12.
サカエ「せっかくですから、みんなでカレー作りでもしましょうか。」
アサヒ「いいな、それ。」
ナルミ「いいけど、アサヒは料理作れるの?」
アサヒ「何となくでできるんじゃね?」
ナルミ「何となくでできるわけないでしょ。」
サカエ「ま、まぁ、カレー自体は林間学校のある小学五年生ぐらいの子でも作れますからね。何とかなるかもしれませんね。」
ナルミ「……。はぁ、不安だわ。」
見つけ屋サカエ及び近くの借家に住む五人のうちサカエ、アサヒ、ナルミ、ヤオがカレー作りをすることになった。
ナルミ「先に皮を剥いとくわ。」
手馴れた手つきでじゃがいもなどの皮がピーラーで剥かれていった。
アサヒ「おれらやることねぇな。」
まないたに置かれたじゃがいも。
サカエ「では、ぼくとナルミさんで鍋の準備をしますから、先にじゃがいもを切ってもらえますか?」
アサヒ「おう。いいぜ!」
サカエとナルミは鍋を取りにいった。
アサヒ(腕の見せどころだぜ。あっ、すげぇ、って言わせてやるぜ。)
サクサクサクサクサク!
アサヒ(暗殺術で身につけてんだ。包丁の扱い方は。向ける先は違ぇけど。)
薄い輪切りとなったじゃがいもができあがった。
アサヒ(ついでにたまねぎもやっとくか。)
そこにナルミたちが戻ってきた。
アサヒ「見ろよ。こんなに綺麗に切ったぜ。……すげぇって言ってもいいんだぜ。」
ナルミ「ポテトチップスでも作る気か!」
ナルミの攻撃がアサヒに当たった。
アサヒ「何がダメなんだよ!」
ナルミ「何もかもダメじゃない。カレーに使うじゃがいもはゴロゴロと大きめに切るのが普通でしょ。」
アサヒ「まじか。」
ナルミが何かに気がついた。
ナルミ「このたまねぎって……。」
アサヒ「ああ、先に切っといたぜ。」
そこにあったのはみじん切りにされたたまねぎだった。
ナルミ「なに、みじん切りにしてくれてんのよ!」
アサヒ「ダメなんかよ。」
ナルミ「ダメに決まってるじゃない!」
サカエはその様子を見て苦笑いを浮かべた。
サカエ「まぁ、たまねぎのみじん切りならなくはないから、そこまで気にしなくていいよ。」
アサヒ「なっ、サカエがそう言ってるぜ。」
サカエ「ちなみに、ポテトチップスはさすがに擁護できないかなぁ。」
ナルミによってにんじんや肉が切られた。
牛肉やたまねぎなど具材が鍋の中に入れられた。
火を入れて少し時間が経ち、水が入れられた。
ナルミとサカエで淡々とこなしていく。
アサヒ「暇だな。」
ナルミ(……。)
アサヒ「なんかやることねぇの?」
ナルミ(……。)
アサヒ「なんか手持ち無沙汰になっちまってさー。」
ナルミ「あー、鬱陶しい!」
ナルミがアサヒに軽い攻撃を加えた。
サカエ「後は、ぼくらでやっておきましようか。」
ヤオ「そうだね!」
ルウが入れられる。
隠し味に珈琲牛乳が入れられる。
煮込んでいく。
サカエ(二人はまだ喧嘩してるし、ぼくは適当にスマホでも触って時間をつぶそう。)
サカエはスマホを取り出してショート動画を見始めた。
サカエ「そろそろいいかな。」
蓋をあけるとそこには美味しそうなカレーが見える。
ナルミ「いいじゃない。じゃがいもが薄っぺらいのが残念だけど。」
アサヒ「もういいじゃん。それ。終わったことだろ。」
サカエはオタマを取り出して少しだけルーをすくい、小さな小皿にうつす。
サカエ「味見します?」
アサヒ「もちろん!」
ナルミ「えぇ。」
アサヒ「やっぱり辛さがたんねぇなぁ。」
ナルミ「これならいけそうね。」
アサヒ「じゃあ、ちょこっとだけスパイス足していいか?」
ナルミ「えー。」
怪訝そうな顔をするナルミと動じないアサヒ。
アサヒ「ちょっとだけ。」
スパイスのもとをふりかけるアサヒ。
再び味見をする。
ナルミ「ちょっぴり辛くなったかも。まぁ、まだ我慢できるレベルだけどね。」
アサヒ「じゃあ、ほんのちょっとぐらいなら、いけそうか。」
ナルミ「ほんのちょっとならね。ほーんのちょっとね。」
アサヒがスパイスの入った袋を傾ける。
アサヒ「あっ!」
