14.
ナルミ「それで何もできなかった訳ね……。」
サカエ「少年漫画のように戦って終わり……みたいな単純な話ではないですからね。」
見つけ屋の中は沈んだ空気が広がっている。
ナルミ「けど、ミズキちゃんはどうするの? アカイくんはやる気って言っても、アカイくんはまだ小学生なのよ。アカイくんに背負わせるのはアカイくんが可哀想よ。」
サカエ「大丈夫です。助っ人を呼びましたから。」
ナルミ「助っ人……?」
サカエ「ミズキさんと面識もあり、関係も良好。家族をロボットにされたという同じ境遇を受けた、ミズキさんの面倒を見てくれる優しい性格の人が一人。」
ナルミ「なにその都合のいい感じの人は……。」
ナルミは少し呆れた表情を浮かべた。
月夜が輝く時間帯。クローズの見つけ屋に一人の尋ね人がやってきた。
サカエ「噂をしていればちょうど来ましたね。」
フジ「久しぶりっすね。」
サカエ「ええ。久しぶりです。」
ミズキの元担任で休職中のフジ。彼女は見つけ屋のソファに腰掛けた。
サカエ(少しでも未来が悪化しないように——)
その時、サカエのスマホが鳴った。
電話だった。
ニシオ『よぉ、サカエ。今時間あるか?』
サカエ「はい。なんでしょう。」
ニシオ『すまん、言い間違えた。『白01』だったな。』
サカエ(……ということは、事件性のある話題。)
サカエはゆっくりと電話に耳を傾けた。
◆◆◆
ニシオ「ありがとな。来てくれて。」
サカエ「これも仕事のうちですから。」
ニシオ「んで、見つけ屋の新しい仲間っちゅうアサヒだっけな?」
アサヒ「ああ。よろしく。」
ニシオ「んで、協力者になってくれんだろ?」
アサヒ「もちろん。」
夜の公園。そこに四人が集まっていた。
ニシオとアサヒは軽く話し合い打ち解けた。
ニシオ「じゃあ、アサヒにゃ『白09』のコードネームを与える。」
サカエ「ちなみに、ぼくが『白01』です。」
サクラ「うちが『白07』です。」
ニシオ「本来なら異能力カードとその製作者グループの監視がメインなんだが、カード関連ってしゃしゃり出ていかねぇとやべぇことが多すぎてな……。まぁ、アクロバティック公安だと思っておいてくれ。」
アサヒ「あい分かった。」
ニシオ「それで本題なんだが、何者かのグループに中学生が誘拐された。話によると、その子は謎のカードを手に入れてから不思議な力を手にしていたことが分かった。そのカードは——」
アサヒ「あー。時間に関するカードだよな?」
ニシオ「あぁ、そうだ。その能力を使え——。待て、なんで知ってるんだ?」
アサヒ「昔、仕事で依頼を受けたことがあるやつらなんだよ。んで、さっきカードの使い方について俺に連絡してきたんだ。」
サクラ「その子は無事なんですか?」
アサヒ「無事だろ。異能力カードは殺して奪おうとしてもカードの効果を失うだけって知ってるからな。そんなリスクしかねぇ無駄なことしねぇだろ。」
ニシオ「なるほどな……。」
ニシオはプリッツを取り出して、タバコに見立てて口にくわえた。
ニシオ「そいつらの居場所を教えてくれねぇか?」
アサヒ「いいぜ。あ、そうだ。ついでに言っとくと、前にホミ達の誘拐を命令した奴らだぜ。」
サカエ「あの時の……。」
ニシオ(んー。銃とか持ってる可能性が高いな。本腰入れてかなきゃな。)
夜の密会は幕を閉じた。
◆
N市の隣にあるH市その一。人気のない廃墟となった工場。
アサヒ「じゃあ、ここで待機しとくぜ。」
ニシオ「ああ、何かあった時は頼むぜ。」
サカエとアサヒは外で待機。その後ろには警官達も待機していた。
ニシオが中へと入っていく。
その中は悪党達の巣窟となっていた。
悪党A「なんだ、てめぇ。」
ニシオ「あー。ちょっと誘拐された子を取り返しにきたもんなんだが、その子を解放してくれね?」
悪党A「バカ野郎。返す訳ないだろ。」
ニシオ「じゃあ、どうしたら返してくれるんだ?」
悪党A「そんな方法ねぇよ。ってか、止まりやがれ!」
その男がニシオをつかもうとした。
ニシオはすかさずその手をつかんで背負い投げをする。
