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22 ミネリ:悪い予感

早朝から教会の扉がたたかれるときは良いことがない。

教会が開く時間になっても誰も来ないのに、開始時間より前にだれが一体ドアをたたくというのだろう。昨日、虫騒ぎがあったというし、良い話より悪い話としか思えない。

なんとなく予感を抱きながら、恐る恐るドアを開けようと教会の狭い講堂を抜ける。

「はいはい、ただいま…」

言い切る前に目に飛び込んできたものに、悪い予感は現実になったと思った。

念のためにチェーンをかけた状態で、ドアを開けたところ目の前に目の座った上司がいた。朝から何か悪いものでも食べたんだろうか。それとも変な薬でもきめてしまったのだろうか。

そうとしか思えないような迫力をのある顔を、ドアの隙間からのぞかせている。

「ミネリ、あけなさい」

「…司祭様」

「サンティレール卿だ」

「…卿」

本当に面倒くさい。

教会に来たっていうのに、司祭を名乗らないとは。

司祭として来てほしい。

「派遣された教会員に用がある。まだ寝てるのか」

「最近、体調が悪いみたいでできるだけ寝かせてあげたいというか…」

この妙な状態の上司を合わせることに、大変な抵抗がある。

「とにかく開けなさい」

「あ、え、まだ準備ができてないです。女性の部屋にいきなり行くなんてデリカシーのなさにもほどが…」

「今はそんなときじゃないんです。国家の危機です! 大変な時なんですよ」

え、国家の危機って、教会は国政とは関係がないという約束なんだから。

盛り上がっていく上司の一方、自分の気持ちがどんどん冷めていく。

とにかくこの明らかに冷静ではない上司の思うようにしてはいけない気がする。

「国家の危機って言いますけど、だったら教会員の方に何の用なんです?」

扉を抑えながら言う。

「あなたに言う必要はありません。私はあなたの上司なんですよ」

「普段仕事しないくせにこういうときだけ権力を振り回す人は上司とは言いません!」

ドアに体当たりして、一思いにドアを閉めた。

上司があまり体力タイプではないのはよく知っている。私ごときの力でドアの向こうで吹っ飛ばされているのがわかる。

カギをかけると、一息つく。

残念だったな。

にっと自分まで悪役のような気分でニヒルに笑う。

いやいや、よくない。

とりあえず教えないといけない。

どうせ教会はお客さん来ないのだからと、思ってはいけないことを考えつつ、小走りに講堂を抜ける。

行こうと思えば、教会の中を抜けなくても裏手にある自分たちの住まいに行くことはできるが、あのろくに教会に来やしない上司に抜け道がわかるとは思えない。万が一のために、上司が通りそうなところにカギをかけて回らなくては。

走って教会を出ると、小道を抜け、居住宅に着く。階段を盛大な音を立てて階段を上る。

起こしちゃうかもしれないけれど、今は起きてもらわないと。

黒雪の部屋のドアにたどり着く。

「黒雪! 黒雪! 起きてください」

音がしない。

ドアノブをまわし、中に入る。

「黒雪…」

誰もいなかった。

がらんとした部屋に開けられたままの窓から風が入ってくる。

本当についさっきまで生活していた感じのある部屋で、人だけがいない。背筋が凍えた。

「誘拐?!」

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