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ひび割れ地表が露出しているかつては道路と呼ばれたであろう道をタカは走って進んでいく。道沿いには素人が木やがらくたで作った建物と呼べないような住居がひしめき合っている。しばらくタカが走ったところで彼の耳に男の怒ったような叫び声が入る。
「壁の中のクズオフィサーどもが!捕まえてみやがれ!」
タカはその声がシュンの物だと確信するとその方角へ向かう。するとすぐに背中に翼のような機械と数人の追手を背負い空を飛んでいる小柄な男が目に入る。タカは空を飛ぶシュンに大きな声で語り掛ける。
「シュン!パーティーには誘えよ!メインディッシュは空飛ぶチキンか?」
それに対しシュンと呼ばれた男は速度を落とし、地上に近づきながら答える。
「馬鹿言え、タカ!俺の華麗な飛行ショーで余興は終わりさ!壁の中の豚どもをいただこうじゃねぇか。」
そう言うと地面に降りたシュンは追手のほうを向きカードを構える。そんなシュンにタカは「豚は3人前か。どう調理する?」と尋ねる。それに対し「俺が誘い込んで一匹ずつやる。他は調理場に入り込まないように調教してやれ。」とシュンが答える。それと同時にシュンのカードが長い筒と大きなタンクを持つ機械に変化する。
「“K-メイカー”、ぶち抜きな!」
シュンがそう叫ぶと機械はその長い筒から野球ボールを高速で追手めがけて発射する。直撃した追手は分厚い防弾チョッキのような服を着ているにもかかわらず痛がり、足を止める。あえてシュンが狙っていなかった一人のオフィサー、周りのオフィサーより一回り年齢が高く他に指示を出している、が二人に十分近づくと「捕まえたいなら勝ってみやがれ。」とシュンが挑発、それに乗るようにオフィサーも「壁外のクズが!調子に乗りやがって!」と叫びアーティファクトによるゲームを開始する。その間にタカもカードを発動。呼び出したのは“チャッカマンOOO”、両腕五本の指と手のひらに穴が開いているロボットである。本来日常の様々な場面に必要になるサイズの火を手に空いた穴から出すロボットだが、故障しているので出ない。代わりに口から火炎放射器のような勢いで炎を出す。「レアカードだぜ。近づいてみやがれ。」とタカはつぶやきその炎でほかの追手をけん制する。オフィサーもカードを発動して何とか近づこうとするものの、まったくうまくいきそうにない。しばらくは面白がりながらオフィサーをけん制していた彼だが、すぐに飽きる。退屈になったタカは慎重にチャッカマンOOOの肩を組みその炎でタバコの火をつけるとシュンのゲームの観戦を始める。彼は現在お互い一勝一敗であること、そしてすぐに三戦目の決着がつくところであると確認する。
「ぶちのめせ“スパーエリート”!これでリーチだぜクズオフィサーよ!」
そう叫んだのはシュン。仕上がった体の人間のようにも見える機械がオフィサーの機械を破壊しシュンが三戦目に勝利。これで二勝一敗。「余裕だぜ。」と言わんばかりの表情でシュンは次のカードをスタンバイする。後のないオフィサーは苦い顔をし、叫びながら次のカードを繰り出す。
「人間である私が、下等な壁外生物に負けるわけがないだろう!来い!“複製警察犬”!」
現れたのは精悍な犬。数字は4である。対してシュンの前に現れたのは翼のような背負える機械。逃走時に使用していたものである。オフィサーはその数字が1であることを確認すると少し余裕を取り戻し「やはり壁外生物はあまり大したカードを持っていないようだな。それで私に2勝もできたことは誉めてやろう。いや、運がよかっただけか。」と煽る。それに対しシュンはそれまで余裕そうだった顔をしかめ、「黙って負けてろ。クズの下っ端が俺の翼をけなしやがって。」と返す。シュンの繰り出したカードは彼の相棒であり切り札。思いの深いカードに対する侮辱はここでは最も嫌われる。
「脱出しろ!“改造ジェットパック”!」
シュンが嫌な思いをしながらもゲームは進んでいく。彼がそう叫ぶと翼の機械は彼の手札に戻り、代わりにほかの手札のカードがゲームのフィールドへ飛び出していく。「な、なにが起こっている!?」と困惑するオフィサーにシュンが面倒くさそうに答える。
「“改造ジェットパック”はゲーム中に一回だけ相手を見てから手札のほかのカードと交換できる。」
心の中でシュンはさらに「しかも相手が勝てそうにない相手なら引き分けにできる第二の能力もある。最強のカードだ。」と付け加える。シュンの言葉を聞いたオフィサーは納得し、彼が代わりに繰り出した、こぎれいな老婆を模した機械のカード、その数字が1だということを確認すると、「強力な能力だが再び1のカードを出しては意味がないではないか。これだから人間未満は。」と言い戦闘が始まる。襲い掛かろうとするオフィサーの複製警察犬に対し老婆の機械は「しっ、しっ。」と追い払うように手を振ると数字の大きいはずの犬がおびえるように逃げていき敗北する。
「何が起こっている!」
狼狽するオフィサーに対しシュンが説明する。。
「俺の“信心深きメイドロボ”は不吉な数字を寄せ付けない。」
そうしてゲームの決着がつく。
「じゃあ、持ってるカード全部をもらうぜ」とシュンが言うと負けたオフィサーの体から光の玉が多数飛び出しそれがすべてシュンの体に入っていく。カードを奪われたオフィサーは先ほどまでの威勢は消え失せ、まるでこの世の終わりを見たかのような表情で崩れ落ちる。
「4持ってたな。機械じゃないし、悪くねぇな。」とタカが敗者を見もしないで言う。
「まあ、ラッキーだったな。」とシュンもあまり気持ちよくなさそうに返す。彼はいまだにオフィサーにカードをけなされたことを忘れていない。
チャッカマンOOOにけん制されながらも仲間の一人が破れるのを見ていたほかのオフィサーたちは動揺する。「まさか、奴ら、“壁外の悪魔達”じゃ、」と一人がつぶやく。そのつぶやきを聞いたほかのオフィサーたちにしばしの静寂が訪れるとまたほかの一人が、「撤退、撤退だ!」と叫び逃げていく。
「追いかけるか?」とタカはシュンに問う。
「いや、たぶん俺が倒したやつが一番偉かったぜ。どうせ倒しても1とか2のカードしか持ってない雑魚だろ。」。シュンは返す。カードはほかの文明の遺産よりは多く残っていて手に入りやすいが、それでも簡単には見つからないのだ。ゲームができる枚数持っているだけでも珍しい。さらにこの地域では、壁の外の住人はオフィサーに力づくでカードを奪われることが多いのでタカ、ジョージ、ケン、シュンの4人はゲームができるほどカードを持ち、さらに強力なカードを所有しているので異常である。故にオフィサーからは“壁外の悪魔達”と呼ばれ恐れられている。
「奴ら、俺たちのことを“壁外の悪魔”とか言ったか?」、とタカが問う。彼らは自分たちがそう呼ばれていることをたった今知ったのだ。
「そう聞こえたな。どっちが悪魔だよ。」シュンが返し、さらに付け加える。「食い物を作れるカードまでこっちから没収しやがって。飢えて死ねってか?」
「しかももう5年前からか?“死神”まで寄こしやがる。よく人のことを悪魔と言えたもんだよな。とさらに加えたのはタカ。二人はそんなことを話しながらゆっくり帰路につく。




