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30 蒼志:自分の業務外の手伝いは不本意

「なぜ俺が呼び出される。」

不本意極まりないながらも一応聞いた。

目の前には何もわかってなさそうな一介の教会員に土まみれの黒雪がいる。

「きったねえな。」

「声に出てる。」

黒雪にいわれ、ちっと舌打ちしてやる。

とにかく疲れててイライラするのによくわからないことで呼出された。

しかも教会の地下だという。こんな場所があるなんて聞いてなかった。

「黒雪、こちらは誰です?」

「これは蒼志。私の弟です。」

「弟? 全く似てないですしその上、年上に見えますけど。」

「義理の弟なんで。」

教会員が全く分からないという顔をしている。

黒雪は本当に説明が下手というか、この教会員がわからない気持ちがわかるぞ。

「で、なんで俺は呼ばれたんだ。」

「手伝ってほしくて。方法は考えた。というかまだその恰好だったんだね。」

黒雪が自分の体を見て言う。

青い髪に青い目。

金髪とは全然違うこの姿は、黒雪が汚染を吸うと黒くなるように、仕事をするときの自分の姿だ。

話がそれてそれてしょうがないことにいらいらする。

「俺がいまあっちに戻ってる場合かよ」

「考えてくれてたんだ。ありがとう」

礼なんて言われると思わなかった。

少し驚いてしまい顔に出てしまう。それを見てか、顔をかくした状態だけれど、姉の口角が上がった。

笑ってるわ、こいつ。

心の中で思う。珍しい。

「で、俺は何をすればいい」

「蒼が置いていった人は、蒼が言った通り呪いが成就し、あんな状態になったけど、ここの不調は終わっていないということは呪いが終わっていない」

「お前ほんとに話が」

「聞いて。ここの司祭が地方の貴族が王の責任を問いに、こっちに来るらしい。このタイミングで」

「で」

「タイミングがおかしい。教会を呪うほどどうにかしたいということは、おそらくその貴族のうちの一人だと思う。王は即位の時に、それまでの人をだいぶきって恨みもあったらしいから。そして教会がはいることをずっと反対していた人たちは、貴族たちだったから。」

「でそれがわかってどうする」

「貴族が皇都にきたら、直接見てみる。見たら、汚染がたまってるならすぐわかる。」

「たまってなかったらどうする」

「そしたら別にいるってことでしょう」

まあね。

しかもおそらく当たってる。

「だから蒼には私が貴族たちを見てる間、引き留めててほしい」

「引き留めてお前はどうする」

「たまってる人がいたら、とりあえず印があるかを剥いで見つける。証拠があれば、あとはどうとでもなるでしょう」

まあね。

そう思ったけれど口には出さない。

「それでその人の汚染を取り除く。蒼にはミネリが聖堂の止水弁を開くからそれを手伝ってほしい」

「…まさかこれの?」

壁からむき出しになっている聖堂の一部を見て言う。

使ったことはないけれど、この赤くむき出しになったのが聖堂の調整弁なのはわかるし、おそらく聖堂の脈を強制的に調整できるだろう。

「これを全開にしたら、おそらく中にいるやつも全部吐き出されるでしょう」

「そりゃあそうだろうけど、強制的に開くと被害が出るぞ」

見上げながら思う。これはなかなかの大きさだ。

古いから大きいわけでもないし、大きいから量が多いわけでもない。

だけれどここは元から脈が大きいのはわかっているし、ほとんどメンテも何もしていないからすごい量が噴き出す。想像するに、周りがめちゃくちゃになるだろう。

「ここは海に面してて重要な建物はない。あっちも整備していないっていう免罪符がこちらにはある」

「悪い奴だな」

ヒヒっと笑う。

「弁を開くなら、貴族の汚染を取る必要ないだろ。ほっときゃ死ぬ」

「…その人がやったということをきちんと知らしめたい。悪いことをしたことを責任を取らせたい」

「それは教会のためか?」

黒雪はうつむいたまま黙り込んだ。

「わからない」

「まあいい。今回は手伝ってやる」

顔をあげる彼女の空気が和らぐ。

わかりやすいやつ。

「知ってるだろうけれど弁を開く祝詞は私も蒼志も使えないし、時間がかかる。だからミネリにやってもらおうと思う。」

「俺は貴族を足止めする。その間にお前が貴族を観察する。足止め終わったらこいつを俺が助けろと」

黒雪がうなずく。

少し控えめ気味に。

「了解」

「弟さん、怖そうに見えて意外といい人なんですね。」

教会員がぼそっとつぶやく。

聞こえてんだよ。

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