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『見つけ屋"さかえ"』~失くし物?ここから助かる方法?探し人?どんなさがしものでも見つけ出します。~  作者: ふるなゆ☆


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19/23

19.

 開廷(かいてい)——。



裁判長(さいばんちょう)「これより、被告人(ひこくにん)フシミに対(たい)する傷害罪(しょうがいざい)及び教唆罪(きょうさざい)の被告(ひこく)事件(じけん)を開廷(かいてい)します。被告人(ひこくにん)、前へ。」



 裁判所(さいばんしょ)内(ない)をゆっくりと歩く被告人(※無罪(むざい)の可能性(かのうせい)がある限(かぎ)り、犯人(はんにん)や容疑者(ようぎしゃ)などとは呼ばずに被告人と呼ぶ)のフシミ。

 証言台(しょうげんだい)の前に立ち、裁判長へと真っ直ぐ目線(めせん)を合わせた。



裁判長「人定(じんてい)質問(しつもん)を行います。お名前と生年月日、本籍(ほんせき)、職業(しょくぎょう)を述(の)べてください。」



フシミ「はい。わたしはフシミです。生年月日は『20xx』年『11』月『15』日。本籍はA県N大都市H区——。職業は心理士(しんりし)……カウンセラーです。」



裁判長「指定(してい)弁護士(べんごし)、起訴状(きそじょう)を朗読(ろうどく)してください。」



 指定弁護士——通常(つうじょう)、刑事裁判では検察官(けんさつかん)がこの立場となる。ただ、今回、検察は裁判所に訴えてはいない(検察審査会での代表(だいひょう)市民(しみん)による起訴(きそ))ため、裁判所が指定した弁護士(べんごし)が検察官の役割(やくわり)を担(にな)う。


 ただ、ここでは一般的(いっぱんてき)な刑事裁判に合わせて以下(いか)検察として書いていく。



検察(※指定弁護士)「起訴状(きそじょう)。被告人フシミは異能力(いのうりょく)カードの力を用いて、被害者に機械化(きかいか)の力を提供(ていきょう)し、植物状態(じょうたい)と等(ひと)しい存在(そんざい)へと変化させたこと。それらが刑法(けいほう)『204条』傷害罪、刑法『61条』教唆(きょうさ)罪に抵触(ていしょく)するものである。被告人を厳重(げんじゅう)な処罰(しょばつ)を求(もと)めるために起訴(きそ)する。」




裁判長「被告人(ひこくにん)。黙秘権(もくひけん)について説明(せつめい)します。あなたには終始(しゅうし)沈黙(ちんもく)する権利(けんり)があり、言いたくないことは言う必要(ひつよう)がありません。発言(はつげん)したことはあなたに有利(ゆうり)にも不利(ふり)にも証拠(しょうこ)となります。……さて、ただいま検察官が読み上げた公訴(こうそ)事実(じじつ)について、間違(まちが)っているところはありますか?」




フシミ「まず、私は機械化(きかいか)について、一方的(いっぽうてき)に行ってはおりません。私はただ選択肢(せんたくし)を提示(ていじ)したまでです。被害者本人がそれを望(のぞ)んだ結果(けっか)に過(す)ぎません。」



フシミの弁護人(べんごにん)「弁護人としても同意見(どういけん)です。被告人は無罪(むざい)であり、本件(ほんけん)は構成要件(こうせいようけん)(犯罪の条件(じょうけん))を満(み)たしていません。」



 真ん中に証言台。

 その奥に裁判員。

 横には検察、反対側(はんたいがわ)にフシミと弁護士が座(すわ)る。



【冒頭(ぼうとう)陳述(ちんじゅつ)】



検察「まず本件(ほんけん)において、被告人(ひこくにん)による機械化は、被告人による能力(のうりょく)であると認(みと)めております。そして、その力を使って人間を機械(きかい)——即(すなわ)ち、人ではない存在(そんざい)に変えた。これは人体の欠損(けっそん)をさせたという事実(じじつ)に他(ほか)なりません。故に刑法『204条』傷害罪(しょうがいざい)に値(あたい)するものと思われます。」