勢いあまって袋の中のスパイスがぜんぶ鍋の中に入ってしまった。
ヤオ「あ……。」
ヤオが鍋の中で回すオタマ。
辛さの元がカレーに浸透した。
アサヒ「はっ。やっちまったな。」
ナルミ「許さぬ。許さぬ。許さない!」
鬼の形相のナルミ。
サカエ(なんかナルミさんの食べれそうなの一品作っておいた方がいいのかな。)
サカエは冷蔵庫の中であまっている肉を使って生姜焼きをさっと作った。
サカエ「ご飯と生姜焼きと、レトルトのスープ、後ついでに買ってきたカット野菜で大丈夫です?」
ナルミ「ほんと、ごめんね。わざわざ。このバカがバカしたせいで……。」
アサヒ「そんなバカを強調すんなよ……。」
三人で囲んで夜ご飯を食べる。
アサヒ「ヤオは食べねぇの?」
サカエ「ヤオさんは神様ですからね。」
三人はそれぞれの夜ご飯を食べ終わった。
サカエ「ぼくはこれからカレーを届けにいきます。」
アサヒ「あー、あれだろ。能力でヤオを視えるようにしてる……えーっと、小学生のガキが言ってた。えーっと、そうだ。クラピカってやつだろ。」
サカエ「えぇ、そうですよ。」
オボンに置かれたカレーライス。
サカエ(まーた、変なあだなつけられてる……。彼、どれだけあだながつけられてるんだろう……。)
ナルミ「じゃあ、あたしらは片付けするわよ。やるわよね、皿洗い。」
アサヒ「えー、めんどくせぇ。せっかく食べた後なんだし、ゆっくりしてぇ。」
ナルミ「料理は後片付けまでが料理なの! はい、片付けをした。した。」
ナルミとアサヒで食べたものを洗っていった。
賑やかな夜がそこにはあった。
◆◆◆
フシミ「ようこそ、いらっしゃいました。」
ミズキ母「主人と話し合った結果、みんなでホミと一緒にいれるようになることを決めました。」
ミズキ父「家族みんな覚悟はできています。」
ミズキ(パパとママに言われたから、わたしはこうするべきなんだよね。きっと。)
三人がフシミの前へと進む。
フシミ「私のカードの能力は"願望変化"。カードに触れた人に対し、その人が望むモノに変身させてあげる力を持ちます。」
ミズキ父「ロボットになりたいって願うんだぞ。」
ミズキ母「みんなで永遠の時を幸せに過ごしましょう。」
フシミ「準備が出来ましたら、カードに触れてください。」
三人がカードに触れた。
二人がロボットに変化した。自らの意思でしか戻れないが、ロボットの意思には戻る選択肢が存在しない。
即ち、二人は永遠にロボットから戻ることはできない。
ミズキ「あ……。」
フシミ「変身できませんでしたね。心の底では変身したくないと思っていたのでしょう。この能力は心から望んでないと効果が発動しませんから。」
ミズキ「あ、あ、あ。」
ミズキは声が出せなくなっていた。
それを見てフシミは少し悲しそうな表情を浮かべた。
フシミ「わたしはあなたを否定しません。あなたはあなたのままで生きていけばいいのです。しかし、ロボットになったあなたの両親はもう二度と人間には戻れない。」
ミズキは声を出さないまま、瞳から涙をこぼした。
フシミ「このお二人を、ホミさんの隣に置きますか? それとも家に置いておきますか?」
ミズキは返事ができなかった。
フシミ「困りましたね。では、後者、家に送り届けましょう。こちらで保健所には連絡しておきますね。数日後には担当の方が来るはずです。」
それは怒りも悲しみもない。ただ、淡々と優しさを繰り広げる表情。
◆
ミズキの家。机の前の椅子に座るロボット二体。
ミズキ「学校で調理実習あったじゃん。だから、わたし、頑張ってみたよ。お米炊くのと生姜焼き。」
出されたのは四人分の料理。
ご飯と生姜焼き、レトルトのカット野菜、そして、レトルトの味噌汁。
ミズキ「だから、褒め……て。」
その家は無音が広がっていた。
まるで留守のような音の無さだった。
いったんここで更新ストップします。
需要(ぶくま.感想.pv等)などを見て続きについては打ち切りにするか続けるか考えていきます。
ひとまずここまで見てくれてありがとうございました。




