7.
ホミ「……。」
アサヒ「いや、話しかけろよ。」
ホミ「うっさい。話しかけれるなら、とっくに話しかけてるわよ!」
ヤオ「ねぇ、イリガ、行っちゃったよ。」
イリガの後ろをバレないようについていく三人。
アサヒ「尾行っちゅうより、ストーカーだな。」
ホミ「あー。うっさい!」
ヤオ「そう言ってる間に見えなくなったね。」
ホミ「もー。アサヒのせいで。」
アサヒ「オレのせいか?」
ホミのイリガへの告白大作戦。
その一歩を踏み出せず、ホミはただ後ろからバレないように追いかけることしかできていない。
ちなみにサポーターはアサヒとヤオ。
ヤオ「合わないと付き合うなんて夢のまた夢だよ。」
ホミ「知ってる。けど、いざって時に、胸がドキドキして近づけなくなっちゃうの!」
アサヒ「じゃあさ、こんなのはどうだ?」
ホミ「何?」
アサヒ「ラブレターだ。」
◆
数日後。
ホミ「書いたよ……。」
アサヒ「じゃあ、後は入れるだけだな。」
ホミ「どこに?」
アサヒ「下駄箱に決まってんだろ。」
ヤオ「めっちゃベタ。」
ホミは学校へと入っていき、そして長い時間を経て戻ってきた。
アサヒ「おっ、入れてきたか。」
ホミ「やっぱ入れられなかった。」
アサヒ「なんでだよ!」
ホミ「もしフラれたらとか、もし付き合ったらとか色々と考えちゃってなんだかんだ入れられなくなっちゃうの。それで時間だけが溶けてくの。そんなの当たり前のことでしょ。」
アサヒ「はぁ? もどかしすぎんだろ。」
ホミ「どうしたらいいんだろう。」
アサヒ「いや、こっちが聞きてぇよ。告白できねぇんなら、どうすりゃ、いいんだよ。アンタは。」
ホミ「本当はしたいよ。けど、できないの。仕方なくやらなきゃいけないなら、やれるかも知れないけど……、自分から告白するのは恥ずかしすぎてできないの。」
ヤオ「ハプニングで告白できたら良さそうかな?」
ホミ「それなぁ!」
その時、アサヒが閃いた。
アサヒ「オレに一つ、策があるぜ。」
ホミ「策……?」
アサヒ「その名もドッキリばったり大作戦だ。」
◆
朝日が優しく照らす。
土曜日の朝はとても落ち着いていた。
ホミ「おはよう。で、作戦って? ちゃんと朝ごはん抜いてきたわよ。」
アサヒ「じゃあ、これが朝ごはんだ。」
アサヒが持つ皿の上にはトーストされたパンが置かれている。その上にあるラップが剥がされた。
ヤオ「クルミにチョコ、蜂蜜、リンゴと好きな味があるよ。」
ホミ「じゃあ、リンゴで。」
ヤオがリンゴジャムのビンを開けた。パンにジャムがぬられた。
アサヒ「朝、パンを咥えた女の子と角の先にいる男の子がぶつかって恋に落ちる。王道の方法だろ?」
ホミ「漫画でしか見ない……、というか昔の漫画の方法ね……。成功するわけないじゃない。まぁ、やってみるけど。」
ヤオ「……来るよ!」
コンクリートの垣の壁に隠れている向こう側。
ヤオ「今だよ!」
ホミは慌てている素振りで進み、その先にいたイリガとぶつかりそうになった。
イリガ「おっ、と危ない。」
ギリギリのところでイリガが後ろに引いて避けた。
勢い余って転げそうになるホミ。
イリガ「大丈夫かい?」
バランスを崩したホミを支えるイリガ。そのまま体をまっすぐにさせる。
イリガ「走りながら食べるのは危ないよ。食べるならその場に立って食べよう。ね!」
ホミ「はい!」
ホミはとびっきりの笑顔で、道の端でパンを食べていく。
その間にイリガは塾へと行ってしまった。
アサヒ「何やってんだよ。あのバカ。」
その後も色々と作戦を行ったが、全て失敗に終わった。
そして、ファミレスにて三人でジュースとデザートを頼んで座った。
