1.
初めまして
ネット流浪のふるなゆ☆です。
自由に見て楽しんでください。
強いて言うなら評価やコメントしてくれると幸いです。
では、物語をお楽しみください。
さがしものはなんですか。見つけにくいものですか。かばんの中も、つくえの中も探してみたけど見つからないもの——探します。
A県N市『見つけ屋サカエ』看板に書かれた言葉。
◆
爽やかなメロディとポップなテンポと近代的な歌詞。その音楽は巷で流行っているアニメの歌だった。
それがボーボーに生えた雑草の中から聞こえた。
少年はその音を聞き逃さなかった。
家の外へと出て、庭へと向かう。
サカエ「さがしもの、見つけましたよ。」
サカエは草に隠れていたスマホを手に取って、そこにいたおばあさんに渡した。
おばあさん「ありがとねぇ。まさか外に落ちていたとはねぇ。ほんと助かったわぁ。」
サカエ「いえいえ。それに仕事ですから当然のことです。」
おばあさん「本当にすごいわねぇ。人の三倍、耳がいいのよねぇ?」
サカエ「能力—のうりょく—を使った時だけですよ。」
二人は家の中へと入った。
サカエ「では、お駄賃をお願いします。」
おばあさん「じゃあ、お礼に五千円あげるわね。」
サカエ「いやいや、多すぎです。お駄賃は千円です。それ以上は貰えませんよ。」
おばあさん「そーおー。多く貰っちゃえばいいのにー。」
サカエ「多くは貰えません。気持ちだけ多く受け取っておきますね。」
少年はにこやかな表情を浮かべながら、その家から出ていった。
◆
N小学校のすぐ近くにある『見つけ屋サカエ』に、子どもたちの賑やかな声が聞こえてくる。
サカエ(子どもたちの元気な姿を見ると、元気を貰えますね……。)
十七歳の少年は窓の外に映る小学生たちを見ていた。
外の子どもたちの声はそれなりに落ち着いた。
ヤオ「依頼、来た。依頼!」
手乗りサイズの動く人形のような存在が空を浮いて移動していた。
ヤオはまるで妖精のような見た目をしている神様だった。それが見えるのは能力のおかげ。
サカエ「教えてくれて、ありがとね。」
サカエは依頼を受ける準備を整えた。
カランコロン。
見つけ屋サカエの扉を開けたのは元気な女の子だった。
ミズキ「ごめんくださーい!」
サカエ「いらっしゃい。今日はなにか依頼があって来たんですよね?」
ミズキ「えっ。なんでミズキが『永遠のリボン』を探して欲しくて来たって分かったの?」
サカエ「ヤオが神様の力で教えてくれたんです。まぁ、依頼の内容は知りませんでしたけどね。」
ヤオはえっへんと自慢げな表情を浮かべていた。
サカエ「さて、その『永遠のリボン』とはなんでしょうか?」
ミズキ「『永遠のリボン』はね、綺麗なお姉さんがくれたとってもすっごい力を持ったリボンなんだよ。そのリボンで二人が結ばれるとね、永遠に一緒になれるんだって!」
サカエ「ふむ。すごい力を持つ……と。」
ミズキ「そうなんだ。だけど、近くにいた犬に奪われちゃってどっかにいっちゃったんだ。だから、探して欲しいの。いいでしょ?」
サカエは首を横に傾げながら「うーん」と悩んでいた。
ミズキ「ダメなの? ミズキが小学生だから?」
サカエ「そういう理由ではないのですが、見つけ屋のルール的にいいかどうか怪しい気がしましてね。」
ミズキ「見つけ屋のルール?」
サカエ「はい。今から言う依頼は基本的に断るようにしているんです。①お金を探す依頼、②犯罪に関わる依頼、③サシブカードに関する依頼。今回の依頼は、③に関わる気がしましてね。」
ミズキ「『学校の七不思議』もサシブカードに関わるからってやらないって無視してきたもんねー。ほんとは怖いからのくせにー。これだって、面倒だからなんじゃないの?」
サカエ「いや、そういう理由では……。」
サカエは頭を悩ませた。
少しだけ時間を置いて、そして軽く女の子に質問をした。
サカエ「探すだけですよね?」
ミズキ「そうだよ。」
サカエ「分かりました。依頼を受けましょう。」
ミズキ「やったー!」
やれやれ、という顔をしたサカエが軽く頬を緩めた。
サカエ「手がかりがなければ何も始まりません。ひとまず無くした場所に連れていってくれませんか?」
二人と一柱(以下、神様を一人と数える)は店を出た。
向かった先はリボンを犬に奪われた場所だという路地へとやって来た。車が一台通れるぐらいの広さがある道だった。
