5.
裏社会の男「面白い話を聞かせてやろう。このN市のどこかに『不死身になれる道具』があるんだとよ。」
アサヒ「……。不死身になれる道具? それ、オレ、知ってっかも。」
裏社会の男「何だって。」
アサヒ「ソイツを持ってる奴を知ってる。確かN小学校の小学生だな。」
裏社会の男「そうなのか。じゃあ、どんな手を使っても手に入れるしかないな。」
アサヒ「やんのか……。じゃあ、オレからも一つ頼み事聞いてくんない?」
裏社会の男「ん? なんだ?」
アサヒ「捕まりはしねぇけどよぉ。警察の手の者が邪魔しに来てんだ。そのせいでターゲットへの負荷が弱まっちまってる。だから、ターゲットの近くで隠れきるために、透明人間になりたくてなっ。」
◆◆◆
クラス「先生さよーなら。また、明日も元気であいましょう!」
ミズキ「今日もフジ先生いないね。どうしちゃったんだろう。」
アカイ「心配だよなー。」
二人が正門へと向かうと、ホミと会った。
ミズキ「あっ、お姉ちゃん!」
手を軽く振ると、軽く振り返した。
ミズキたちがしばらく歩いたころ——
闇バイターA「こいつだ。」
いかにも怪しい黒ずくめのもの達がホミを無理やり拐って車の中へと押し込んだ。
ミズキは悲鳴を上げ、アカイは立ち向かいにいくも車は虚しく走り去ってしまう。
何があったのか完全に理解する前に、すべてのことが終わってしまったみたいだ。
◆
入り口近くにあるシャシャンボの木に水をあげるサカエ。
そこに凄まじい形相をしたミズキとアカイがおとずれた。二人は涙と汗で顔が埋っていた。
ミズキ「お姉ちゃんが。さらわれちゃった!」
サカエ「どういうことです?」
サカエは二人から事情を聞いた。
外はパトカーの音が鳴り響いている。
サカエはスマホを取り出した。
サカエ「もしもし。ニシオさん。大変な事件が起きました。」
ニシオ『誘拐事件だろ? 俺もその件を追っている。が、カードの効果で犯人グループが消えちまった。今、探し途中だ。何か分かったら連絡を入れとく。』
サカエ「分かりました。こちらも何か分かり次第連絡します。」
サカエはすぐに屋上にのぼった。
人並み以上の視力で町の様子を見渡しながら、怪しい箇所を探していった。
サカエ(探す範囲が広すぎる……。)
いっこうに見つからない。
そんな時、見つけ屋に新たな依頼主がきた。例の誘拐事件について、だった。
ホミ「お願い! すぐに助けてあげて!」
連れ去られたはずのホミがそこにいた。
サカエ「どういう……ことです?」
◆
使われなくなった路地。
から、さらに歩いた場所にある空き巣となっている元公民館。
そこに投げ捨てられる二人の小学生。
闇バイターB「こいつらマジで……。抵抗するせいで疲れちまった。」
闇バイターC「大人に適うわけねぇだろ。」
闇バイターA「何だっていいだろ。目的は達成したんだからな。」
大の大人に囲まれたホミとイリガ。
イリガが彼女の耳元で「ぼくが気を引く、今すぐ逃げろ」と小声で言った。
イリガ「ぼくの持つカードの能力は透明化。一時間かつ百歩までなら透明になれる。」
その場からホミが消えた。
否——透明になったホミはイリガに言われるがまま、その場から逃げていった。
そして、すぐに『見つけ屋サカエ』へと向かった。
ホミ「場所はわたしが知ってる。」
ミズキ「ミズキもついてく。」
アカイ「オレも!」
サカエ「駄目です。二人はここでヤオとお留守番しててください。」
ヤオ「先に言っとく。こそこそ抜け出すなんてことはさせないからっ!」
サカエ「では、ホミさん。場所を教えてください。」
サカエはスマホを手に取った。そして、ニシオに向けて連絡をした。
そして、サカエ、ホミとニシオが同時に使われなくなった元公民館へと辿りついた。
ニシオ「ここから先は危険な匂いがするねぇ。ってことで、嬢ちゃんはここまでだ。」
ニシオと共にきた数人の警察官に優しく行く手を遮られるホミ。その姿を後にして、二人は建物へと向かった。
誰もいない、見えない道。
サカエはニシオに聞こえるようにカードを取り出して口を開いた。
サカエ「サシブカードの効果で五感が超強化される。例えば、触覚は風の機微すら感じとる。」
さらに歩く。
透明人間(こっちは捕虜に無理やり命じて透明人間になるようにさせたんだ。見えない攻撃に死ぬがいいぞ。)
サカエ(何かが近づく時、その何かが風を押し出してぼくの皮膚感覚に押し出す感覚を与える。)
スッ。サカエは見えない攻撃を避けた。
透明人間A「ちっ。はずれた。」
ニシオ(物が動く時の矢印が俺には見えるんだよなぁ。いくら透明になったところで意味ねぇんだよな。……これが。)
ニシオも見えないはずの攻撃を軽々と避けた。
ニシオ「さて。オレの能力は矢印操作。動くモノに対して、その動きを矢印として可視化し——」
その時、何かが吹き飛ばされて壁にぶつかる音がした。
闇バイターB「何が起きたんだ……。」
闇バイターC(痛すぎてもう動けない。)
ニシオ「まっ、能力カード初心者って感じだな。戦いの土俵にすら立っちゃいねぇ。」
敵は複数人いる透明人間。それなのにサカエもニシオも怖気付くことはなかった。
ニシオ「続けるぜ……。オレはその矢印を自由に操作できる。ちなみに、速度も変えられるぜ。まっ、最高速はチャリレベルだから安心してくれや。」
透明人間が二人壁に叩きつけられた。
透明人間(くそ。くらえっ!)