 検察の思い描(えが)くストーリーラインが示(しめ)されていく。



検察「また、被告人本人は追(お)い込(こ)まれている被害者をターゲットにし、能力を提供(ていきょう)するといい機械化(きかいか)を誘導(ゆうどう)した。自殺教唆(じさつきょうさ)を行ったと考えるのが妥当(だとう)です。よって刑法『61条』教唆罪も当てはまるものと思われます。」




裁判長「では、被告側どうぞ。」



 

弁護士「被告人(ひこくにん)が行ったことは能力の貸出(かしだし)に過(す)ぎません。資料(しりょう)にもあるように、カードの能力は当事者(とうじしゃ)がなりたい物質(ぶっしつ)になるものであり、欠損(けっそん)をさせたのは被告人ではなく、被害者(ひがいしゃ)本人と結論(けつろん)づくのが至極(しごく)当然(とうぜん)だと思われます。」



 弁護士による弁論(べんろん)が施(ほどこ)されていく。



弁護士「自殺(じさつ)教唆(きょうさ)とおっしゃられましたが、元より自殺願望(じさつがんぼう)を持っていてもおかしくはない状況に陥(おちい)っているケースが多く見られます。唆(そそのか)したのではなく、被害者側から被告人に擦(す)り寄(よ)ってきたと見るのが当然(とうぜん)なのではないでしょうか。」



 真(ま)っ向(こう)する意見(いけん)が出揃(でそろ)った。




 そして、裁判は別日に持ち越(こ)された。

 そして、再び裁判の時がやってきた。




【証人(しょうにん)尋問(じんもん)】



 裁判(さいばん)の場所(ばしょ)に証人(しょうにん)として呼(よ)ばれたミズキ。証言台(しょうげんだい)へと進む。



ミズキ「私のお父さんとお母さんはフシミによってロボットに変えられました。そのロボットは今も家にいます。だけど、どんなに声をかけても何の返事(へんじ)もしてくれません。料理(りょうり)をしたって食べることはないんです。あんなに楽しそうに笑ってた二人がもう笑(わら)うことはありませんでした。」



検察「では、質問(しつもん)ですが、両親が機械になったのに、あなたは機械になろうと思わなかったのですか?」



ミズキ「わたしはお父さんお母さんと一緒(いっしょ)にフシミに技をかけて貰(もら)いました。だけど、わたしは想(おも)いが足りずに変身できませんでした。」



検察「証言者(しょうげんしゃ)のご家族(かぞく)にとって、彼女(かのじょ)はとても大切な子です。一緒(いっしょ)に機械化したのであれば、そのまま機械でいようと思うのも分かり兼(か)ねますが、大切な子を一人残して、つまり見捨(みす)てて機械でい続けようと思い続けるのでしょうか?」



 鋭(するど)い言葉の刃(やいば)が鞘(さや)から引き抜かれる。



検察「いえ、普通なら機械から戻(もど)ろうとするはずです。しかし、そうはならなかった。それは機械化は自らの意思(いし)ではなく、被告人(ひこくにん)の想定(そうてい)した意思でしかないからです。そう、機械化によって人でなくされたのです。」



弁護士「異議(いぎ)あり。憶測(おくそく)の域(いき)を超(こ)えません。」



 続いて、弁護士が質問(しつもん)する番(ばん)だ。



弁護士「能力を受ける時、どのように行いましたか? 現場(げんば)再現(さいげん)をして頂(いただ)けますか?」


ミズキ「はい。」



 ミズキの指示(しじ)で、弁護士がフシミ役を演(えん)じる。そして、ミズキが嫌(いや)な過去(かこ)を振(ふ)り返(かえ)って、その行動を演(えん)じる。



弁護士「このように能力(のうりょく)の発動(はつどう)は被告人(ひこくにん)からしたら受(う)け身(み)でいるしかありませんよね? 変身する時も、その変身先(へんしんさき)を思い浮(う)かべて変身したはずです。それって、あなたが望(のぞ)んだからではありませんか?」



ミズキ「それは……。それ、は。」



 ミズキは過去(かこ)に押し潰(つぶ)されそうになっていく。



検察「それ以上の尋問(じんもん)は証人(しょうにん)の心身(しんしん)に影響(えいきょう)を与(あた)えます。」



弁護士「能力は相手に依存(いぞん)するものです。被告人は受(う)け身(み)であり、巻(ま)き込(こ)まれただけなのです。わざわざ変身先(へんしんさき)に機械(きかい)を選(えら)んだのは被害者(ひがいしゃ)本人であり、この件(けん)は自己責任(じこせきにん)の域(いき)を出ないと思われます。」




