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人ならざる彼ら〜人生に疲れていた僕、死にかけた先で邪神たちのなんでも屋に就職することになりました〜  作者: 鮎ヶ瀬お米
一章:猫探しの依頼

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9/10

鈴木乱入

 足の裏の写真では、薄ピンクの肉球の隙間の毛もしっかり刈られていて、手入れが行き届いているのが良くわかる。


 二種類のおやつは、一つがドライフードで、何粒か入っていて丸や魚の形をしているもの。もう一つが、液状のものだった。


「ありがとうございます。では、最後にラテくんを見たのはいつですか?」

「ええと……昨日の朝、ですね。家から、仕事に行く私を送り出してくれたんです。でも、帰ったら……その。家中の、どこを探しても、いなくて」


 ついに、堪えきれなくなった涙が一筋こぼれる。しかしそのまま決壊することはなく、松本は「すみません」と呟いてそっとハンカチを取り出し、目もとを抑えた。


 湊は面食らってしまって、勢いで立ち上がりかける。しかし思いきれずに中腰で止まり、座りなおした。


 居た堪れなくなって視線を向けると、高橋は松本を、常と変わらぬ目で見ている。その視線は目に見えてあたたかいわけではないのに、不躾でもなかった。

 いやに静かな部屋に、涙をおさえる息遣いだけが響く。

 湊が高橋の白い首筋のあたりを意味もなく眺めて、段々視界がぼやけてきたとき。


「おや、お嬢さんを悲しませたのは……高橋君かな?」


 沈黙が破られた。

 奥のドアが開いて、鈴木がゆったりと姿を現したのだ。

 見計らったように出てきたが、松本がハンカチを握りしめているのをみて、彼は少しだけ歩調を早めた。


「分かって言ってるでしょう」


 高橋がぶすくれる。表情こそわかりにくいものの、声音が面白くなさそうだった。


 そんな雰囲気を感じ取って、松本がもう一度小さく謝る。すると、耳に届いたのか慌てて高橋が纏う空気を和らげた。


 鈴木が、彼女の腰掛けているソファの脇にしゃがみ込んで、眉根を下げる。松本をちらりと見てから、視線を逸らした。


「これはいけない、実に可憐だ……。潤んだ瞳もまた湖面のように美しい。……そう思わない? 湊君」

「えっ」

「アンタ、もうちょっとマトモだと思ってましたよ。こんときにもふざけないでください」


 うんうんと唸っていた鈴木は、高橋の言葉に顔を上げた。湊は二人を見比べる。

 困惑して視線を揺らがせている彼女に、鈴木がくすりと笑った。


「ああ、どうぞお気を遣いすぎず。彼も、貴女に口を尖らせているわけではありませんから。私もふざけてなどいないのだけどね」


 高橋が不満げに目を逸らすのも気にせず、人好きのする笑みを浮かべた。彼女はハンカチを握りしめた手を見つめる。


「ありがとう、ございます……。あの子がいなくなってから、何を話しても涙が溢れてしまって……」

「ふむ……。貴方の生活に、それだけ常に関わっていたのでしょうね。それだけ、思い出があるってことです。それはそれで素晴らしいとも言える」


 鈴木は同情とも違う思いやりをたたえた目で、机に置かれた貼り紙を見た。平面のラテも、鈴木を見つめ返している。

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