと靴だけです」
「では明日の午後、二人で王都へ行きましょう。懇意にしているジュエリーショップがあるので」
リュシアン様からの予想もしていなかった提案に、私は焦りながら首を振った。
「そんな、申し訳ないです! それに、リュシアン様はお忙しいですから、行くなら私とアンナで……」
「……夫婦として、仕事は手伝っていただけるのでしょう。あなたがいれば、仕事なんて午前中に片付きます。それに、あなたはもう公爵夫人なのですから、立場に見合った装飾品を身に付けるべきです」
「それは……確かにそうですが」
「では、決まりですね。仕事が片付き次第、王都へ向かいましょう」
「わ、わかりました」
……なんだか、冷徹と呼ばれるリュシアン様らしくない強引さがあるような……。
それとも、私がリュシアン様のことをまだ全然知らないから、そんな風に思うのかしら。
それにしても意外だわ。女性に興味がないと公言しているリュシアン様が、私のジュエリーを一緒に選んでくださるなんて……。それくらい、リュシアン様も結婚式を大事にしてくれているということなの?
……いえ、公爵夫人である私が貧相な格好をしていたら、エヴァンローズ公爵家の品位を落としかねないから、監視目的かもしれないわね。
そう思うと、なんだか信用されていないようで少し悔しい。……ちょっとくらい、仕返しにからかってもいいかしら?
「なんだか、デートみたいですわね」
笑顔でそう告げると、リュシアン様はナイフを持った手を一瞬ピタリと止めてから……目線を横に逸らして、ゆっくりと口を開いた。
「…………世間一般では、そうかもしれませんね」
「……否定なさらないんですか?」
「ミレイユ、あなたが言い出したんでしょう」
「それは、冗談のつもりで……」
「……そうですか」
____そ、それは一体どういう反応なのかしら……!?
リュシアン様は表情が変わらないから、感情がわかりにくいのよね……。アルフレッド様は思っていることが全部表情に出る人だったから、何を考えているかわかりやすかったのだけれど。
……結局この後は、微妙な空気のまま食事が終わってしまって。
アンナ含む侍女達に夜の支度をしてもらって、私はすぐさまベッドに潜り込んだ。
……契約結婚に、デートって含まれない……わよね!?
もう……明日、どんな顔をして行けばいいの……!!