ミズキ「ここでね、犬にリボンを噛まれてね、引っ張り合いになっちゃったんだ。そして、そのまま奪われちゃった。」
サカエ「なるほどねぇ。その犬の犬種は?」
ミズキ「けんしゅ?」
サカエ「例えば、ダックスフンドやヨークシャーテリア、トイプードル、みたいな犬の種類のことです。それで、犬はどのような犬でしたか?」
ミズキ「ごめんなさい。覚えてない。ただ、茶色? かったよ!」
サカエは軽く笑ってありがとうと述べた。
サカエ(この辺りの犬を手探りで探していくしか他なさそうですね……。)
少年は心の中で覚悟の火を灯す。
そんな時、ヤオが何かを発見した。
ヤオ「サシブカードの力が込めてある布切れがあった。」
ヤオは電柱の裏に落ちていた赤い布切れを持ってきた。
サカエ「ねぇ、ミズキさん。そのリボンって赤色でした?」
ミズキは大きく、うんと頭を縦に振った。
ミズキ「この色だったよ!」
サカエ(犬と引き合いになった時に切れ端だけ、ちぎれたのでしょうね。)
サカエが女の子に質問をする。
サカエ「そのリボンは不思議な力を持ったリボンでしたよね?」
ミズキ「そうだよ。そう言ったじゃん!」
サカエ(やはり、サシブカードで作られた物でしたか。なら、この布が探し物の切れ端であっているでしょう。まぁ、ここまで来たら探してあげましょうか。)
サカエはポケットからカードを取り出してミズキに見せた。
サカエ「ぼくのサシブカードは"五感強化"。五感の効果を高めることができます。少しの間、ぼくはこの力で犬と同じ嗅覚レベルになります。」
サカエは布を鼻の下へと近づけた。そして、匂いを嗅ぐ。
そして、すぐにコンクリートに鼻を近づけた。そして、そのリボンの匂いを追っていく。
通行人A「ねぇ、変な人がいるー!」
通行人B「見なかったことにしなさい。」
サカエ(最悪……。こんな姿見られてしまった。……本当に最悪。)
それでも依頼をこなすために匂いの元を辿っていった。
歩道を進んでいき、橋を渡り、そのまま川沿いを進んでいく。
そして、匂いが途切れた——。
サカエ「ここのどこかにあると思いますが、ここから先はぼくの能力では見つけ出せなさそうですね。」
川のせせらぎが心地よい川沿いの草原地帯。手入れされていない無造作に生えた雑草は太ももぐらいまで伸びている。
サカエ「ここから先は手探りです。もちろん、ミズキさんも手伝ってくれますよね?」
ミズキ「えーっ!?」
雑草のどこかにリボンはある。けど、どこにあるかは分からない。
三人ひたすら草を掻き分けていく。
ミズキ「もー大変。イヤミも呼べばいいのにー。」
サカエ「彼はヤオさんを出してくれてますから、多めに見てあげてくださいね。」
ゆっくりと日が落ちてきた。少しずつ夕日に変わっていく。
ミズキは無駄口を叩きながらも必死に探している。
サカエ「ミズキさんは、その『永遠のリボン』を使おうと思っていたりするのですか? 例えば、好きな人がいて……とか。」
ミズキ「うっ。その……えっと——」
サカエ「あー。図星ですね。好きな人に使いたいから必死になっているのですね。」
ミズキ「ま、まー。そういうこと。」
サカエ「誰ですか?」
ミズキ「秘密!」
サカエ「アカイさんとかですか?」
ミズキ「ちょっ。なんで知って——」
サカエ「あー、やっぱり……。」
アカイはミズキと通学団が同じだった。見つけ屋に遊びに来る小学生の一人だったからサカエはその答えに辿り着けた。
ミズキ「それ、他の人には秘密ね!」
サカエ「うーん。どうしましょう。すんなりと返事はしたくはないですねぇ。秘密にする代わりに、何をお願いしましょうか。」
サカエは軽口を叩きながらも手は動かしている。ヤオはそれを聞きながら空中を浮きながらさがしている。
草原横の道路に仲良く歩く二人の影が見えた。
サカエ「あれっ。アカイさん?」
ミズキ「えっ、嘘っ!」
サカエ「隣にいるのは……ホミさん?」
ミズキ「なんで……。なんでお姉ちゃんとアカイくんが一緒にいるの……?」
仲良く歩いている二人に向かってサカエは走っていった。
そして、ミズキの姉と、好きな人、の二人に手伝って貰うことにした。
ホミ「あの動物のアニメ知らないの? 貰ったら嬉しいと思うよ。」
アカイ「もっと詳しく教えてくれ。」
二人は話ながらさがしものをさがしていく。
それをミズキが遠くで見つつ、草をむしり取りながらさがしていく。
サカエ(あっ、見つけたっ!)
