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ある大雨の降った日の翌朝、タカは起きると3人を探す。ケンとシュンは見当たらなかったので彼は寝ているジョージをたたき起こす。
「おい!ジョージ!起きろ、行くぞ!」
タカに起こされるジョージは眠そうな目で「なんだい、朝っぱらから」と文句を言う。
「おいおい、寝ぼけてるなよ。昨日あれだけ雨が降ったんだ。カード拾いに行くぞ。」とタカは答える。雨が降った後はカードを拾いやすい。これは雨でどこからかまだ拾われていないカードが流れてきたり、埋まっていたカードが露出したりするからである。これを知らない者はいない。
「でも、ゆっくりしたいじゃないか。雨の後で歩くと汚れるし、今の僕たちは食べ物を出すカードも持っているし。」とジョージは渋る。彼は建物の中が好きなのだ。さらに彼は「ケンとシュンは夜、雨が降ってすぐ拾いに行ったし、建物を開けるのはよくないよ。死神的にも、防犯的にも。」と続ける。
「死神はそもそもケンとシュンがいねぇとどうしようもないじゃねぇか。誰かが建物取ったってなら取りかえしゃいいだけだろ。」とタカは反論する。それでもジョージは引き下がらず口論を続ける。そのうちシュンとケンが帰ってくるとジョージは折れ、死神のことを考えて、二人は昼からカードを拾いに出かけることに決める。
「ああ、いい天気だ。行こうじゃないか。」と昼頃建物を出て口にするのはジョージ。外に出るのを散々渋っていたがいざ外に出ると昨日の雨が信じられないぐらい晴れていてジョージも気持ちよくなる。足元は水を含んだ土でぬかるんでいるがそれを気にせず歩いていく。2人でしばらく歩いていくがカードは見つからない。落ちているものはいつものようにやせこけた死体か、それに近い物しかない。「出遅れたか。」とタカはつぶやくと「まあ、こんな日もあるさ。」とジョージが返す。さらに「台風でもないならこんなものだよ。」と付け加える。台風の後は風に飛ばされてくるカードも多いのでたいていはカードが拾えるのだ。二人が当てもなく歩いているとあることにジョージが気が付く。
「ここ、僕が育った場所の近くだね。」とジョージがそれを口にする。
「行ってみるか?最近あのあたりに死神が出たからえぐいことになってると思うが。」とタカが答える。それに対しジョージは「あの辺りはもともとえぐいよ。特に暴力が盛んな場所だからね。知ってるだろ?」と答える。ジョージが育ったのは治安の悪い壁の外でも、もっとも彼らは壁の中の治安については何も知らないが、死神が現れる前は特に暴力的な場所であった。幼かったジョージは生まれ持った機転とその小さいからだを生かしそこを生き抜き死体をあさって生活していた。たいていの死体は衣服かそれに準ずる何かしか持っていないが運が良ければそれ以上のものにもありつける。ジョージもカードが揃いだすと同じ死体あさりや、暴力を信条とする大人の強者相手に無謀ともいえる戦いを挑みその日をしのぐことも少なくなくなっていった。ともあれ二人はそのエリアに向かうことを決める。道中、相変わらず何も見つけることはできなかったがそのエリアのある程度開けた場所に到着すると二人は顔をしかめる。
「死神はここで狩りをしていたわけだ。」とタカはつぶやく。彼らが見つけたのは死体の山。痛めつけられ傷だらけの老いた者達ばかりが山のように積み重なっている。死神の狩りの特徴である。
「気分が悪くなるね。僕たちの領域で好き勝手するなんて。」とジョージも呟く。
「ああ、結局、こいつらが、俺たちが弱いのが悪いのかもしれねぇが、気分がわりぃな。壁の中で縮こまってりゃいいものを、調子に乗りやがって。」とタカが答える。
「死神は強いけど、目立ちすぎたね。もうすぐ滅ぶ。」ジョージはタカに答えるとも、自分自身に言い聞かせるとも取れない口調でつぶやくと瞳の奥底を燃やす。彼らも自分たちがここでは強者で奪う側の者であることもわかっている。ここの住民の間でも結局カードを、時には命を奪い合うことも少なくないこともわかっている。それでも命を奪い、ただでさえ足りていない資源を無秩序に、一方的に奪っていく死神に、それをむさぼっている壁の中の人間に憤りを覚えている。結局その日、2人はカードを拾うことなく帰宅する。




