31 クアドラ:矜持ある悪事は成り立つのか
皇城への正門をくぐり、城へと続くタイル張りの参道をいく。
目の前には白く輝く城がそびえ立ち、紋の刻まれた城の門扉が見える。
自分をはじめ、4人の貴族が揃った。議決権を持つのは7人。否決に回った自分たち、残り3人のうち、2人は王の腰巾着のルニとティドーであり、もう一人は不参加を表明してきているからこれですべてだ。
あの青二才はうろたえている頃だろう。
思っていたより速く貴族が集まったのだから。
話は簡単だ。
単にずっと前に声をかけていただけだ。そしてタイミングよく城のそばで、今度は城下で汚染が生まれた。
疑問は自分がやったのではないところだが、手を汚さず勝手に湧いたのなら結構と思っている。
とうとうその時が来た。
誇らしい気持ちで、城へ続く参道を歩き出す。
自分を止める衛兵はいない。
うろたえて動揺したまま道を譲るだけだ。後ろには3名の貴族が部下を伴い歩いている。
勝ちを確信していた。
王を教会を引きずり下ろすときが来た。
城門をくぐったところでルニが正装で城の扉前にたっている。
相変わらず表情から意志の読み取れない無表情ぶりだった。
「これはこれはお出迎えありがとう。」
「クアドラ卿、このようなお越しの話は聞いていませんが。」
「言ってないからな。しかしながら王の失政による国の一大事とあらば一刻を争う。」
にこやかに微笑みかけてもルニは顔色一つ変えない。
「皇王はどちらに?」
「王は城内におりますがおいでになりません。」
「こちらからうかがうから問題ない。」
「議決を取る会議を開くには今は性急すぎます。汚染騒ぎでそれどころではありません。」
顔色一つ変えないくせに、一歩もひかない。
この若造が大きく出られるのも今の内だ。
「だからこそやるべきだ。王のご無事も確かめなくてはならない。」
「どういう意味です。」
「そのままだ。印はまだあるのか。印をうしないつつあるから王は姿をださないのではないか。」
「失敬な。侮辱です。」
「王が王たればそのようなことを言われる筋合いもないだろう。」
ルニを追いやり一歩進もうとする。
ふと何かが視界に入った気がして横を見る。
この城門と城の門の間はそこそこの距離と広さがあり、自分が気になったものはその城内の広場、ずっと左手にあった。
遠くに白い何かが見えた。
ポツンと急に現れたそれは、異質だった。
恐らく人で流線型の大きな帽子のようなものを被っていた。
ようなものというのは、帽子と言うには大きすぎて顔を完全に隠していたいし、何より見たことがない形をしていた。
簡単にいえば、不気味なほど何も色がなく、のっぺりとした仮面だ。後頭部から顎下辺りまでをすっぽりと隠している。
そして真白な服。肩から足元までを包み、体型が一瞥できないから男性か女性かもわからない。
いるだけで周囲の音がさっと引き、緊張が支配した。
それはゆっくりとこちらに歩いてきて、妙に間を空けてとまった。
「教会員だ。聖堂の極度の破損と状態の悪化で申し開きがある。」
「教会は我が国には関係がない。お引取り願う。」
ルニに言わせず自分が返した。全く意味がない奴らが来た。
この抑揚のない声。
人らしさがない。
聞いているだけで不愉快だ。
「あなた達が立ち入ってよい場所ではない。」
白い教会員の前に立ちはだかり自分が言う。
「契約で聖堂のある国は教会員の立ち入りには制限がない。契約をよく読むんだな。あれだけの破損、聖堂の状態の悪化、我々には立ち入ってこの原因を突き詰める権利がある。」
「何をいう。教会こそがこの国を悪化させた諸悪の根源よ。何を言うかと思えば…」
「我々が見るのは聖堂であり、国ではない。」
「ならなおさら…」
「汚染がひどい」
真横で声がした。
ぞっとして横を見ると自分のすぐそばにもう一人いた。
口元しか見えないほど深くフードを被って白い服をきている。
背が高い。自分と同じくらいか。
こいつも教会員か。
無礼なと叫ぶ前に顔を片手で掴まれると途端に体から力が抜ける。
何が起こった…。
とっさに片手で相手を掴みかかろうとしたところ、その腕もさらに掴まれた。
手に着いた篭手を破壊され、はぎ取られる。
周りが悲鳴を上げるのが、うつろな意識の自分にも聞こえた。
「罪を背負ったままはつらい。」
何がだ。
聞こえた声に問おうとしたけれど、頭がくらくらし口を開くこともままならない。
短いので更新時間を短くして最後までいきます。
もうそろそろ終わるよ。




