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まだ壁外に死神と呼ばれる徴収官が現れていないころ、壁外のある少年が狭いテントのようなものに詰め込まれた3人で暮らしていた。彼以外の2人は青年と言える年の男、3人が横になると足の踏み場もなくなるテントだが彼らはまだ良い方。他の力なき人間は同じ大きさのテントに6人、7人と詰め込まれていた。その夜も他の日と同じように青年2人が出かける準備をする。

「イルカ、カラス。今日も仕事か?大変だな。」

口を開いたのは少年。そんな彼に対し二人は親しみを持った声色でその言葉に反応する。

「ああ、どっかのガキがさっさと殺しを覚えてくれれば少しは休めるんだがな。」と言うのはイルカと呼ばれた男。

「やめなよ。そいつはボスのお気に入りさ。かわいい顔をしているばっかりにほかの仕事があるのさ。そいつも大変だよ。」とそれに返すのはカラスと呼ばれた男。

「ああ、“ダーツマン”で奴をご機嫌にさせるのはとっても大変さ。」と少年は彼らの軽口に軽口で返す。この3人はそれぞれ3の数字を持つカードを1枚ずつ持っている。彼らはボスに拾われたときそこそこ強力なカードを所有していたためほかの人間よりは若干良い待遇なのである。カラスとイルカの仕事は殺し、彼らの持っているカードは1枚だけなのでゲームはできないが3のカードは現実世界でも使える。一方少年の仕事はボスに趣味のダーツをさせるためその専用のカードであるダーツマンを彼に使わせることである。ボスと言っても彼らは自分の所属している組織が何であるのかも分かっておらず、ただ食料にありつくため、懲罰を避けるためにボスの言うとおりにしているだけである。2人は主に夜、ボスに言われたターゲットを殺しに行き、少年はボスに呼ばれたタイミングでテントを開ける。1日顔を合わせない時もあるが、同じ屋根の下で暮らす者同士仲良くしていた。

そんな日々を過ごしていたある日、少年はボスに呼ばれることもなく一人でテントの中でまだ日が高く昇っている時からゆっくりしていた。そんな時、カラスとイルカが帰ってくる。

「よお、ガキ。今晩がお前のデビューだ。用意しておけ。」と帰ってくるなりカラスが言う。

「相手さん、強いらしいよ。でも酒を造るカードを持っているって聞いてボスもご執心さ。初仕事が大変そうで、同情するよ。」とイルカが続ける。

少年はこの時、何を思うでもなくいつも通り、言われたとおりにやって食料にありつこうと考えている。特に緊張することもなく夜を迎えると彼は2人に連れられターゲットが潜んでいるという雑に作られた住居に向かう。

「じゃあ、俺が適当なタイミングで陽動しながら突っ込むから、適当に用意しておけ。タカ、お前はカラスについていけ。」とイルカが小さな声で言う。「タカ?」と少年が聞くと「君のコードネームだ。ついてきな。」とカラスが言い住居の裏に回る。

「さあ、始めようか。来い!ロックハート・メタルボディ!」とイルカが叫び奇抜なギターを持ったスタイリッシュな機械が爆音をかき鳴らしながら現れる。その音でターゲットの潜む住居をきしませながら機械とイルカはその扉を蹴り飛ばす。その音に隠れるようにカラスと少年は住居の裏をこっそり壊して侵入していく。

「死にたくなきゃ酒のカードを出しやがれ!」とイルカが叫ぶ。

「馬鹿が!死んでカードを渡すのはお前だ!」と襲撃された男は叫ぶ。「来い!チャッカマンOOO!」とさらに続け彼はカードを呼び出す。不具合のある炎を吹くロボットは機械のミュージシャンに炎をはこうとするが、その方向はその顔めがけて飛んできたダーツとトランプによりそらされる。

「新手か!俺のカードが増えるだけだ!」と襲撃された男が叫ぶ。3人は善戦するもののターゲットを押し切ることができない。そしてついにターゲットのフェイント、炎を噴くロボットはロックハート・メタルボディに火を噴くそぶりをするがターゲットがその顔の方向を突然変えさせ飛んできたトランプごとカラスの機械を焼き尽くす。そのままカラスに向かい炎を吐き彼が火だるまになって苦しみだす。そのまま勢いに乗ったターゲットはチャッカマンOOOをギターを持つ機械に突撃させ、それを破壊するとイルカを丸焼きにする。しかし少年はターゲットからその強力な機械が離れたすきに大胆にも一気に近づくとダーツマンにその男を羽交い絞めにさせ、のど元に鋭く尖ったダーツを突き付ける。火だるまになりながらその様子を見たイルカとカラスは、満足そうに息絶え、燃えない材質でできているカードに戻った機械が二人の死体の手元に残る。

「機械をカードに戻せ、酒の機械を出せ。」と少年は言う。ターゲットとしては自分を拘束している機械を焼こうとするのならば自分事燃やさなければならない。少年を狙うのならばダーツが自分ののどに穴をあけることを覚悟しなければならない。どうにも手詰まりだと感じた彼は言う通りにし、命乞いにすべてをかけることにする。

「言うとおりにする、するから助けてくれ!悪かった!仲間を殺してしまったのも、悪かった!だから、殺さないでくれ!」

彼は今まで自分がされてきた命乞いを思い出しながらそういう。少年はその言葉を別に聞いてはいない。仲の良かった2人を殺された恨み、ボスの言うとおりにするべきだという植え付けられた義務感そういったものからくる彼を殺してしまおうという少年の行動を止めているのは人を殺すことに対して忌避感である。少年の理性はきれいごとだけでは生きられない、こいつを殺さなければ2人はなんのために死んだんだ、ボスの言うことを聞かないで明日からどう生きていくつもりなのかと語り掛ける。酒を造るアルケミストと2人を殺したチャッカマンOOOをターゲットから受け取りしばらく彼は考える。

「悪いな、二人とも。俺は俺の生きたいように生きることにする。」

決断を下した彼にもはや2人に対する罪悪感はない。自分の進む道を決めたタカは2人のカードを拾うと、自分の心に従うのが正しい生き方なんだ、誰にも自分の進む道に文句は言わせないといわないばかりの瞳でボスがいる方向と反対に駆け出していく。飲料は手にいれたばかりのアルケミストで何とかなるものの彼に食料を得るためのカードはない。それも彼には関係ない。行き倒れて死のうが自分を貫くことのほうに価値がある、そう考えたタカは足を止めずに進んでいく。


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