アサヒ「やる気なさすぎんだろ。手伝ってやったるこっちの身にもなれよ。」
ホミ「ぜーんぶ失敗してんじゃん。」
アサヒ「それ、ぜんぶアンタが原因だろ。」
ホミ「あー、うっさい。うっさい。アサヒがまともな作戦を持ってこないのが悪いんでしょ!」
アサヒ「なんなんだ。コイツ。」
なぜかそこで睨み合いが始まる。
ホミ「はぁ? 馬鹿なのはそっちでしょ。馬鹿じゃなきゃ考えられない作戦を用意したアサヒが悪い!」
アサヒ「こっちは好意で持ってきてやってんのに。なんちゅう態度だ。怒れない町にぶち込みてぇ!」
ホミとアサヒの喧嘩が始まってしまった。
ヤオ「マジかぁ。」
ワーワーギャーギャー。店の人も周りの人も困っている。
そこに一人の少年がやってきた。
サカエ「はい。二人とも。そこまでです。」
二人はサカエの方を見た。
サカエ「店の中で店や周りの人の迷惑になるようなことは良いことでしょうか。悪いことでしょうか。……悪いことですよね?」
ホミ「だって、アサヒが——」
サカエ「『だって』何でしょう。それでホミさんのやったことが正しくなるのですか? 言い訳をついて反省しないつもりですか?」
ホミ「そんな訳じゃないけど。」
サカエ「どんな理由があっても悪いことは悪い。駄目なものは駄目。まずは反省からです。どんな理由でも、やってしまったことには責任を持たないといけませんからね。」
ホミ「はぁい。」
アサヒ「はっ。言われてやんの。」
サカエ「もちろん、アサヒくんもですよ。」
アサヒ「ふぁっ!」
サカエに連れられて、二人は周りの人と店員さんに頭を下げまくった。
◆
ホミ「結局ダメなのかも……。」
アサヒ「なぁ、一ついいか?」
ホミ「なに?」
アサヒ「逃げるのは簡単で選びたくなるのも分かるけどよ。ずっと逃げてたら、何にも得られねぇぞ。」
ホミ「だよね。ダメ元で話しかけてみる。」
その日の夕方頃。
ホミ「ねぇ、一緒に帰らない?」
イリガ「一緒に? いいよ。」
ホミとイリガが仲良く話しながら帰宅した。
ホミは後日、そのことを『見つけ屋』で報告した。
アサヒ「結局、告白はしてねぇのかよ。」
ホミ「仕方ないでしょ。まずは一緒に帰る。それだけでも頑張った方なんだから。」
アサヒ「まっ、勝手に頑張ってくれ。もう、オレを巻き込むなよ。」
ホミ「まぁ、いいわ。私には秘密兵器があるし。」
アサヒ「秘密兵器?」
ホミ「えぇ。じつは使えば永遠に結ばれることができる不思議なアイテムを持ってるの。羨ましいでしょ。」
アサヒ「いや、ぜんぜん。」
ホミのテンションは高めだった。
その姿を見て、サカエはにこやかに微笑んだ。
◆◆◆
市長(こればかりは仕方ないだろう。子育て支援金の削減。望んでやるわけなかろう。)
市長(どうしても足りないのだよ。最も成果が見えにくいところから削るしかないのだ。)
市長(異能力カード関連さえなければ……。なんて言っても何にもならない。市民よ、受け入れてくれ。)
サカエのいるN市とはまた違うA県N市——通称、N大都市。
そこでの政策が波紋をよんだ。
異次元の少子化対策。
その政策に真っ向から反対するような真逆の政策を打ち出したからだ。
N大都市の市議庁舎の近くで連日デモが行われていく。
市長「くそっ。政策決定の日はさらにデモが増える。デモ隊が邪魔で中に入れない。どうしたらいいんだ。」
その時、ふとN市長はとある人物と電話をした。そして、淡々と話していく。
市長「なるほどな。このデモ隊が多く蔓延る状況から、中に入れるルートを見つけ出してくれる探偵事務所があるんだな。」
市長「なるほど。『見つけ屋』サカエという名前なのか。ありがとう。助かった。——フシミ。」




