13.
ちょっと思いついたので一章終わるまで再開
ヤオ「依頼だよ。依頼!」
見つけ屋に飛び込んでくる依頼。それを持ってきたのはアカイだった。
アカイ「見つけ屋さん。お願いがあるんだ!」
汗をかいて息をきらしている。
サカエ「すごい汗ですね。なにかありましたか?」
アカイ「実はミズキと連絡が取れなくなっちまって。心配で。」
アカイから事情を聞いた。
サカエ「一度、家を伺ってみましょうか。」
ナルミ「ここは私に任せていってきなさい。」
サカエ達はミズキの家へと向かった。
◆
そびえる一軒家。
その前でチャイムを鳴らす。しかし、返事はなかった。
アサヒ「旅行に行ってるとかそんな感じで留守なんじゃねぇの?」
アカイ(違うような気がするんだよな……。)
ふと、サカエは嫌な予感を感じ取った。
すぐにカードを取り出す。
サカエ「サシブカードの能力【五感強化】により、一時的にぼくの嗅覚は犬と同じレベルになる。」
そして、サカエは胃から酸が逆流しそうになった。
アサヒ「大丈夫か。どうしたんだ。」
サカエ「いや、すごい汚臭がしまして。この家の中、普通じゃない。」
ガチャリ。
アサヒがドアを開いた。
サカエ(鍵がかかってない?)
ますます怪しい雰囲気がふつふつと沸き立っていく。
アサヒ「いくか。」
アカイ「うん。」
四人が中に入った。
近づくに連れて臭いが酷くなっていく。
サカエ(能力を解除しても、この臭いは辛すぎる。)
アサヒ「こりゃ、酷ぇな。」
腐った食べ物が嫌な匂いを放っていた。
ミズキ「誰? また保健所の人? ……あ、アカイくんに、サカエくん達。なんでここに?」
アカイ「連絡がつかないから心配できたんだ。」
ミズキ「ありがとう。もう何もしたくなくて……。」
テーブルの上の腐った料理。椅子に座る二体のロボット。床に散らばったゴミ。地べたにひょんと座ってるだけのミズキ。
アカイ「何があったんだ?」
ミズキ「いいよ。アカイくん達はなにも気にしなくて。」
アカイ「そういうわけには!」
サカエ「アサヒくん。能力を使う準備だけしておいて下さい。」
アサヒ「何があったか見るんだろ? まぁ、見なくても大体察せるけどな。」
サカエ「どういうことです?」
アサヒ「そこにいる二体のロボット……。ミズキの親じゃねぇの? こんなことができんのは一人しかいねぇ。」
サカエ「……?」
アサヒ「フシミだろ? まぁ、勝手に答え合わせさせて貰うけどな。」
アサヒはミズキの脳内情報を読み取った。
アサヒ「やっぱ正解だったな。フシミがコイツの親をロボットにさせたんだ。まぁ、その後の保健所の人を追い払うのに無茶苦茶やってんな、コイツ。」
サカエ「フシミ——。」
アカイ「なぁ、そのフシミってやつを見つけてロボットになった二人を元には戻せないの?」
アサヒ「分からねぇが、俺、フシミの家、知ってんぜ。」
サカエ「なら、今すぐにでもいきましょう。そして、話をつけにいきましょう。」
アカイ「そういうことだから。待っててくれ。絶対に何とかしてみせる。」
サカエ「ヤオさん。ミズキさんと一緒にいてくれますか。」
ヤオ「もちろん。いいよ。」
サカエ「じゃあ、いきましょうか。」
アサヒ「ああ!」
◆
N大都市にあるマンション。
その一角に彼の家があった。
ガチャリ。
ドアを開けるフシミ。
フシミ「珍しい客ですね。」
アサヒ「一つしてもらうことがあってな。」
フシミ「ここで話すのは大概ですし、中へお入り下さい。」
フシミの家の中へと入る。
そこはまるで新居のような感じがした。物が全く置かれていない。
だだっ広く感じるリビング。そこに射し込む太陽の光。
フシミ「ようこそ、私の家へ。殺風景で新居のように思われるかも知れませんが、ここにはもう数年前から住んでいます。」
彼はキッチンの方へと歩き出した。
フシミ「もし自己PRをする機会があれば、こういうでしょうね。私は『究極のミニマリスト』です、と。」
そして、コップを取り出して「コーヒーか紅茶、どちらかよいですか?」と聞いて、飲み物を注いだ。
小さな丸テーブルに置かれる三つのコップ。
フシミ「さて、要件をききましょうか。」
アサヒ「あんたがロボットにした奴を元通りにして欲しいんだ。」
フシミ「やはり、そういう話ですか。残念ながら、不可能です。」
アカイ「なんでなんだよ!」
アカイが立ち上がって声を荒らげた。
