2.
男の子A「じゃん。どれがどれでしょう!」
机の上に置かれた白い粉が入ったボトルが三つある。
男の子B「じゃあ、『1』のボトルからいくぞ。『1』は……砂糖だな。」
男の子A「確か……そう。」
男の子C「『2』は片栗粉じゃね!」
男の子A「正解。残りが塩だ。後、九問あるぜ!」
それを見て呆れている人がいる。
ミズキ「ちょっとー。ちゃんと掃除しなよー。」
そこに一人の先生がやってきた。
フジ「何やってるの!」
男の子たち「「「げっ! バレた!」」」
フジ「ちょっと来なさい!」
調理室の横にある準備室にお叱りの声が響いていった。
◆
フジ「……ということがあったの。」
サカエ「要約すると、明日調理実習があるのに、掃除の時間に男の子たちが遊びでボトルの札を入れ替えまくったと言うことですね。」
サカエが近くにあるボトルを掴んだ。砂糖と書かれたラベルのボトルの中には塩が入っていた。
フジ「もう、何個も変えてたら舌が馬鹿になっちゃって……。」
サカエ「それでぼくの出番ですね。」
爪楊枝で粉を掬って、スプーンに乗せる。スプーンを口へと持っていく。
サカエ「これは塩ですね。」
ラベルに貼られた『片栗粉』の青文字。それが桃色の文字の『塩』に書き換えられた。
時計の短い針は七を刺していた。
サカエは疲れた体を伸ばしたりひねったりして腰をゴキゴキと鳴らしていた。
サカエ「これで最後ですね。」
フジ「本当にありがとう。とっても助かった。」
サカエ「いえいえ。これがぼくの仕事ですから。」
ひと仕事終えてゆっくり体を伸ばしている時に、突然フジの顔が真っ青になっていく。
フジ「誰か学校の中に入ってきた。」
フジはゆっくりと目を瞑った。
サカエ「確か先生は、命を狙われているとか……。」
フジ「うん。最近『殺し屋が送られるかも』っていう脅迫状が届いたんす。」
二人は唾を飲んだ。
フジ「はー。良かった。よくないけど良かった。」
フジは軽く息を吐いた。
サカエはそれを見て首を横に傾けた。
サカエ「なんだったんですか?」
フジ「子どもたちだった。この学校、七不思議が流行ってるじゃない? まぁ、その原因は私なんだけど……。」
サカエ「……つまり、七不思議を確認するために、肝試しに来たってことですかね?」
フジ「そういうこと。……けどさぁ、よりによってウチのクラスの子だったんだけど。一人は違うけど。」
フジが調理室の扉を手で触れた。
二人が廊下へと出ると、後ろにあるのは調理室ではなく、三階にある音楽室だった。
フジ「ここで私が出て叱っても、七不思議の噂は消えないっす。なら、できるだけ驚かせてから、種明かししながら叱れば、七不思議の噂は消えてくれるはず。」
サカエ「やるなら徹底的にやって、そして、しっかりと反省させましょう。」
三階から夜の学校の敷地内にいる小学生三人を見下ろした。
フジ「前、不審者を追い払った時みたいに、クルタくんのヤオちゃんが欲しいかも。」
サカエ「あっ、承知しました。彼に電話しますね。」
サカエがスマホを取り出した。
そして、少ししてヤオが二人の元へと現れた。
ヤオ「やってきたよ!」
フジ「ありがとう。じゃあ、驚かし大作戦開始っすね!」
◆
ホミ「じゃあ、行くよ!」
ミズキ「やっぱやめとこうよ。」
ホミ「怖いんでしょ?」
アカイ「まっ、オバケなんてでないから安心しなよ。出てもオレが何とかするよ。」
ミズキ「そうじゃなくって。勝手に学校に入ったら……って、もう。」
三人が学校へと不法侵入した。
理科室の横を通る三人。
カシャン!
突然、理科室の扉がひとりでに開いた。
ミズキ「きゃー!」
アカイ「お、おおっ。」
ホミ「な、なに……?」
そこから現れたのは動く人体模型だった。
人体模型「……。」
カタカタカタ。ぶらーんと手足を落として進んでいく。
三人「「「いやぁ!!」」」
三人がそこから逃げるように走り出した。
ヤオ(笑!)
三人は階段を上る。
その三人に聞こえないように、フジがサカエに言葉を放つ。
フジ「私のカードの能力は建物構造変化。建物の中を自由に入れ替えたり変化させたりできる。」
階段を上る三人。
しかし、いつの間にか三人のいる場所が階段の真ん中に瞬間移動していた。
ミズキ「ねぇ、上っても上ってもここに戻っちゃうよ。」
ホミ「幽霊って本当にいるの?」
アカイ「マジかよ……。」
三人は階段を下る。
いつの間にか三人は階段の真ん中へと戻っていた。
永遠に出られない階段。
三人は恐怖に怯えていた。
フジ(そろそろフィナーレにしようかな。)
ようやく三人は無限の階段から抜け出した。
ミズキ「怖い……。」
アカイ「早くここから逃げよう。」
そこに空中を飛んでやってくる額縁。その中にはベートーヴェンの顔写真が入っている。
三人「「「(声にならない声)!!」」」
追われて逃げる三人。
三人の逃げる道はパッと変わって、教室が並ぶ廊下となり、その先は行き止まりだった。
壁へと追い詰められた三人。そこに近づくベートーヴェン。
ミズキは涙を浮かべ、ホミやアカイはその場にしゃがんだ。
ホミ「ヤバくない……。」
アカイ「くそっ。ここまでか。」
ミズキ「そんな……。」
その時、その額縁が落下した。
そこに浮いていたのはヤオだった。
ヤオ「やあ。驚いた?」
ヤオを見て、安堵を浮かべる三人。
ホミ「なーんだ。ヤオだったのね。」
ヤオ「そうだよ。動く人体模型の骸骨もヤオだよ!」
ミズキ「もー。やめてよ!」
アカイ「あれ? 出られない階段は何だったんだ?」
フジ「それは私のカードの能力です。」
ミズキ「せ、先生っ!?」
フジ「じゃあ、種明かしもした所で指導室に向かいましょうか。ひとまず親御さんに電話しますね。」
三人「「「そんなー!」」」
三人はこっぴどく叱られて、親へと引き渡された。
サカエとフジはしょんぼりとしながら親に連れられて帰っていく三人を見送っていった。
◆◆◆
そこはA県のどこかにある薄暗い場所。
???「忠告はしました。フジさんは大事な人を奪ったと同時に、あの方のデータも奪っていってしまいました。それなのにそれらをいっこうに返す気はないようです。」
薄暗い場所のせいで顔が隠された一人の男。その男と話しているのは赤茶色の髪の男子だった。
アサヒ「ふーん。で? 結論、やっちゃっていいんだよな?」
???「わたしがお願いすることはありませんが、止めることもありません。ご勝手にどうぞ。依頼主はわたしではないのですから。」
アサヒ「ふーん、そっか。じゃあ、殺るか。」
その男子は片手で指を鳴らし始めた。
???「巷で噂の実力を興味深く見ておきますね。『最強の暗殺者』と名高いアサヒさん。」
アサヒ(暗殺ターゲット。フジ。二十六歳女性。N小学校の教員。カードの能力者。まぁ、敵に不足なしだな。)
アサヒはその場から離れていった。