サカエはついにさがしもののリボンを見つけた。そして、それを手に握った。
サカエ「みんなっ。見つけ……」
ちょうどその時、ミズキが泣き出した。そして、手に持っていた草を乱雑に投げ捨ててどこかへと走り出してしまった。
ヤオ「どこかへ行ってしまったね。」
サカエ「追いかけましょう。」
四人はミズキを追いかけた。
人気のない道端でミズキは立ち止まり、四人はそこへと追いついた。
ホミ「どうしちゃったの? 急に。」
ミズキ「ずるい。お姉ちゃんばかり。あたしの大切なものをいっつも奪ってって。」
ホミ「なんのこと?」
泣きながら時々見せる視線は鋭かった。
ミズキ「いいよね、お姉ちゃんは。アカイくんととっても仲良くて。」
ホミ「そんなことないよ。さっきだって——」
ミズキ「嘘言わないでよ。仲良く話してたじゃん。」
空気が固まってしまっているみたいだった。
ヤオ「リボン見つけたけど、どうする?」
神様にとっては、この空気は何ともないようだ。
アカイ「リボンを見つけたんだろ? どうしてミズキは泣いてるんだ?」
ヤオ「もちろん、そのリボンを使って好きな人と結ばれたいからだ。」
アカイ「好きな……人?」
サカエ(ここで隠し通してしまったら、きっと修復不可能になってしまうかも……)
その様子からサカエは察した。ここを見逃すと話はもっとややこしくなるということを肌で感じ取った。
サカエ「あー、アカイくんのことが好きなんですって。」
ミズキ「言うな、馬鹿!」
小学生の女の子の思いっきり勢いをつけた頭突きがサカエのお腹へとクリーンヒットした。
サカエ(うっ、痛い——)
夕日がそこを照らしている。
アカイ「俺もミズキのことが好きだぜ。……恥ずい。ついに言っちゃった。」
ミズキ「えっ?」
ホミ「本当よ。私にミズキが貰って嬉しいものを聞きに来たぐらいだもん。」
ミズキ「本当……なの?」
アカイ「本当だぜ。好きなんだってな、今、流行りの動物のアニメ。」
ミズキの涙が止まった。今度は笑顔になっていた。
ミズキ「うんっ!」
ミズキはその日一日の中で一番とびっきりの笑顔を見せていた。
ヤオ「このリボンはどうする?」
ミズキ「……いらなくなっちゃった。」
せっかく頑張って見つけたのに、必要なくなった『永遠のリボン』。もうミズキとアカイは結ばれて、それを必要としなくなった。
ホミ「じゃあ、私が貰っていい?」
ミズキ「うん。もちろん!」
その不思議なリボンはミズキの姉へと譲られた。
段々と影が伸びていく。
ミズキ、ホミ、アカイの三人は家までの道を仲良く話しながら帰っていった。
サカエ「ぼくらはアイスでも買って帰りましょうか。」
サカエは今回の依頼のお駄賃、五の数字が書かれたワンコインを持ってコンビニへと向かった。
そして、そこで練乳のアイスバーを購入して、口に入れていった。
◆
雨戸を開けて、看板を外に出す。
サカエ「今日も一日、頑張ろう。」
そして、部屋へと戻った。
学校のチャイムが鳴り響いている。
ヤオ「依頼だよ。依頼っ!」
見つけ屋サカエ——開店中——!
サカエはその日も見つけにくい依頼のものをさがしていく。




