4.
ニシオ「その飲み物の中には睡眠剤が入ってる。飲めば意識を失う。」
茶色が似合うイケおじのニシオがフジに飲み物を飲ませた。
フジ(……眠くなってきたかも。)
バタン。フジはその場で気絶するように倒れた。持っていたコップが床に落ちて割れた。
ニシオ「たばこ……は、あまり体によくないもんな。ココアシガレットで我慢するか。」
ニシオはココアシガレットを取り出して口に咥えた。
ニシオ「一大事だな、こりゃあ。ちょいと、おじさんも重い腰を動かすとするかぁ。」
おじさんがスマホを取り出した。
ニシオ「おー。もしもし。色は? おっし、じゃあ、『白01』に告ぐ。重大案件だ。今夜八時、例の場所集合で。」
◆
誰もいない夜の学校。
その屋上に集まった五人。
ニシオ「集まったか……。」
サカエ「はい。」
サシブカード関連に対して奔走する公安警察のニシオ。そして、その協力者——。彼らは日常の裏で秘密裏に動いている。
サカエ「何が起きたんですか?」
ニシオ「『白05』が命を狙われていたのは分かるな? ついに、暗殺者が『白05』に接触した。」
その場で気絶したように倒れているフジもといコードネーム『白05』。
サカエ「生きて……います……よね?」
ニシオ「ああ、生きてはいるが、状況は最悪だ。いつ自殺をはかってもおかしくない状況にいる。」
ヤオ「一体どういうこと?」
ニシオ「『白05』に接触してきたのは『最強の暗殺者』と名高いアサヒという男だ。」
最強——。その漢字二文字が唾を飲ませる。
ニシオ「奴はカードの能力を『白05』に発動した。効果は意識がある間、常に嫌なことの映像が流れていくというものだ。」
うっ。想像しただけで、そんな言葉が口からこぼれていた。
サカエ「それは……最悪すぎますね。」
ニシオ「ああ。今は睡眠剤で意識を失わせているが、何度も服用すれば効果は薄くなる。無限のトラウマ映像に我慢できなくなれば、自決を選びかねない。」
その場でよこたわるフジの元にヤオが近づいた。
ニシオ「最重要事項だ。すぐに暗殺者アサヒを見つけ出し、能力を解除させることだ。ひとまず見つけ次第、オレに連絡をくれ。」
ヤオ「けど、どこにいるかは分からなくない?」
サカエ「いや、カードの効果には限界があります。少なくともフジ先生に能力がかかっている間は、N市の中か隣町の中にいるはず。」
ヤオ「なるほど。能力の範囲は隣町を出るぐらい広くはないってことだ。」
サカエ「ぼくの予想では、N市内にいると思っています。」
ニシオ「それはオレも同じ意見だ。その暗殺者アサヒってやらの外見特徴を教える。他の特徴については分かり次第、共有していく。」
ニシオはその場にいたサカエ、ヤオ、ニシオの恋人サクラに『最強の暗殺者』アサヒについての情報を共有した。
◆◆◆
ひっそりとしたカフェ。
フシミとアサヒに向かって一人の男性が頭を下げていた。
男「どうか、うちの子二人を解放してください。何でもしますから。」
フシミは「顔を上げてください」と言って、ゆっくりとコーヒーを啜った。
フシミ「少し勘違いをされているようで……。」
男「勘違い?」
フシミ「まずあなたの息子さんは私に懇願してきたので、そのお願いを叶えて差し上げただけです。変身後は自らの意思で変身解除ができます。つまるところ、今の現状は息子さんの意思によるものなのです。」
男「そんな……。ロボットになったんだから、意思も何もあるわけないじゃないか。」
狼狽えた表情を見せる男。その一方で、フシミたちの表情は変わらない。
フシミ「娘さんに関しては、依頼したのは私ではありません。下手な公言は私や貴方の身に危険が及ぶ。ですので、詳しくは申し上げられません。」
アサヒはその娘——フジの写真をチラリと見て、写真をしまった。
