18.
審査員B「やはり、ロボットになるということは死と同じなのかも知れないですね。」
審査員F「それは悩ましい話です。フシミ側の書類では死というわけではないと明確に書かれていますから。」
審査員K「可哀想……。それに尽きます。」
審査員G「ただ、フシミ側はただその力を貸しただけ。それを選んだのはロボット化した人達じゃないですか?」
審査員A「一理ある。少なくとも殺意とか傷つけようとかそういうのはないわけだしな。」
審査員E「ミズキさんのスピーチはとても心を打たれました。」
審査員長「だからと言って、それで全てを決めるべきではないと思います。少なくとも、そこの彼が言ったように、ロボット化は自業自得のようなものですから。」
審査員達の話し合いが終わった。
それぞれの意見が出される。
審査員E(やっぱりミズキさんのような辛い思いをさせるフシミさんの行為は許しちゃ駄目よね。)
審査員A(本当はミズキさんたちには共感するけど、これは裁判の話だからなぁ。)
多数決が取られ、意見は五対五にわかれていた。
残る一人は審査員長トウジのみとなった。
審査員長「えーっと、うん、わたしはねぇ。」
◆
ニシオ「検察審査会の結果は三つある。」
アカイ「三つ?」
ミズキの家でサカエたちはニシオの話に耳を傾けていた。
ニシオ「一つは『起訴相当』。簡単に言えば、俺らの勝ちってことだ。不起訴はおかしいって認められたってことだからな。」
ミズキ「そうなってるといいね。」
ニシオ「一つが『不起訴相当』。簡単に言えば、俺らの負けってことだな。検察の不起訴は正しかったよってことだからな。」
アカイ「それは絶対にいやだな。」
ニシオ「最後が『不起訴不当』。起訴相当までは断言できないが、不起訴は間違ってるってことだな。」
アカイ「つまり、どういうこと?」
ニシオ「勝手に言わせてもらうと、勝ち負けはっきりしないから、検察に宿題として、もう一度、事件を見直せってことだな。」
ヤオ「通知書が届いたから持ってきたよ。」
ニシオ「ついにきたか。」
その中身を見る。
不起訴不当——!
その文言が書かれていた。
アカイ「じゃあ……」
サカエ「検察にもう一度検討させるものですね。」
ニシオ「そういうこった。後は検察に任せるしかねぇ。」
ミズキ「もし検察がやっぱりダメって言ったら?」
ニシオ「もう一度だけチャンスは作れる。ただ、前の検察審査会よりも起訴のボーダーが高く難しくなるけどな。」
サカエ「今は待つしかできなさそうですね。」
◆◆◆
フシミは電話をしていた。
ツルマ『また検察の捜査が入るらしいな。……ついてないな。君は運が悪いのかも知れないな。』
フシミ「そうですね。墜茵落溷や運否天賦というように、幸不幸には運が絡みますからね。」
ツルマ『厄祓いにいい場所を知っとる。来るか?』
フシミ「もちろん、お願いします。」
ツルマ『そう言うと思ったよ。君は人事を尽くして天命を待つタイプだからね。そう、君はそういう性格なのだよ。』
フシミ「こんな言葉があります。騏驥の跼躅は駑馬の安歩に如かず。どれだけ優秀な人間でも怠けていれば平凡だと。どれだけ有利な状況でも驕れば、不利な状態と変わらなくなる。即ち、足を掬われる。やれることはやっておきたい。」
ツルマ『そうか。』
フシミ「先を見越して、弁護士の紹介もして頂けると嬉しいですね。」
ツルマ『まだ裁判にもなってないのに……。まぁ、分かった。N大都市の市長の名に恥じぬよう、最高の弁護士を教えよう。』
フシミは床でも真っ直ぐでもなく、空の方を見ていた。
◆◆◆
あれから数ヶ月の月日が経つ。
|検察の調べでサカエやミズキ、果てにフシミが呼び出されることが頻繁に起きた。
そして、検察は『再度不起訴』を選択した。
ただでさえ、五分五分の内容。そこにA県トップで地位と人脈のあるツルマが密かに圧をかけたこともその結果に大きく影響を与えていた。
ニシオ「十一人中、八人が認めれば起訴となる。それが駄目なら、諦めざるを得ないだろうな。」
ミズキ「今度こそ頑張るね。」
サカエ「勝ち負けじゃない。どれだけ思いを受け止めてもらえるか。味方を増やそう。例え、負けても気持ちが楽になるように。」
局員に連れられ会議室へと入る。
前回とは違う十一人の審査員。
そして、裁判所から派遣された弁護士が補助役として来ていた。
前回の審査会と同じように進んでいく。違うのは弁護士が補足してくれること。
審査員長「では、意見陳述をどうぞ。」
サカエ「伝えよう。無理なく。」
ミズキ「うん。」
三人が思いを伝える。
ミズキ「わたしはただ、会いたいんです。もう一度。」
ミズキが感情に訴える。
フジ「フシミは人の弱った心を利用してロボット化をさせているんです。」
フジがフシミの悪意を説明する。
そして、サカエが——
サカエ「なにも罪に問われないことは、ぼくは遺された人への冒涜だと思っているんです。」
フシミを裁判にかけることの正当性を伝える。
審査員長「ありがとうございました。」
質疑応答の時間を経て、会は幕を閉じた。
審査員(可哀想。報われないのは辛い。)
後は待つだけだった。
◆
再び数ヶ月の月日が経った。
ヤオ「通達きたよ。」
裁判所から届けられた書類。
そこに書かれていたのは、
起訴議決——!
だった。
ニシオ「これで刑事裁判が行われる。書類を見る感じ、おまえさんらも裁判に証人として出る感じだな。」
アカイ「刑事裁判って、普通の裁判と何が違うんだ?」
サカエ「裁判には三種類の裁判があります。それが、民事裁判、刑事裁判、行政裁判です。」
アカイ「そんなにあるんだ!」
サカエ「はい。民事はトラブルを解決する裁判です。学校だとトラブルが起きた時——例えば、喧嘩がおきたとき先生が止めて指導しますよね?」
アカイ「うん。大体、先生に怒られるよな。」
サカエ「けれども、大人に先生のような人はいません。じゃあ、誰がそんなトラブルを解決するのか……。それが裁判所なんです。」
アカイ「なるほどなー。」
サカエ「行政裁判はおおまかには国などとのトラブルと思ってください。」
フジ「弁護士系の漫画やドラマだとよく見かけるっすよね。リーガルハイとかおすすめっす。」
サカエ「はい。刑事裁判こそが今度フシミを裁く裁判となります。」
ミズキ「その裁判ってどんな感じなの?」
サカエ「犯罪を犯したとされる人を裁く裁判です。有罪なのか無罪なのか、有罪ならどの罪に当たるのかを決める裁判です。」
フジ「ニュースとかでみる裁判が大体これっすね。絵で描かれる裁判の様子とかは、ほとんどこれですからね。」
アカイ「んー。まー、分かったような気がする。」
次は刑事裁判——。
ニシオ「裁判が終わったら、とっておきの能力を発動して貰う予定だ。まぁ、成功するかは分からねぇがな。」
サカエ「なんの話しですか? それは。」
ニシオ「やっぱ今のはなしで。裁判が終わるまで、とっておきの秘密にしといてくれ。」
サカエ(気になる。)
サカエたちはフシミを刑事訴訟にかけることに成功した。
次は刑事裁判——。
開廷はまだ先だった。