ニシオ「だーかーらー。オレちゃんには、見えちゃってんのよ。」
近づいてくる透明人間を吹き飛ばした。
闇バイターA「おい。近づいたらどうなるか分かるよな。」
透明人間が姿を現した。そこにいる男は、イリガをしっかりと動けないように構えて、頭に銃を突きつけている。
闇バイターA(へっ。もしもの時に一丁だけ貰っておいて良かったぜ。)
ニシオ「銃刀法違反だな。ってか、なんで持ってるんだよ。」
闇バイターA「下手に動くなよ。動けばコイツの頭は木っ端微塵だぁ。」
イリガの命が危ない。
サカエは下手に動けなくなった。
ニシオ「オマエさん……。撃たれる覚悟はできてるか?」
闇バイターA「何を言ってる? 少しでも手を動かせば……。コイツがどうなってもいいのか?」
ニシオ「ひとまず銃には消えてもらおうか。」
パッ。と、その男の持っていた銃が消えた。
闇バイターA「はぁ? 何が起きたんだよ。」
今度はパッ、とニシオの姿が消えた。
闇バイターA「あいつはどこいった?」
ニシオ「オレなら後ろにいるよ。」
犯人の男の真後ろで銃を構えているニシオ。
ニシオ「オマエさんの負けだ。」
すぐさまイリガから犯人を引き離して銃を向け放った。
ニシオ「安心しろ。テーザー銃だ。電気ショックで死なないことだけ祈っとけ。」
ビリビリになる攻撃で、その犯人は痺れて動けなくなった。
イリガの安全が確保できた警察がその場へと入り込んでいく。
そこにいた犯人たちは全員、警察に逮捕された。
ホミ「良かった……。良かった……。」
ホミはすぐにイリガの元へと走って、泣きついた。
イリガ「きみが無事で良かったよ。」
イリガは涙を見せず、ポケットからハンカチを取り出した。
ホミ「泣きすぎだよ。これでも使うかい?」
そして、イリガはホミにハンカチを渡した。
ニシオ「こういう奴らは法の下で現行犯逮捕できるからいい。今追ってる『最強の暗殺者』は、尻尾をつかんだところで逮捕ができねぇ。」
ニシオはココアシガレットを出して噛み砕いた。
ニシオ「無限トラウマで自死させる。捕まえるに値する証拠はねぇよなぁ……。ったく、どうやれば捕まえられるんだよってな。」
ニシオは空に向かってため息を吐いた。
サカエ(暴力を一切使わず、使う武器もカードという世間からしたら武器とは思えない物。何より殺し屋のターゲット……死因は自殺になる。それでいて、そのターゲットとはたった少し会話した程度。普通なら原因の槍玉にすら上がらない。故に——)
ニシオ「『最強の暗殺者』か……。フジの精神はもう耐えきれなくなってる。時間がねぇ。くそっ。どうすりゃいいんだ?」
サカエ「一か八か……。少し試してみます。」
ニシオ「何か手があるのか?」
サカエ「……。一つだけ、突拍子もないことですが——」
◆
アサヒは公園のバスケットゴールに向かってバスケットボールを投げていた。
アサヒ(ったく、透明人間、手に入れられてねぇじゃん。そもそも手に入れられず、騒ぎだけ起こすだけ起こしたせいで、警戒モードに入られた。もう下手に誘拐なんてできやしねぇぞ。)
ボールをバウンドさせて、そして構える。
シュッ。高く放った。
アサヒ(透明人間、手に入れられねぇじゃん。そもそも不死身のアイテムとやらも手に入れられねぇじゃん。なにやってんだ? ったく。)
ボールがゴールのオレンジ色の縁にぶつかり、横へと弾かれた。バウンドしながら転がっていく。
ボールがコロコロと転がった先に立つ一人の少年。
サカエ「こんにちは——」
サカエは転がっていたバスケットボールを拾った。
サカエとアサヒがお互いに向き合っていた。