アサヒ「知らない方がいいことなんていっぱいあんだろ。まっ、これ以上は諦めな!」
男「ですが……。例え危険になろうとも私は二人を助けたい。」
みっともない涙を流す男にフシミは冷たい視線を送った。
フシミ「二人とも夜郎自大でした。自らの立場を分かっていらっしゃらない。それなのに、首を突っ込んではいけない所に首を突っ込む。それで世に出してはいけない情報を掴んだ貴方の息子さんは暗殺のターゲットにされ、その後、私に縋りついてきました。」
店がコンセプトとして置いている小さな井戸の中から蛙が飛び出してきた。
そして、そのまま道路に向かって進んでいき、車に轢かれてしまった。その蛙が大海を知ることはなかった。
フシミ「あの方にとって、大事な情報を持つ息子さんは生かしてはおきたくない存在。機械化していて、かつ手元に置いていたからこそ、壊すことはなかったのですが……、貴方の娘さんはそんなことお構い無しに息子さんを盗んでいきました。それがあの方の癪に障ったのです。」
フシミは再びコーヒーを口に入れた。
フシミ「もし娘さんを助けたければ、速やかに我々に息子さんを渡してください。」
男「それはできない。息子も大事な我が子だから。」
フシミは置かれたコーヒーを飲み終えた。
ゆっくりとカップを皿に置いた。
フシミ「交渉決裂ですね。いきましょうか、アサヒさん。」
アサヒ「ったく、つまんねぇ時間だな。」
男「待ってくれ。お願いだ。」
フシミはレシートを持ってレジで会計をパパッと終わらせ、店の外へと出た。
男「まってください。もう一度チャンスをくれませんか!」
その二人を男が追いかける。
アサヒ「なぁ、アイツうぜぇんだけど。殺していい?」
フシミ「どうぞご自由に。私は極力、責任は負いたくありませんから、『はい』とも『いいえ』とも言いません。」
アサヒ「はっ。オレの暗殺で警察に捕まることはないのにな。怖がりかよ。」
フシミ「石橋を叩いて渡る。それぐらいが丁度いいんです。」
アサヒが踵を返して、その男の元へと進みカードを見せた。
少しして、その男は道路に寝転がっていた。
◆
二日後——
男「もういい。もう疲れた。だから、楽にしてください。」
フシミに向かって男が頭を下げた。
フシミ「私の持つイルカードは人を、その人が望む何かに変身させることができます。何に変身しますか?」
男「何でもいい。何でもいいから、助けてくれ。助けて下さい!」
フシミ「なら、ロボットはどうでしょう。感情のない機械ならば、苦しむことはありません。」
男「それでいい。それでいいから、助けてくれ。」
フシミ「分かりました。では、このカードに触れてください。」
男がフシミの持っているカードに触れた。
その男は、人間からロボットに変身を遂げた。
その男の中には、もう、辛いことなど一つも存在していなかった。
◆
一方でアサヒはゲームセンターへと来ていた。
アサヒ(適当にメダルゲームでもすっかな。)
そこにサカエも来ていた。
サカエ(聴き込み調査では、ここに例の暗殺者と同じ特徴をした人を見た人がいた。もしかしたら……)
そこでバッタリと二人は出会う。
サカエ「いたっ! アサヒ!」
アサヒ「だれだ? てめぇ。なんでオレの名を知ってんだ?」
サカエ「ぼくは——」
アサヒ「言わなくていい。勝手にアンタの頭ン中、覗くから。」
アサヒはちっ、と舌打ちして、その場で回転した。
アサヒ「警察の仲間っかよ。」
そのまま逃げるアサヒ。それを追いかけるサカエ。
ゲームセンターの中をかけっこする。
サカエ「逃げられた……。」
アサヒに逃げられてしまった。
サカエ「なら、また見つけ出すだけです。『見つけ屋』として——何度でもきみを見つけ出す。」