フシミ「私の能力は、本人の意思で発動し、本人の意思で解除する、本人依存型の能力です。ロボットになった方々が自らの意思で人間に戻ろうとすれば元に戻れますし、それが唯一の方法です。」
サカエ(ナルミの"永遠のリボン"と同じ使った本人にしか何とかできないタイプか……。)
アカイ「じゃあ、人間に戻りたいと思わせれば!」
フシミ「それはないでしょう。ロボットには人間に戻りたいという感情を持ち合わせていませんから。」
アカイ「なんだよ。それ。なんで、そんなこと、するんだよ。」
フシミ「子どもには難しいと思いますが、言わせてもらいましょう。ロボットにするのは救済のためです。」
アカイ「救済……?」
フシミ「人は『感情』を持ちます。感情に振り回される人間程、幸せよりも不幸を感じやすい。そして、多くの人は感情に振り回されてしまうのです。」
フシミは窓の外を見た。そこから町の景色が一望できる。
フシミ「その原因はやはり『欲』でしょう。得るからこそ失くすものが増える。望むからこそ失望する。そして、失くした分だけ不幸が募る。初めから何も望まなければ、辛い思いをすることはないのに。」
アカイ「なんなんだよ。さっきから……。」
フシミ「しかし、人間は欲深い生き物です。とても醜く、愚か。隣の芝生は青く、届かない葡萄は酸っぱい。それがより不幸な人間だとしても、自分の持たないものなら羨ましく思い、もし手に入れられないのなら嫉妬して、もやもやが溜まる。そして、負の感情が人を不幸にさせる。」
サカエ「それでロボットにするのと何が関係あるのですか?」
フシミ「ロボットなら負の感情を持つことはありません。欲もありません。ですから、辛い思いをする必要がないんです。」
フシミが足を組んだ。
鋭い視線が三人に向く。
フシミ「彼女は娘さんを失った事実を受け止めることができず、消化できない気持ちを八つ当たりで他人にぶつけることで解消しようとした。彼女の場合は夫さんですかね? 誰かを攻撃して解決する訳もなく、不幸になっていく連鎖に入ってしまいました。」
サカエ(……。そうかも知れないけど。)
フシミ「だから、手を差し伸べただけです。ロボットは感情がありませんから、ロボットになれば辛い思いをすることはありません。『欲』もありませんから、未来永劫、不幸になることはありません。即ち、彼女達は確約された不幸なき未来を手にすることができたんです。」
サカエ「そんなの間違ってます。ロボットにさせられた二人は人間ではない体に苦しんでいるはずです。」
フシミ「ロボットにさせられたのではなく、ロボットに自らなったのです。それにロボットになった人達が苦しんでいると仰られたが……それはエゴでは?」
サカエ「なっ。」
フシミ「勝手に彼女らの気持ちを代弁した気になっているだけで、それはあなたの"そうであって欲しい"という思いに過ぎない。彼女達が一言でも苦しいといったのでしょうか? 否、無欲なロボットですからそれはないはずですね。そういうシステムですから。」
サカエ「人道に反してる!」
フシミ「ええ。私は、この行為が正しいとは思っていません。しかし、この行為が間違ってるとも思ってはいません。」
アカイ「どういうことだよ!」
フシミ「それを望んだのは紛れもなく彼女達なのです。私はその助力となっただけなのです。」
アカイ「あー。そんなんいいから、早く元に戻しやがれっ!」
手が出そうになるアカイをサカエが無理やり手を掴んで止めた。
サカエ「手を出したら、負けです。」
フシミ「感情の行き着く先は"暴力・暴言"なのです。しかし、誰かがその暴力や暴言を振るわれる。振るわれた人は振るう人を悪であり、社会的に見ても、悪と見なすのは明確。手を出した時点であなた方は悪のレッテルが貼られ、必然的に、私とあなた方と比較して私の方が正しくなる。それでもいいのでしたら、どうぞ感情の赴くままに。」
アカイ「くそっ。」
アサヒ「何にもねぇのか。元に戻す方法はよ。」
フシミ「残念ながら、ありませんね。して、話が済んだのであれば、お引き取りください。」
アカイ「くそぉ。」
三人はその場を後にした。
夕焼け小焼けの帰り道、三人は無言で帰宅していく。
ふと、サカエが空に向かって手を伸ばした。
サカエ「きっとハッピーエンドのような解決はできない気がします。なら、ぼくはベストエンドのような解決を見つけ出します。」
そして、空に向かって「見つけ屋として必ず——」と呟いた。