 別日(べつび)——。



 今度はN大都市にあるN大学付属(ふぞく)病院の教授(きょうじゅ)が証言台へと立った。



教授「資料にもあるように、機械化は人間(にんげん)の進歩(しんぽ)した姿になります。脳(のう)は正常(せいじょう)に働(はたら)きながらも衰退(すいたい)しないようなシステムが施(ほど)されています。もちろん、寿命(じゅみょう)もありません。」



弁護士「人は不便(ふべん)なことだらけです。熱(あつ)い寒(さむ)い、気圧(きあつ)の変化(へんか)など不快(ふかい)に感じますが、機械化(きかいか)した彼らにそのような不快(ふかい)はありますか?」


教授「ありません。」


弁護士「例えば、痒(かゆ)み、空腹(くうふく)、怪我(けが)、怠(だる)さなど、そういう不快(ふかい)は?」


教授「ありません。」


弁護士「今は外的(がいてき)影響(えいきょう)を並(な)べましたが、対人(たいじん)関係(かんけい)や社会的(しゃかいてき)問題(もんだい)などで起きる内的(ないてき)影響(えいきょう)について聞きます。心配事(しんぱいごと)、不安(ふあん)、恐怖(きょうふ)、それらによるストレスを感(かん)じることはありますか?」



教授「ありません。機械化(きかいか)された人達の脳波(のうは)を確認(かくにん)するに、幸(しあわ)せホルモンで満ち溢(あふ)れていて、さらにその幸せホルモンがなくなることはないと見ています。」



弁護士「人間でいれば必ずしも不安(ふあん)やストレスに苛(さいな)まれます。それから逃(のが)れる術(すべ)が機械化です。このように機械化とは幸(しあわ)せを手に入れる行為(こうい)なのです。今も幸(しあわ)せでい続けている。だから、人に戻(もど)ろうとしない。直接(ちょくせつ)他人(たにん)を傷(きず)つけず人を幸福(こうふく)にする。これのどこが傷害(しょうがい)要素(ようそ)を孕(はら)むのでしょうか? 私からは以上です。」




 続いて検察(けんさつ)が席(せき)を立った。



検察「それでは、教授(きょうじゅ)。一つお伺(うかが)いします。先程(さきほど)、幸(しあわ)せでい続けられるとおっしゃりましたが、悲しむことはできるのでしょうか?」



教授「悲しみ、他(ほか)にも怒(いか)りなど、不幸の感情(かんじょう)は感じないですね。」



検察「そう、つまり、例(たと)えば、目の前で大切(たいせつ)な人が苦(くる)しんでいようと、悲しんでいようと、一緒(いっしょ)に悲しむことはない。そういうことでいいんですよね?」



教授「そうです。」



検察「大切な人の悲しい時、一緒(いっしょ)に悲しんであげることができない。それって本当に幸せなことなのでしょうか。私には強制的(きょうせいてき)に幸せを感じているだけと感じます。薬物(やくぶつ)などによる幸せとなにか違うのでしょうか? そこに本来(ほんらい)の人間としての感情はあるのでしょうか?」



教授「それは——」



検察「人の感情という機能(きのう)を奪ったのではないのでしょうか。人の機能を消失(しょうしつ)させたということは、まさしく被害者を傷害(しょうがい)したんです。」



 教授は少したじろいでいた。



裁判長「弁護側(がわ)、再主(さいしゅ)尋問(じんもん)はありますか?」

 

弁護士「……いえ、ございません。」

 

裁判長「結構(けっこう)です。証人(しょうにん)、ご苦労様(くろうさま)でした。退廷(たいてい)して構(かま)いません。」



フシミ(教授の証言は我々(われわれ)にとっては逆効果(ぎゃくこうか)でしたか……。少し分(ぶ)が悪くなりましたね。ですが、負けたわけではない。)



 別日の裁判所。


 今度はフシミが証言台へと立った。



フシミ(さて、ここからが重要(じゅうよう)な局面(きょくめん)。兜(かぶと)の緒(お)を締(し)めましょうか。)

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