11.
サカエ「アサヒさんは悲しくないんですか?」
アサヒ「悲しくねぇ、と言えば嘘になるな。けど、オレには悲しむ権利がねぇんだ?」
二人は買い出しへと出かけていた。
サカエ「なぜ?」
アサヒ「オレは暗殺者だ。既に数え切れないぐれぇに人を殺しちまってる。そんなやつが知人との別れだけを悲しむなんて虫のいい話だろ?」
空を見上げれば思い浮かぶホミとイリガの姿。澄み切った空である。
二人がスーパーへとたどり着いた。
サカエ「じゃあ、買い出ししていきましょうか。」
初めにサカエはじゃがいも、にんじん、玉ねぎをビニールの袋に入れてからカートに入れた。
サカエ「カレーでも作りましょうか。」
アサヒ「おっ、いいな。」
ほぼ住み込み状態のアサヒとナルミの分を合わせて四人分の材料を入れた。
そのまま精肉コーナーにて肉を入れた。
その後はレトルトコーナーへ。
アサヒ「やっぱカレーは辛くなくっちゃな。やっぱ激辛っしょ。」
サカエ「ナルミさんは辛いのが苦手ですから、やめときましょう。」
アサヒ「アイツは最年長だし辛くても大丈夫だろ。」
サカエ「関係ないと思いますよ。甘口を入れておきますね。」
アサヒ「待て待て。甘口はやめてくれ。」
サカエ「分かりました。中辛にしましょう。それなら、大丈夫だと思います。……多分ですけどね。」
続いて、卵が置かれた棚の前にきた。
アサヒ「ナルミがたまごをほしがってたな。」
サカエ「まぁ、たまごは色々と料理に使えますからね。」
たまごパックをカゴに入れた。
そして、魚や惣菜、パンなどを見たりカートに入れたりしながら店を一週し、お菓子コーナーへとやって来た。
アサヒ「牛乳とコーヒーとリンゴジュース入れたぜ。ってか、リンゴジュースって、ナルミ、子どもだな。」
アサヒが嫌な笑いをしていた。
サカエ「じゃあ、つまめるお菓子でも入れておきましょう。頭を使う仕事もありますから、甘いものはいくつか欲しいですよね。」
アサヒ「んじゃ、チョコだな!」
サカエ「えぇ、チョコ、いいですね。何にします?」
アサヒは個包装式のチョコ菓子を入れていった。
他にもスナック菓子などが入れていかれた。
サカエ「最後にアイスでも買って帰りましょうか。」
アサヒ「だな。」
二人はアイスが売られている場所に向かった。
サカエ「待機組のナルミさんたちの分も買ってあげましょう。」
アサヒ「いるか?」
サカエ「買ってあげましょう。」
アイスをカゴに入れた。
サカエ「じゃあ、精算しにいきましょう。」
二人はセルフレジへと向かった。
サカエ「あっ!」
アサヒ「どうした?」
サカエ「マヨネーズがなかったんだ……。ちょっと取ってきますから、その間、レジ打ちお願いします。」
サカエはその場をアサヒに任せてマヨネーズを取りに向かった。
アサヒ「よしっ。任せろ!」
ピッ。たまごのバーコードを読み取らせた。
そして、パン、肉、惣菜、お菓子、アイス、牛乳などの順でそのままマイバッグへと入れていった。
サカエ「マヨネーズ取ってきました。」
サカエ「……。」
アサヒ「ん?」
サカエ「……。」
アサヒ「どうしたんだ?」
サカエ「逆ぅ! 入れる順番がおかしすぎるでしょ! これ!」
アサヒ「そうか?」
サカエ「いや、そうでしょ。牛乳とか重いものが上のせいでパン潰れちゃってるよ。ぺちゃんこなんですけど。」
アサヒ「まじか。パン、気合い足んねぇな!」
サカエ「気合い関係ないですからね。」
マイバッグからものを取り出していく。
サカエ「この肉とかはビニル袋に入れて欲しかったんですけど……。」
アサヒ「へー。そーなんだー。」
サカエ「ってか、一番下にたまごやめて! 割れちゃう!」
アサヒ「そうなんか? 気合いが足らねぇだけじゃねぇの?」
サカエ「食べ物に気合いも何もないですからね!」
サカエの手によって、食品がマイバッグに入れ直された。
サカエ「はぁ……。とりあえず、ドライアイスを入れてから帰りましょう。」
二人は店の製氷機の前へと来た。
サカエ「あっ、袋がない。貰ってきますね。」
アサヒ「ああ。って、袋あんじゃん。……先やっとくか。」
アサヒは袋(※氷用)にドライアイスを入れた。そして、きつく袋を縛ってマイバッグに入れた。
サカエ「貰ってきまし——」
アサヒ「袋あったから、先やっといたぜ。」
サカエ「袋あったんですね。では、無駄足だったみたいですね。」
袋をドライアイスの台のフックにかけた。
そして、二人は見つけ屋サカエへと戻っていった。
サカエ「荷物持って貰ってすみませんね。」
アサヒ「気にすんな。これぐらい余裕だしな。」
晴天の中、二人は歩く。
音は静か。
パァァァァァン!