ニシオ「警察学校にいた頃じゃ、柔道の腕は上澄みだったんだぜ。」
悪党B「警察の手のものか。めんどくせぇ。やっちまうか。」
ニシオ「やれるもんなら、やってみな。ただのチンピラにゃ負けやしねぇよ。」
ニシオはココアシガレットを口に挟んだ。
襲ってくる集団。
ニシオ(『響鳴—きょうめい—』で数を減らしとくか。)
ニシオは攻撃を躱しつつ、時々素手て対処していく。
たくさんの悪党がニシオを囲った。
悪党B「つぶせぇ!」
ニシオ「俺の持つ異能力カードの効果は【矢印操作】だ。ものの動きに矢印を付与する。そして、俺はその矢印を自由に操作できる。」
そんな言葉を伝えている間に攻撃しにいった悪党どもが大きく吹き飛ばされていった。
悪党ボス「何をしやがった……。」
ニシオ「何もしてねぇぜ。強いて言えば、カードの持つ"響鳴"の力だな。能力の説明中に攻撃すると吹き飛んちまう。異能力カードの常識なんだがな。」
ニシオが手を大きく開いた。
突然、パッ、と大きめの鉄パイプがニシオの目の前に現れた。
持っている鉄パイプで悪党どもを気絶させていく。
今度は花火爆弾をパッと目の前に出した。
強烈な音と光が足を止めさせる。
今度は、パッとニシオが消えた。
悪党ボス「どこいきやがった。」
ニシオは、パッと、ボスの目の前へと現れる。
ニシオ「ここだな。」
そのまま彼を蹴り飛ばした。
ニシオ「制圧完了だな。」
そこに密かに動いていた警官の一人が中学生の男子を保護した。
それを機に、待機組の警察が押し寄せる。
ニシオ「終わりだな。」
悪党達「くそっ!」
悪党ボス「もう終わりなのかっ。」
ニシオ「力に目が眩んでやっちゃぁいけねぇことやってるんだ。終わりに決まってんだろ。」
チクタクチクタク。
悪党ボスの体が突如として光りだした。
悪党ボス「ようやく能力が発動されるのか。万事休すだったよ。俺は捕まって惨めに生きてくことはしねぇ。どうせ詰むしかないのなら、俺だけの世界で永遠に幸せを過ごしてやるよ。」
ニシオ「何を言ってやがる。」
一瞬の出来事。悪党ボスが目の前から消えてしまった。
ニシオ「ちっ。逃しちまった。」
悪党はボス以外が警察に身柄を引き渡された。
そして、誘拐された中学生は保護された。
◆◆◆
悪党ボス「てめぇが一枚絡んでたとはな。まぁいい。そんなくだらないしがらみは今日でしまいだからな。」
アサヒ「どういうことだ? わざわざ俺を呼びつけて、それだけか?」
悪党ボス「てめぇが裏切らなきゃ、ほんとは餞別でも渡そうと思ってたんだけどな。」
アサヒ「死ぬのか?」
悪党ボス「死なねぇよ。この世界を卒業して、電脳世界の住人になるだけだ。——永遠にな。」
その男はアサヒに背中を向けた。
悪党ボス「邪魔すんなよ。」
◆
ニシオ「ほんとか。ってか、逃がすなよ。」
アサヒ「あ、悪ぃ。」
サカエ「その電脳世界とはなんでしょうか。」
アサヒ「なんなんだろうな。」
ニシオ「異能力カード関連かもしれないな。」
アサヒ「異能力カード……? あー、今、気づいたわ。」
サカエ「何にです?」
アサヒ「電脳世界ってロボットの頭の中ってことじゃね?」
サカエ「ロボッ……ト? もしかして——」
アサヒ「あいつ、フシミのとこにいってロボットになるつもりだな。」
ニシオ「んなことさせねぇ。逃がさねぇ。償わせなきゃならねぇ。そいつの場所、分かるか?」
アサヒ「予想なら……。多分そこかも知れねぇ場所なら、あるぜ。」
ニシオ「連れていってくれ。」
そこにいたニシオとアサヒ、サカエ、サクラは悪党ボスがいったとされる場所へと向かった。
そして、ひっそりとした廃れたスーパーへとたどりつく。
人気のない場所。
動かないエスカレーターを自力で上り、三階へとやってきた。
そこにはフシミと悪党ボスがいた。
フシミが差し出すカード。
その悪党ボスは目の前でロボットに変わっていった。
フシミ「いらっしゃい。私の裏の仕事場へ。」
サカエ(今日は公安警察のニシオさんがいる。そして、今まさにロボット化させた場面を目撃した。もしかしたら——)
四人がフシミと対面した。