マイバッグの中から突然爆発音が鳴り響いた。
その出来事にアサヒは思わずマイバッグを落とした。
グシャ!
たまごが割れた——。
上に置かれたアイスが一つ用水路の中へと落ちてしまった。
爆発音の原因はドライアイスを密封させたことによる袋の破裂であった。
——。
見つけ屋サカエにて。
ナルミ「——で、たまごを台無しにして、わたしの分のアイスだけなくしちゃいました。……って訳ね。」
ナルミが少し頷いた。
ナルミ「何やってくれてんの。こらぁ!」
ナルミの猛攻がアサヒを襲った。
アサヒ「悪いのオレか? 悪いの爆発した袋じゃね?」
ナルミ「あんたが爆発させたんじゃろがい!」
ナルミの攻撃はトドまることをしらなかった。
サカエ「は、ははは……」
サカエはその様子を見て苦笑いを浮かべる他なかった。
◆◆◆
ミズキ母「なんで早く探しに行かなかったの。もっと早く探しに行けばホミは助かってたのに。」
ミズキ父「そんなこと言ったって、意味ないだろ。もう手遅れなんだよ。」
ミズキ母「ふざけないでよ。手遅れで済ませる気なの? ホミがあんな風になったんだよ。」
家の中に響き渡る怒号。
ミズキ(お姉ちゃんがいなくなってから、ずっと喧嘩してる……。辛い——)
狂い始めた歯車。
ある日、ミズキ母はやつれた表情である場所に向かった。
ママ友「この人がフシミさん。きっとフシミさんなら楽にしてくれると思うわ。」
ミズキ母「初めまして。」
フシミ「初めまして。カウンセラーのフシミです。以後お見知り置きを。」
ミズキの母は大切な娘が永遠に手の届かない場所にいってしまったこと、連日夫と喧嘩しているその内訳を伝えた。
フシミ「それはお辛いですね。」
ミズキ母「わたし、どうすれば……。もう辛くて。」
フシミ「誰かのせいにすることで自分を守る。今のあなたは被害者であり、加害者でもある訳です。そして、後になって自分の行いを悔いて辛くなる……のかも知れませんね。」
ミズキ母「じゃあ、私、どうすれば!」
ミズキ母の声が大きくなっていく。
フシミ「通常では呵責の念があなたを蝕む。しかし、わたしなら、その暗い現実から逃れさせる術を持っています。」
ミズキ母「なんですか?」
フシミ「信じられないと思いますが、わたしにはその人が強く望む"モノ"に変身させることができるのです。例えば、ロボットになれば、自らの感情に振り回され辛い思いをすることが一切なくなります。」
フシミが優しく微笑んだ。
フシミ「ロボットは誰かのせいにすることがないため、誰かに迷惑をかけることもなくなります。なりより——」
ミズキ母「なりより?」
フシミ「ロボットは不老です。普通の人間なら寿命が尽きてしまう悠久の時が経とうとも、あなたの娘さんの傍にいてあげられますよ。」
その言葉に彼女は心が揺らいだ。
ミズキ母「少し考えてきてもいいですか。」
フシミ「えぇ、どうぞ。」
ミズキ母はその場から離れた。
ママ友「返しちゃって良かったの?」
フシミ「あの人はまた来ますよ。今度はわたしに縋って……ね。」
ママ友「そお?」
フシミ「不幸は連鎖します。そしてあの人はその不幸の連鎖の中にいる。」
ママ友「へー。」
フシミ「本当に救いが必要な人ほど救われる見た目をしていません。当人は目の前の物事に必死で、心の余裕がなく、どれだけ手を差し伸べても、その手を敵対視してしまう。」
フシミは残った液体を飲み干した。
フシミ「人を責め、敵をつくり、さらに余裕と思考力がなくなる負の連鎖。まさに因果応報。」
ママ友「今まさに敵を作り続けているってことね。」
フシミ「話を聞く限り、あの方の夫さんは少なからずとも敵という感情を持っていてもいいような気がします。——憶測ですがね。」
ママ友「一番助けてくれそうな人なのにね。」
フシミ「もし救いの手を握っても、後でその手を悪だと認識する。その時の負の感情を消化する際、その時の自分を正当化するために。こうしてまた負のループに入るのです。」
フシミは窓ガラスの向こうの外の景色を眺めていた。
フシミ「あの人はもう抜け出せない。きっとここに戻ってきます。そして、わたくしがその負のループを断ち切ってさしあげましょう。」
フシミはイルカードを手に取って、それを見ていた。
続き2話分プラスして投稿します。




